新手法で肺がん早期診断【大阪大学】
「バルーン併用気管支鏡送達法」開発
大阪大学大学院医学系研究科呼吸器・免疫内科学講座の三宅浩太郎助教、熊ノ郷淳教授らの研究グループは、これまで到達が難しかった肺の奥深く(末梢肺野)にある小さな早期肺がんに、安全に気管支鏡を進めるための新技術「バルーン併用気管支鏡送達法(BDBD法)」を開発した。同技術は小さなバルーンカテーテルを使って気道を広げ、気管支鏡をこれまで届かなかった末梢領域まで導く技術で、従来の「気管支鏡を細くする」という考えとは逆転の発想から生まれた。
肺がんは大半、肺野末梢に発生するが、肺がんに到達する経路(気管支)は細く、従来の気管支鏡では到達することができなかった。そのため、病変から数センチ離れた位置で内視鏡は止まってしまい、早期肺がんの診断や治療の精度には限界があった。気管支鏡本体をさらに細くする試みも行われてきたが、技術的に壁があった。
研究グループは発想を転換し、気管支鏡を細くするのではなく、逆に気管支を広げるBDBD法を考案した。BDBD法は小さなバルーンを気管支の内部で膨らませ、通路を広げることで、気管支鏡を奥まで導く。これにより、患者への負担を増やさずに早期肺がんの生検精度を向上させるとともに、将来的には内視鏡下での低侵襲治療にも道が開けると期待される。
臨床研究には大阪大学、名古屋医療センター、大阪はびきの医療センターが参加。合計22人の患者にBDBD法を実施し、気管支鏡は平均2.3分岐末梢まで到達。対象となった病変は全例が20㍉㍍以下(平均15.3㍉㍍)という小さな病変だったが、72%の患者で確定診断を得ることができた。22人のうち肺がん患者18人中17人に生検部位を直視しながら検体採取を行い、14人で肺がん診断を内視鏡で確定することができた。
肺がんは日本人のがん死亡原因の第1位で、CTなど画像診断の進歩により、肺の奥深い部分に小さな疑わしい影が見つかる機会が増えている。確定診断には病変自体から組織を採取する生検が不可欠で、末梢に行くほど気管支が細く枝分かれするため、内視鏡(気管支鏡)を病変近傍まで進めることは困難だった。
結果として、標的から数センチ手前で止まった気管支鏡から器具だけを伸ばして、手探りで検体を取らざるを得ず、診断精度や治療の確実性に限界があった。