フォトンカウンティングCT開発【キヤノン】
がん研に設置、国産初の実用化へ
キヤノンは昨年、買収した半導体検出器モジュールメーカーのレドレン・テクノロジーズ社の技術を活かし、グループ会社のキヤノンメディカルシステムズ(社長=瀧口登志夫氏、栃木県大田原市)が、国産初のフォトンカウンティング検出器搭載X線CT(PCCT)を開発し、国立がん研究センター先端医療開発センターに設置した、と発表した。今後、実用化に向けた研究を開始する。
PCCTはレントゲンの検出器材料を生産する結晶製造・加工技術を活かした高品質な最新のモジュラー型フォトンカウンティング検出器を搭載。モジュラー型とすることで、検出器サイズの拡張や製造、サービスコストの低減が可能となることから、あらゆる臨床ニーズに対応した検査が実現可能となる。
例えば、従来装置より低被ばく線量での検査や、画像の高精細化による病変の検出能向上、体内の複数の物質構成の弁別、定量性に優れた画像による腫瘍組織の性状や悪性度評価――など、予防、診断から治療効果判定、予後評価まで診断精度の向上が期待されている。
国立がん研究センター東病院放射線診断科科長の小林達伺医師は「キヤノンのCTは高い水準の高精細化をすでに実現している。そこに物質を特定できる機能も加わり、腫瘍の良性/悪性を鑑別する質的診断や抗がん剤による治療効果の画像化などによって視覚的にわかりやすい画像を提供できる可能性がある」と語っている。
また、キヤノンメディカルシステムズの瀧口社長は「レドレン社の技術に、AI画像再構成や解析技術など当社独自の技術を融合した次世代PCCTを実用化することで、CTグローバルシェアのナンバーワンを早期に実現したい。さらに今後、レドレン社のフォトンカウンティング検出器を全世界の医療機器メーカーに供給することで、画像診断技術の発展に寄与していきたい」と述べている。
なお、キヤノンメディカルシステムズと国立がん研究センター先端医療開発センター、同東病院は、2020年7月に包括協定、同11月に共同研究基本契約を締結し、PCCTの実用化に向けた共同研究を行っている。これまでの研究活動の成果として、21年の北米放射線学会や、22年の日本放射線技術学会総会、欧州放射線学会議で基礎性能の向上について報告している。