「軟性内視鏡手術システム」開発 ー 慶應大医学部
ロボット技術と融合し低侵襲
慶應義塾大学医学部外科学教室の北川雄光教授らの研究グループは、軟性内視鏡とロボット技術を融合させた「軟性内視鏡手術システム」(FESS)を開発した。軟性内視鏡カメラや鉗子などの処置具が入った、しなやかなチューブ(オーバーチューブ)を体内に挿入し、患部で内視鏡や鉗子などを出して処置を行う。臨床試験、薬事承認を経て、2020年代半ばの市場投入をめざす。
FESSは直径5㍉㍍の鉗子などの軟性ロボット処置具2~3本のほか、直径8㍉㍍の3Dカメラ1本が収まった軟性オーバーチューブからなる手術動作部と、内視鏡と処置具を遠隔操作する操作部で構成される。
執刀医はモニターで内視鏡画像を見ながら、直感的に緻密な操作が可能で、術式によっては既存の汎用デバイスの併用もできる。ユニットは小型軽量で持ち運びができ、ベッドサイドへの設置も可能なので、専用のロボット手術室は不要だ。
内視鏡に組み込まれた3Dカメラの近赤外蛍光観察機能は、可視光と近赤外光の映像を重ね合わせて、表示することができるため、通常光では見えない脂肪に隠れた重要な臓器を確認しながら、手術を行うことが可能になる。
チューブの挿入は体表に小さな切開孔を1つ開けるか、または口や肛門からの挿管となる。チューブは柔軟に曲がって体の奥や管腔内に到達でき、繊細な操作を可能にしているので、これまで開腹手術をせざるを得なかった患部や、腹腔鏡手術が困難な膵臓がんなどの手術への活用が期待される。
将来的には器具が臓器に触れた感覚が医師の手に伝わる力触覚機能を追加し、安全性をより高める研究開発を進めていく。
今回の開発は日本医療開発機構(AMED)の未来医療を実現する医療機器・システム研究開発事業の支援を受け、慶應義塾大学と高知大学、神戸大学、滋賀医科大学、大阪大学、神奈川県立がんセンター、メディカロイド、パナソニック、コネクティッドソリューションズ、セミコンダクタソリューションズ、トップ、ザイオソフト--などの産学連携で進められた。