医工連携

膵臓がん検出支援技術を開発【富士フイルム、神戸大学】

AIでCT画像から膵臓がんの疑われる所見検出

富士フイルム(社長兼CEO=後藤禎一氏、東京都港区)と神戸大学(学長=藤澤正人氏、兵庫県神戸市)は、AI技術を活用して腹部の造影CT画像から膵臓がんが疑われる所見の検出を支援する技術を共同で開発した。

2021年8月から両者は、神戸大学大学院医学研究科の児玉裕三教授、村上卓道教授らの研究チームのもとで共同研究を進めてきた。今回、膵臓がん患者を含む約1000症例の造影CT画像をAIに学習させ、腹部の造影CT画像から膵臓がんが疑われる所見を検出する技術の開発に成功した。

同技術は膵臓がんの直接所見である腫瘤のみならず、間接所見である膵萎縮・膵管拡張・膵管狭窄などを検出する。同技術を活用して医師の負担を軽減することで、より精度の高い診断につながることが期待できる。

両者は今回、確立した造影CT画像から膵臓がんが疑われる所見を検討する技術を応用し、一般的な検診や人間ドックで撮影した非造影CT画像からも同様に膵臓がんが疑われる所見を検出するAI技術の開発を進める。

将来的には、膵臓がんが発生する前段階で見られる膵臓に腫大や萎縮などの軽微な形状変化を検出し、膵臓がんに罹患するリスクの高さを評価する技術の開発にも取り組んでいく。

膵臓がんによる国内死亡者数は20年に3万7000人を超え、肺がん、大腸がん、胃がんに次いで第4位となっている。膵臓がんは早期発見が極めて重要になるが、膵臓は形状が複雑で、解剖構造の把握も他の臓器に比べて難しいため、膵臓がんの診断には高度な専門知識を要することが課題となっている。

神戸大学の村上教授は開発にあたり「検診レベルで早期に膵臓がんを拾い上げるAI画像診断の開発は、早期発見・早期治療が特に大事な膵臓がんの予後を改善する上で非常に有用なツールになると考えられる」とコメントしている。