腹腔鏡手術支援ロボ開発【がん研、朝日サージカルロボ】
「ANSURサージカルユニット」医療機器の承認取得

国立がん研究センター東病院(病院長=大津敦氏、千葉県柏市)と朝日サージカルロボティクス(社長=千葉和雄氏、千葉県柏市、旧A―Traction)が共同で開発した腹腔鏡手術支援ロボット「ANSURサージカルユニット」は、医療機器として承認された。国立がん研究センター発ベンチャーによる医療機器の承認取得は初となる。
ANSURサージカルユニットは現在、世界的に市場を独占している手術支援ロボットとは異なる新しいコンセプトで開発された。
従来、腹腔鏡手術は執刀医の指示で助手が鉗子を操作し、スコピストが内視鏡カメラを操作してきたが、ANSURサージカルユニットは執刀医が自身の鉗子を持ちながら、ロボットが保持する鉗子・内視鏡カメラを操作することができる。
通常、2人の外科医が担う助手とスコピストの作業を1台のロボットが担うことで合理的な手術環境が整備され、外科医のワークライフバランスの改善と向上が期待できる。
また、執刀医は1人で鉗子・内視鏡カメラの両方を直感的に操作できるようになるため、自身が望む視野が得られ、適切な強度で臓器を引っ張ったり患部を切除できる。より効果的に手術を進めることで手術時間が短縮され、患者の体への負担の少ない医療の提供が可能となる。
腹腔鏡手術は一般的に外科医3人、多い時には5人で行い、長時間、外科医を拘束するため、患者への手術提供機会の制限や、外科医の労働時間の超過などの課題が指摘されていた。
こうした課題を踏まえ、国立がん研究センター東病院大腸外科の伊藤雅昭外科長と、エンジニアで東京大学の安藤岳洋助教(現朝日サージカルロボティクス最高開発責任者)らは2015年8月に国立がん研究センター発ベンチャーとしてA―Tractionを創業した。その後、同社は21年7月に朝日インテックの子会社となり、朝日サージカルロボティクスに改称された。
承認取得にあたり、伊藤外科長は「外科医の発想が出発点となり、この手術支援ロボットは生まれた。開発においては、今まで日本にあまりなじみのなかったベンチャー起業による開発形態を我々は選択した。迅速な意思決定のもと、最少の人員で最大の効果を生む開発形態は今後、日本でも広がっていくと思う。『自分のアイデアが形になり、医療を変える』こんなワクワク感を次の開発者にも味わっていただきたい」と語っている。