日医工ビジョンに基づき事業展開【日医工】
「2018年度定時総会」を開催
日本医療機器工業会(理事長=松本謙一氏、日医工)は、8月29日㈬午後3時から、東京・飯田橋のホテルメトロポリタンエドモントで「2018年度定時社員総会」を開催した。総会では17年度事業・決算報告を承認後、日医工ビジョンに基づいた重点5項目(別掲参照)からなる18年度事業計画を打ち出した。
消費税の増税やUDIなどに対応を
総会の開会にあたり、あいさつした松本理事長は今後、医療機器業界が対応すべき課題に言及し、①消費税の増税②メンテナンスのあり方③開発の在り方④UDI(機器固有識別子)の法制化⑤企業倫理・コンプライアンス――の5事項を列挙した。
消費税の増税については「来年10月に予定される消費税の税率アップの影響をどうみるか、買付側の医療機関にとってはコストアップになる。供給側のわれわれ企業は増税に対応するとともに、駆け込み受注にも対応した戦術を練る必要がある。前回の消費税の増税時には一時的にせよ、医療業界の業績が伸びたので、考えていく必要がある」とした。
メンテナンスのあり方に関しては「大型医療機器を中心に耐用年数が伸びており、メンテナンスや保守点検の重要性が求められている。保守契約を結ぶことで安定収入を得ることができる。現在では海外でもJICA(国際協力機構)のODA関連で保守契約年数が伸びている」と述べ、保守契約の重要性を説いた。
開発のあり方にふれては「開発は製品開発と市場開発を分けて考える必要がある。製品開発は最近だとAI(人工知能)やIoT(モノのインターネット)などを含めた費用対効果を考えていかなければならない。市場開発に関しては、トルコリラの大暴落など、海外市場では何が起こるかわからない。激動の時代にあたり、途上国でのビジネスは今まで以上に慎重に考えていかなければならない」と示した。
UDIの法制化では「医機連と行政との定期意見交換会でもUDIの法制化は議題となっている。UDIは医療機器の個体識別記録で、二次元バーコードやQRコードなどにより、医療機器の安全性を図るもの。単回使用医療機器(SUD)の再製造についても、電子タグなどで安全性を確保する必要がある。法制化には課題もあるが方向性は定まっている」と解説した。
企業倫理・コンプライアンスについては「国内ではもちろんだが海外でも問われる時代である。昨今は何が何でも医療機器の開発一本やり、ということで世の中が動いているが、企業倫理・コンプライアンスについても考えていくことが大切だ」と示唆した。
組織内の17委員会で各種事業を推進
このあと、司会の穴田事務局長が「会員総数137名中、出席44名、委任状提出49名」と総会成立を告げ、議事の審議に入った。
議事審議では17年度事業・決算報告、任期途中の辞任にともなう後任役員選任、定款の一部改正を承認後、先の理事会で承認された18年度事業計画・予算が報告された。
このうち、後任役員選任は、役員会社の担当者の変更にともなうもので、浜松ホトニクスの飯田等氏に代わり同社の丸野正氏、PHCの中村伸朗氏に代わり同社の髙橋治氏、ジョンソン・エンド・ジョンソンの佐々木昭氏に代わり同社の久保裕司氏が、それぞれ理事に就任した。
また、18年度事業計画は日医工ビジョンに基づき、重点5項目を策定し、組織内の17委員会で各事業を企画、推進していく方針だ。
総会終了後は「特別講演会」が行われ、講師に招へいした厚生労働省の鈴木康裕医務技監が『医療・医療機器産業を含む社会保障について』をテーマに講演した。引き続き、催された「懇親会」には、会員をはじめ、厚労省と通産省の担当官や、関係団体関係者――など約160人が集い、情報交換と親睦を深め合った。
日医工「2018年度事業計画」
重点5項目
① 医療機器の法制度、産業振興における行政への積極的な発言・提案
・臨床研究法や改正個人情報保護法の運用を注視し、課題を抽出し提案を行う。
・QMS省令改正に合わせ資格認定アップデートの講習会を開催する。
・高度管理医療機器の認証基準として計画していた電気手術器、超音波手術器を承認基準へ切り替えることを検討する。
・20年度診療報酬改定に対する業界要望事項を提出する。
・医療製品識別(UDI、UI)の利活用の実現化に向け「医療トレーサビリティ推進協議会」への協力を行う。
② 常に進化し、改良改善を重ねる医療機器の安心・安全の確保
・患者安全の確保に向け「安全セミナー」を開催し医療従事者に対する医療機器の適正使用の啓蒙に取り組む。
・医療機関に対する医療機器の保守点検の啓発に取り組む。
・会員企業のPMDAへの添付文書掲載を推進する。
③ これまでにない製品の開発、マーケット拡大のための医療機器開発事業化をサポート
・中小企業などが保有する「ものづくり技術」を医療産業に活用するため展示会などの機会を設け産業振興の支援に取り組む。
・国内での医療機器の開発や製品化を速やかに行うためのサポート、技術提携やイベントを通して異業種企業との交流を行う。
④ 日本の医療機器を普及させるための海外展開の促進
・中小企業にCEマーク、ISO13485などの国際規格取得のサポートを行う。
・海外医療機器技術協力会(OMETA)との協調、連携を深めながら、海外医療関連情報の収集および会員企業の国際展開の支援に努める。
⑤ 高い企業倫理に基づいた公正な事業活動の推進
・企業倫理、コンプライアンス、公正取引などに関する勉強会を開催する。
・透明性ガイドラインの情報公開および未公開企業に対する情報公開への周知活動を行う。