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日本ユーザビリティ医療情報化推進協議会(JUMP)、政策提言「患者の健康・医療・安全に向けた医療トレーサビリティの確立」をまとめる

日本ユーザビリティ医療情報化推進協議会(JUMP)は政策提言「患者の健康・医療・安全に向けた医療トレーサビリティの確立」をまとめた。これにともないJUMPでは6月22日(木)午前10時から、東京・西新宿の新宿NSビルで「記者会見」を開き、政策提言の内容を発表した。

会見にはJUMPの病院・薬局医療トレーサビリティWGの落合慈之主査(NTT東日本関東病院名誉院長)と大道道大委員(日本病院会副会長)、藤田卓仙委員(東京大学大学院医学系研究科医療品質評価学講座特任研究員)らが出席した。
会見でまず、落合主査は医療トレーサビリティの定義にふれ「医療分野のトレーサビリティとは、製造・流通の過程を経て患者・利用者に供される医薬品・医療機器・医療材料にかかる積極的な情報開示であり、患者の知る権利を保障すると共に、メーカーから卸しを経て医療・介護施設、薬局にいたる全ての医療サービス提供者の責任を明確にするものである」と説明した。

医療トレーサビリティを確立することで「近年はいろいろなモノにバーコードが付いていて、バーコードを読み込むことで、さまざまなことがわかる。これを医療の世界、医薬品、医療材料、医療機器に応用して広く利用していく。それにより医療安全や効率化、経費削減など、医療が抱える課題の解決につながる」とした。

政策提言をするにいたった経緯に言及しては「日本は世界に冠たる長寿社会の国といわれているが、医療費の増大が続き、今や医療費を含む社会保障関連費は国家予算の3分の1を占めている。医療費の伸びを抑えるため経費削減や無駄の排除、業務の効率化が求められている。また、看護師の全労働時間の3割~5割は記録を取ることに費やされている。これは非常に無駄であり、自動認識技術により自動的に記録できるシステムが求められている。さらに、高齢者の増加にともない医療従事者の人手不足が懸念され、少人数でも効率的に医療を提供するシステムが求められている。そのほか、医療事故が後を絶たないが、対策としては医療従事者らに注意力を喚起するだけでなく、仕組みやシステムを整える必要がある」と語り、現在の医療が抱える課題解決に向け、医療トレーサビリティの確立が重要であることを主張した。

政策提言「患者の健康・医療・安全に向けた医療トレーサビリティの確立」は(1)法制度、(2)標準化、(3)システム基盤-の3本柱で構成。

(1)で全ての医療機器材料や医薬品を識別するバーコード表示とデータベース登録の法令での義務化を提案。
(2)で国内での各種識別コードやデータ形式などの標準化推進、法令での義務化を要望。
(3)で『医療トレーサビリティ情報管理プラットフォーム(仮称)』の構築を提言している。

医療トレーサビリティ情報管理プラットフォームのようなインフラと、それを活用する体制が整えば、全ての医療施設で安全性向上のための共通機能を利用して、医療安全情報の伝達もれのリスクを低減し、そして施設内外の相互連携も促進できる。
JUMPでは同プラットフォームの実現に向け、平成29年度以降の早期に医薬品トレーサビリティに関する検証実験を実施する。検証実験で成果を出し、政策提言の実現に結び付けたい考えだ。検証実験の実施に向けては病院・薬局医療トレーサビリティWGの下に検証実験プロジェクトチームを設置。検証実験を強力に推進していく。