「日本SPD協議会」設立
SPDの発展に向け人材育成など推進へ
SPD業務の質向上を目的に各種活動を展開するSPD研究会は発展的に解消して、一般社団法人日本医療製品物流管理協議会(理事長=笠原庸介氏、略称=日本SPD協議会)を昨年12月に設立した。これを記念して3月7日㈬午後2時30分から、東京・新宿区の飯田橋レインボービルで「日本SPD協議会設立記念講演会」を開催した。
開会にあたり、あいさつした笠原理事長は「前身のSPD研究会は1999年3月に『SPD業務の質の向上を通して医療の向上に貢献する』ことを目的に発足した。現在では医療製品識別とトレーサビリティ推進協議会や、日本ユーザビリティ医療情報推進協議会に、当会から委員を出し参画している。社会的な貢献活動も増えてきたことから今回、任意団体から一般社団法人化した」との経緯を説明した。
設立した日本SPD協議会の活動内容に関しては、①人材育成②SPD全体の最適化③病院関係団体との意見交換④法制面の提案――などを列挙した。
具体的には「人材育成はSPD業者のみならず、病院側の職員の人材育成も含め、取り組んでいきたい。SPD全体の最適化は物流から物品管理までの一連の流れを最適化することでコスト削減が図れる。その辺を病院関連団体と意見交換しながら、研究していきたい。法制面の提案では医薬品と医療材料の境目(区分)にあいまいな状況があるなど、法制上で解消していただきたい点について、ご提案できればと考えている」との活動方針を示した。
また、一般社団法人化に合わせ、SPD業務の質向上と理解を浸透させるため『SPD読本』を発刊したことにふれては「これまで一般的にSPDに対する理解がバラバラで、セミナーなどでパワーポイントを使い説明してもよく理解されていなかったのが現状で、そこで正確な理解をいただくため書籍を作成した。内容としては私がイザイ誌に連載したシリーズのほか、外部の方にも執筆していただいた。SPDに関わる多くの方に活用していただきたい」と紹介した。
組織全体の効率化を
技術革新で病院業務を改善へ
このあと、講演会ではGS1ヘルスケアジャパン協議会の落合慈之会長が『安全で効率的な医療の実現のために―GS1標準バーコードの活用』、流通システム開発センターの植村康一ヘルスケア業界グループ長が『GS1標準バーコードをもっと身近に―スマートフォン用アプリGS1スキャンの開発』、単回医療機器再製造推進協議会の松本謙一理事長が『医療機器業界の新たな潮流―単回医療機器再製造推進協議会の発足』、東京大学大学院医学系研究科医療経済政策学の田倉智之特任教授が『医療機器の経済的価値を論じる意義とそのアプローチ』をテーマに、それぞれ講演した。
このうち、落合会長はGS1標準バーコードの活用について「医薬品や医療機器などに表示されたGS1標準バーコードをスキャンして読み取ることで、取り違いや誤使用の防止、トレーサビリティの確保、医療従事者の負担軽減など、さまざまな効果が得られる」と解説した。
医療のIT化に向けては「現状で病院のIT化は、自ら進んでやるのではなく、やらされている感じがほとんどではないだろうか。SPDの導入に関しても、その本来のニーズを理解した上で導入するに至っていない。医薬品や医療材料を安く購入するだけに目を向けるのではなく、組織全体の効率化を考えることが肝要だ」との考えを示した。
日本の医療界に求められるBPM(ビジネス・プロセス・マネジメント)に言及しては「ビジネスの世界では例えば、トヨタの生産工程は統一化されている。一方、医療の世界では、病院の中での作業工程は統一化されていない。統一化するには技術革新に精通して組織の業務改善を推進する責任者が必要となるが、病院にはそのような人材はいないので、それをSPD業者が代行あるいはサポートできるのではないだろうか。SPD業者の方々には、日本の医療のために協力していただければと思う」と要請した。
SUD再製造の方向性など解説
また、松本理事長は昨年7月に厚生労働省から単回使用医療機器(SUD)の再製造に関する通知を受け、新しい産業の創出と育成を目的に『単回 医療機器再製造推進協議会』を発足させたことを報告した。
SUD再製造の意味合いにふれては、⑴医療製品の有効利活用⑵安全管理⑶環境保全⑷経済性――を挙げ、解説した。
医療製品の有効利活用では「最近では好調な半導体産業に電子部材が使われてしまい、医療機器は電子部材が手に入らず、製品の納期が遅れたり、上市できない場合もあると、聞いている。SUDの再製造なら既存製品を活用できる」とした。
安全管理では「滅菌期限切れの医療機器を院内で洗浄滅菌して使用している例もあり、滅菌期限切れ製品の使用防止にもSUDの再製造は有効だ。また、外科手術機器などは感染リスクから1回の使用で捨てられてしまうが、手術のたびに新品を使うとコストもかかるので、SUDを再製造して活用すべきだ」と示唆した。
環境保全では「環境保全の観点からも医療廃棄物を削減すべきで、そのためにもSUDの再製造を普及させたい」としたあと、経済性では「医薬品にはジェネリックのような財源の中から引き算できるものがある。医療機器には何が引き算の対象になるのか考えたとき、その一端を担うのがSUDの再製造ではないだろうか」と説いた。
「一般社団法人 日本医療製品物流管理協議会」の概要
(略称=日本SPD協議会)
【目的】
医療機関における医療材料・医薬品などの医療製品の物流管理業務(いわゆるSPD業務)を通して、医療製品などの流通、在庫・消費管理、トレーサビリティなどに関する知識の普及、人材育成および調査研究を行うとともに、コンセプトプランナーとしてのSPD業務を通して、病院経営などの改善に資するものとし、もって医療の向上に寄与することを目的とする。
【主な事業】
⑴SPDに関する調査研究事業
⑵SPDに関する研究会・研修会などの開催
⑶SPDに関する教育・人材育成および資格認定事業
⑷SPDに関する機関誌および図書などの発行
【役員】
●理事長=笠原庸介(メディ・ケア情報研究所)
●副理事長=松本義久(サン・システム)
【会員】
●正会員(議決権あり)=法人会員(年会費20万円)△個人会員(同5万円)
●準会員(議決権なし)=医療機関会員(同7万円)△医療機関個人会員(同1万円)△団体賛助会員(同10万円)△関連事業団体会員(同無料)△名誉会員(同無料)△特別会員(同無料)
【事務局】
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