業界団体

「SUD再製造推進協議会」発足

医療機器関連の新たな産業の創設へ

「記者会見」の模様

1回限り使用できる単回使用医療機器(SUD)の再製造という新たな産業分野の発展と、単回使用医療機器再製造業者の育成を目的に、任意団体「単回医療機器再製造推進協議会」(理事長=松本謙一氏)が発足した。協議会は2月2日㈮午後3時から、東京・日本橋本町の日本橋ライフサイエンスビルで『記者会見』を開き、発足の目的や事業内容を発表した。

提言活動や普及啓発活動を推進へ

協議会発足の背景としては、使用済みの単回使用医療機器を医療機器製造販売業者が、その責任のもと適切に収集し、分解、洗浄、部品交換、再組み立て、滅菌――などの処理を行い、再使用できるようにする『再製造』に関する新たな通知を厚生労働省が昨年7月31日に示しことに端を発している。

この国からの新たな施策を受け、発足した協議会では医療の安全を確保しながら資源の有効活用、持続可能な医療の提供を可能にすることをめざし、関係行政機関への提言や意見調整を担っていく。また、単回使用医療機器の再製造の広く一般への普及、啓発、推進に向け、研修会や勉強会、シンポジウムなどを展開していく。

協議会の事務局は中立性、公益性を損なわないために、医療関係の人材育成を行っている松本財団内(東京都中央区)に設置した。現在の企業会員は9社だが今後、広く門戸を開き、多くの再製造関係企業に呼びかけていく。

米国では単回使用医療機器の再製造が、医薬食品局(FDA)により2000年から制度が整備され、現在は広く普及している。米国での主な再製造品には心臓EPカテーテルや腹腔鏡用シーリング装置、超音波メス先、関節鏡用シェーバ先、超音波カテーテル、パルスオキシメータプローブ、血圧用カフ――などがある。

また、ドイツでは再製造品はCEマークを取得してオリジナル品と同等として取り扱われ、EUでは2017年に医療機器指令を改訂して制度の整備が完了している。

医療機器を有効活用へ
医療廃棄物を削減し環境保全

松本理事長

会見で松本理事長は「昨年、参加した単回使用医療機器の再製造の勉強会で、その内容と聴講者の多さに熱気を感じ、日本もやらなければいけないと痛感した。ビジネスになる、ならないではなく、日本のために何かできればと思う」と自身の哲学で、単回使用医療機器の再製造を新しい産業として育成、発展に努めていく考えを明かした。

また、単回使用医療機器の再製造の意味合いに言及しては、①医療製品の有効活用②安全管理③環境保全④経済性――を列挙し、各内容を説明した。

①の医療製品の有効活用では「一般的に医療機器産業のみならず、他産業でも電子部品など部材の調達は大変である。活況を呈している半導体産業などで部品が使われてしまい、医療機器産業もそのあおりを食い、部品の調達がままならない、という話はよく耳にする」との状況を述べ、既存製品を有効活用する単回使用医療機器の再製造の意義を説いた。

②の安全管理では「滅菌期限切れの製品を院内で洗浄、滅菌して使用される例もあり、これを防止するため安全管理が大事になる。感染性、非感染性の問題以外にも、色々と問題がある。安全管理にはバーコードやRFIDなどツールはあるが、まずは意識改革が必要だろう」との考えを示した。

③の環境保全では「単回使用なので1回使われただけで、数十万円する手術器械・材料が捨てられてしまう。医療機関側からも『高価な手術器械・材料を1回で捨ててしまうのは非常にもったいない』という声をよく聞く。環境保全の観点から医療廃棄物を削減するためにも、単回使用医療機器の再製造を普及させていきたい」と環境保全に単回使用医療機器の再製造が役立つことを解説した。

④の経済性では「医薬品の場合はジェネリックのように財源の中からマイナスにできるものがある。医療機器の場合は単回使用医療機器の再製造がそれにあたるのではないか。ただ最初からお金ありきではなく、医療費を有効に使うには無駄をはぶいていかなくてはならない。再製造はどのように保険償還されるかも問題点かと思う」と述べ、単回使用医療機器の再製造を経済的に有効活用すべきと訴えた。

さらに、松本理事長は「マクロからミクロを見ることが非常に大事だと思う。単回使用医療機器の再製造という方向性が出た以上は、この基本目的に向かって課題解決をしていくことが大事だ。そこに哲学も出てくる」と産官学の協力のもと、新たな産業を育成していく覚悟を語った。

単回医療機器再製造推進協議会「概要」

発足日
2018年1月5日
事務局
一般財団法人松本財団内(東京都中央区日本橋浜町2―31―1浜町センタービル)
役員
〇理事長=松本謙一(サクラグローバルホールディング会長)
〇副理事長=佐伯広幸(日本ストライカー社長)▽佐々木勝雄(ホギメディカル生産本部長)
〇理事=古木壽幸(メディアスソリューション社長)▽小川治男(オリンパス専務)▽佐々木昭(ジョンソン・エンド・ジョンソンコーポレート・ストラテジー&コマーシャル・エクセレンス本部)▽林正晃(第一医科社長)▽東竜一郎(サクラ精機社長)
〇監事=関丈太郎(アイテック社長)
最高顧問兼特別会員
▽武藤正樹(国際医療福祉大学大学院教授)▽上塚芳郎(東京女子医科大学附属成人医学センター特任教授)
特別会員
▽安原洋(東京大学医学部附属病院教授)▽坂巻弘之(東京理科大学教授)▽青木眞(米国内科学会認定感染症内科専門医)▽高階雅紀(大阪大学医学部附属病院病院教授)▽洪愛子(元日本看護協会常任理事)
企業会員
▽アイテック▽オリンパス▽サクラグローバルホールディング▽サクラ精機▽ジョンソン・エンド・ジョンソン▽第一医科▽日本ストライカー▽ホギメディカル▽メディアスソリューション
会費
▽企業会員=年間10万円▽個人会員=年間1万円▽特別会員=免除
事業
⑴単回医療機器再製造に関する関係省庁、国内外関連団体との連絡・意見調整
⑵再製造医療機器に関する技術的課題の検討と関係省庁への提言
⑶再製造医療機器に関する海外状況の情報収集と提供
⑷医療機器再製造に関わる製造、販売業者等に対する法的要件の周知等に必要な勉強会の開催
⑸医療提供者に対する再製造医療機器に関する適切な情報提供活動
⑹その他本会の目的を達成するために必要な事業