「2025年度定時社員総会」開催【日医工】
会長に松本氏、理事長に東氏就任

日本医療機器工業会(日医工)は8月27日㈬午後3時から、東京・丸の内のパレスホテル東京で「2025年度定時社員総会」「特別講演会」「懇親会」を開催した。総会では25年度事業計画・予算を打ち出したほか、任期満了にともなう役員改選を行い、松本謙一理事長が会長に、東竜一郎副理事長が新理事長に就任した。また、副理事長には林正晃、松原一郎の両氏が再任し、新たに矢野守理事が副理事長に就任した。
アフリカの医療が活発に
グローバル戦略を考え協業へ
定時総会の開会にあたり、あいさつした松本理事長は医療機器の3つのキーワードとして、①安定供給②医療DX③国際展開――を挙げ、このうち国際展開に関して「先日、横浜でアフリカ開発会議(TICAD)が開かれ、私も興味のあるセッションに参加した。現在、アフリカの人口は中国とならんで14億人だが、2050年にアフリカの人口は25億人になると予測されている。今後、中国は少子高齢化で人口減少が予想されるが、アフリカは人口が増加すると言われている。これにともないアフリカのヘルスケアビジネスも活発になってきており、アフリカに援助する時代から、投資する時代になってきている」と今後、アフリカへの医療ビジネスが活発化することを示唆した。
国内の課題にふれては「医療機関の財政ひっ迫も大変で、国立大学医学部の6割が赤字となっている。そんな中、自由診療振興協議会(会長=鴨下一郎氏)の勉強会は毎回、満席となり産官学で色々と議論を重ねている。議論では医療費について〝今後も国民皆保険制度を維持できるのか〟〝米国のように民間保険とミックスすべきではないか〟などについて議論を展開。医療費の課題には医療機器も関わっており、今後も注視していくべき論点だ」と述べた。
昨年、日医工が創立50周年を迎えたことに言及しては「50周年記念事業として、6月25~27日の3日間、大阪で開催された医療機器・ヘルスケア関連の国際見本市『ジャパンヘルス』に出展した。諸外国から多くの医療機器関係者が来場した会場で、日医工の50年の軌跡や未来への提言などをアピールした」と報告した。
団体としての方向性にふれては「今はグローバルな戦略を考えていかなければならない時だ。また、個社だけが伸びればいいという時代ではなく、協業、コラボレーションの時代になっている。諸課題への解決策を会員の皆さまと一緒に考え、対応していきたい」と述べ、会員のさらなる団結を呼びかけた。
このあと、定款により松本理事長が議長となり、穴田輝彦専務理事が「会員総数127名中、出席34名、委任状提出57名の計91名」と総会成立を告げ、議事録署名に副理事長の林正晃、松原一郎、東竜一郎の3氏を選任し議事の審議に入った。
議事は2024年度事業・決算報告、役員選任、2025年度事業計画・予算。各議事とも担当役員が報告、説明を行い、原案通り承認、可決した。

このうち、役員選任では、役員選考委員会が選考した理事候補23名、監事候補2名が発表され、出席会員の承認を受けたあと、新理事らは別室で臨時理事会を開き、互選により、松本理事長が会長に、東副理事長が新理事長に選任された。また、林副理事長と松原副理事長の再任と、矢野理事の副理事長への昇格を決定した。
ここで、会長就任にたり松本会長は「日医工の内部と外部には諸課題が山積しており、これは分業して対応していかないと大変な時代になっている。そんな訳で今後は新理事長を補佐しながら、職責を全うしたい」と述べた。
色々なことにチャレンジ
会員、医療機関の役に立つ団体へ
一方、東理事長は「今後、日医工は世界情勢や、医療を取り巻く環境変化を踏まえ、色々なことにチャレンジしていかなければならない、と考えている。団体としての過去50年を見つめ直し、この先50年に向け、われわれは何をすべきか、『進化・深化・新化』をキーワードに、中期計画を策定し、これを皆さまにお示しし、1つひとつの成果をもとに事業を進めていく。そして会員企業や医療機関の皆さまのお役に立てるように信念を持ってまい進していきたい」と語った。
また、新任の矢野副理事長は「医療機器のキーワードの1つとして『国際展開』が大事かと思うが、現状は厳しい状況が続いている。私の所属するOMETA(海外医療機器技術協力会)でJICA(国際協力機構)や、JEF(国際経済交流財団)、JIHS(国際健康危機管理研究機構)の案件を中心に勉強を重ねており、会員の皆さまに報告していきたい。また現在、医機連の各国際委員会に参加しており、活動を通じて日医工のプレゼンスを高めていきたい」と抱負を述べた。
「進化・深化・新化」の実現へ
次いで、2025年度事業計画(下記参照)では、創立50周年の節目を経て、昨年に打ち出したキーワード『Progression~進化、深化、新化~』を実現すべく、これからの10年(2025~34年度)を3つの中期のフェーズに分け取り組んでいく。フェーズ1(25~27年度)で改革と改善、基盤づくりを行い、フェーズ2(28~30年度)で活動を浸透させ実践していく、フェーズ3(31~34年度)で成果の創出と持続的進化を図っていく。
特にフェーズ1では運営・活動の改革を通じて、会員のニーズに応え、業界発展につながる基盤の再構築を行う。また、財務面では体質強化を進め、27年度単年度収支の均衡を目指す。達成に向け25年度中に具体的な活動項目を設定し、随時実行していく。
特別講演会
「プラネタリーヘルス」をテーマに

総会終了後は「特別講演会」が行われ、日本医療政策機構の菅原丈二副事務局長が『プラネタリーヘルス~地球環境と人間の健康とが相互に影響し合うメカニズムを探求する概念~』をテーマに、約1時間講演した。
菅原副事務局長は「プラネタリーヘルスとは地球環境と人間の健康とが相互に影響し合うメカニズムを探求する概念のこと。人間の活動が地球環境に及ぼす影響に注目が集まるが、地球環境の変化が人間の健康に与える影響を解明するとともに、ヘルスケアセクターが担うべき役割を検討することが求められる」と説明した。
気候変動下における医療機器に要求されることにふれては「気温上昇や異常気象の頻発により、医療サプライチェーンが混乱し、医療機器は劣化や供給できないリスクが高まっている。これを踏まえ、気候変動に強く、低炭素、低毒性、再利用可能で持続可能な医療機器が求められる」と述べた。
日本医療機器工業会2025・2026年度役員
⦿会 長
松本 謙一(サクラグローバルホールディング)
⦿理 事 長
東 竜一郎(サクラ精機)
⦿副理事長
林 正晃(第一医科)
松原 一郎(アトムメディカル)
矢野 守(海外医療機器技術協力会)
⦿専務理事
穴田 輝彦(日本医療機器工業会)
⦿理 事
青木 健雄(泉工医科工業)=新任
浅野 薫(シスメックス)
網田 英邦(アイ・エム・アイ)
伊垣 敬二(特任理事)
植竹 茂(ケイセイ医科工業)
小栗 誠史(山田医療照明)
鎌田 毅(浜松ホトニクス)=新任
久保 美隆(パラマウントベッド)
清水 英治(ジョンソン・エンド・ジョンソン)
田代 光正(アムコ)
根本 裕司(ミズホ)
芳賀 聡(日本不整脈デバイス工業会)
平尾 泰朗(永島医科器械)
福田 修一(フクダ電子)
古海 敏恵(大陽日酸)
村中 亮太(村中医療器)
山田 純(PHC)
⦿監 事
本田 宏志(ニチオン)
眞弓 崇(ヤヨイ)
日医工「2025年度事業計画」
■基本方針
「Progress ion~進化、深化、新化~」の実行を通じ、業界団体としての価値と信頼を高める。
■重点項目
①創立50周年記念事業の総仕上げと活用
・ジャパンヘルスで発信した内容(新たな取り組み・新技術・国際展開)の継続的な発信
・クラウドファンディングの実施を通じた国際的な社会貢献
・50周年記念誌の公表
②コミッティ会議・委員会活動
・委員会全体の横断的なコミッティ会議の開催
・行政への政策提言
・透明性ガイドラインアンケート調査
・安全セミナーの開催
・医療・介護用ロボットの政策提言
③新規分野への挑戦と国際展開支援
・医療ロボット、AI、SDGsなどの分野における発信と提言
・国際展開の支援
④会員の支援とコンプライアンスの推進
・トップマネジメント層を含めたコンプライアンス意識の向上
・会員企業向け人財育成研修・ワークショップの導入検討
⑤基盤整備と組織力強化
・委員会活動の体制見直しと横断的運営の検討
・業務効率・情報発信力の強化
・正味財産適正化のための運用ルール検討