業界団体

未来予測や中期計画を発表【医療機器センター】

設立40周年にあたり「記者会見」開く

記者会見を行う(左から)菊地理事長、中野専務理事、新見常務理事

医療機器センターの菊地眞理事長、中野壮陛専務理事、新見裕一常務理事らは、7月30日にパレスホテル東京で開催した設立40周年記念式典に先立ち、本郷記者会への「記者会見」を開き、40周年を記念して作成した「医療技術フォーサイト2050」の概要や、第3期中期計画で同センターがチャレンジする3つの重点事項について発表した。

会見の冒頭、菊地理事長は「本日の会見内容は、後ほど中野専務理事から説明しますが、40周年を迎えた医療機器センターとして、これまで以上により熱い未来志向を、根幹的に始めていくことをお伝えしたく皆さまにお集まりいただいた」とあいさつした。

次いで、中野専務理事が医療技術フォーサイト2050を作成したことについて「私は長らく行政で未来予測などを行ってきたが、国が(フォーサイト2050のような)こんなに大胆なやり方で、将来を見越しているようなことをやってこなかった。これこそが、わが国の医療機器がアメリカに比べて少し見劣りする、あるいはいつも一歩遅れている一因でもあると思う。本日の記念式典ではフォーサイト2050を皆さまにアピールし、理解していただくための催し(パネルトーク)を考えている」と述べた。

医療技術フォーサイト2050を作成した背景に言及しては「急速な高齢化・人口減少、医療資源の偏在、AI・センサー技術の進展など、医療を取り巻く環境は大きく変貌しつつある。こうした長期的で構造的な変化に、技術開発・制度設計・現場実装がいかに応答すべきかを、多角的視点から問い直す必要があった」と振り返った。

これを踏まえ、医療技術フォーサイト2050の概要に関しては「2050年という将来を見据え、医療技術が果たすべき役割と、その設計思想を描き出したもの。医療現場に立つ7名の医師との共創を通じて、現場から生まれる実感と社会構造の変化を重ね合わせながら、医療技術の未来像とその実現に向けた方向性と考え方を提示し、医療技術の開発・実装・制度設計に関わる全てのステークホルダーにとって、共通の問いを共有し、共同の起点となることを目指している」と説明した。

次の10年へ向け飛躍へ
業界発展へ3つのチャレンジ

一方、医療機器センターでは、次の10年(第三期中期計画)に向けたチャレンジとして、①最速・丁寧(ていねい)な審査で認証取得へ②全社の採用情報100%達成へ③全ての子供があこがれる業界へ――の3つの重点事項を掲げている。

具体的には、①の『最速・丁寧な審査で認証取得へ』では、スピード、コストを最適化した認証審査で企業を支援していく。②の『全社の採用情報100%達成へ』では、業界初の「医機なび」をさらに強化して企業と学生のより良い出会いを応援していく。③の『全ての子供があこがれる業界へ』では、戦略的な広報活動を展開し医療機器業界・医療機器のイメージを刷新していく。

チャレンジのうち、③の戦略的な広報活動については、誰もがポジティブにイメージできるよう、業界一丸となって取り組んでいく。ポジティブなイメージとしては、▽国民が医療機器産業は日本の将来を担う有望産業と思う▽医療従事者が今後の医療を考える最重要テーマは医療機器、医工学と思う▽行政が医療機器はGDPを高め、医療費抑止の切り札と考える▽研究者が実装フェーズにおける医療機器開発に研究者としての未来があると考える――などを挙げ、誰もがポジティブなイメージができる業界に改革していく。これにより、子供たちがあこがれる業界、就職したいと思う職業ナンバーワンとなることを目指していく。

「医療技術フォーサイト2050」
若手医師7名が構想・編纂

「医療技術フォーサイト2050」

医療機器センターが設立40周年を記念して発刊した「医療技術フォーサイト2050」(A4判、96頁)は、2050年の医療技術のあり方を考える契機となることを願い作成されたホワイトペーパーで、医療技術の開発・実装・制度設計に関わる全てのステークホルダーにとって、共通の問いを共有し、協働の起点となることを目指している。

医療技術フォーサイト2050の作成にあたり、7名の医師によるワーキンググループ(リーダー=田村雄一・国際医療福祉大学医学部循環器内科学教授)を2025年2月に組成し、同年3月から月1回のペースで会合を開き、それに並行した執筆作業を通じて構想・編纂(へんさん)された。

WGメンバーはそれぞれ異なる専門領域の現場での診療に携わる中で、日常の臨床と未来の構想を往来しながら、各自の視点を持ち寄り、WGでの対話とともに内容を練り上げた。

同書は4章で構成。第1章「はじめに」では、この取り組みの背景と視座を記した。第2章「2050年の医療技術の指針」では、医師から提示された多様なキーワードを6つの『ファクター』に整理し、そこから導き出された3つの『ビジョン』と、6つの『アクション』をもとに、2050年に向けた医療技術のあり方を構想する土台を形成した。

第3章「7つの視座から読み解く医療技術」では、医師それぞれの専門領域の視点から、前章のビジョンとアクションを踏まえ、2050年の医療技術の姿を具体的に描き出している。第4章「医療技術の未来に向けて」では、この取り組みのまとめと、これからの発展の方向性を示した。

なお、第2章で示した6つの『ファクター』と、3つの『ビジョン』、6つの『アクション』は下記の通り。

「2050年の医療技術の指針」

【未来を形づくる変化としての6つの『ファクター』】
①都市構造の変化
②新たな医療格差
③人口構造の変化
④医療の知識構造の進化
⑤疾患数の増加
⑥人(技術・知識)とモノ(機器)の比重の変化
【医療の未来像としての3つの『ビジョン』】
①常態を再現する医療技術(質の向上)
②現場対応型の医療技術(量の拡大)
③動的・双方向の医療技術(時間・空間の拡張)
【技術の方向性としての6つの『アクション』】
①常態再現に向けた診断機器/治療機器(全体最適と制御設計)
②プラットフォーム医療技術(汎用化と連携基盤)
③現場に応じた適応型医療技術(現場適応と柔軟性)
④持続可能な簡素で低負荷な医療技術(簡素化と再設計)
⑤専門知を統合する医療技術(創発的知識と共創の仕組み)
⑥地域・生活圏へ展開する医療技術(日常と医療の接続)