将来の医療現場に貢献へ【JIRA】
「年頭所感発表会」で活動方針を説明
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日本画像医療システム工業会(会長=山本章雄氏、JIRA)は1月6日㈮午後4時から、東京・大手町のKKRホテル東京で「会長年頭所感発表会」を開催した。山本会長は2023年のJIRAの重要課題として、①技術の進展や医療現場のニーズを踏まえた将来の医療現場への貢献②会員企業の開発意欲を促進する環境整備③環境変化にともなう共通課題に対する会員企業への支援―の3項目を挙げ、産官学で意見交換を行いながら、各種活動を展開していくことを表明した。
年頭所感発表会で山本会長は2022年のJIRA活動を振り返り、4つのトピックスに言及。⑴新たな医療機器の早期社会実装に向けた環境整備⑵診療報酬評価⑶サイバーセキュリティ⑷国際展開―を列挙し、JIRAとして取り組んできた活動を報告した。
SaMDなどの早期社会実装へ
⑴の新たな医療機器の早期社会実装に向けた環境整備では「SaMD(プログラム医療機器)をはじめとした新たな医療機器の社会実装においてはデータ利活用・予見性・承認の3つの壁があり、特にSaMDの早期承認は、安全性を担保したうえで、早く市場に出してデータ収集を行い、仮評価をスタートさせ、蓄積したデータにより有効性の本評価を行うことで、予見性を確保していくことが必要になる」と説明した。
これを踏まえて「JIRAでは日本医療機器産業連合会(医機連)を通じて、さまざまな場面でSaMDの早期社会実装に向けた環境整備を提案してきた。昨年末の規制改革会議では、2024年度にもSaMDの早期薬事承認などを制度化という中間答申(案)が出された」との成果を報告した。
データ利活用環境の整備については「第2期医療機器基本計画の検討会などで、データ利活用については産業界を含めて社会に還元していくことが大切だということを繰り返し要望してきたことで、基本計画にも明記された。今後は計画の実行ステージにおいて、計画が着実に進み、よりよい運用となるよう行政側と対話を続けていきたい」と述べた。
診療報酬の評価について提言へ
⑵の診療報酬評価ではSaMDの評価や、C2申請の予見性向上、医療安全―の3項目について、定期会合や中医協で提言を行うための準備を進めてきたとして「SaMDについては加算評価の算定条件や施設基準などが存在しない技術評価の予見性向上に向けて、具体的な事例をベースに評価の在り方の整理を進めた。C2申請の保険評価の予見性向上に向けては、これまでC2申請に関する調査を実施した。その情報分析を基に今後のC2申請の提案力強化と予見性向上を目指していく。医療安全に向けては医療機器の長期臨床使用によるリスクの整理、被ばく管理の推進、モニタ起因のヒヤリハットに基づいた要件整理を行った」と報告した。
⑶のサイバーセキュリティでは「患者安全について4月から薬機法に基づいた法令が実施されることに向け、行政へ詳細な実施内容と適用時期の意見を提案した。会員企業へはサイバーセキュリティ対応に関する周知・啓発活動として、昨年12月から関連動画をホームページで配信した。医療機関へは医療機器サイバーセキュリティ対策の周知活動を行っている」と活動内容を説明した。
⑷の国際展開ではMDR(欧州医療機器規則)審査・認証遅延対策として「行政経由でWTO TBT委員会で欧州委員会のフォローを行い、EU閣僚理事会の雇用・社会政策・健康・消費者問題評議会(12月9日)でMDR移行期間延長案が示された」と報告した。
IMDRF(国際医療機器規制当局フォーラム)の活動に関しては「昨年12月までJIRAの大塚事務局長がDITTA(国際画像診断・医療IT・放射線治療産業連合会)議長を務め、そこで医療機器国際規格の品質改善を訴え、IMDRFのIEC(国際電気標準会議)、ISO(国際標準化機構)とのリエゾンプログラム実行を提言した。そして、昨年5月にIMDRFのリエゾンプログラム文書が公開にいたった」と報告した。
そのほか、ベトナム保健省が来日した際に、医機連役員との面談を行い、高度医療機器の承認プロセスや公的病院などでの入札停滞の改善を要望したこと、を報告した。
社会変化に対応して活動を展開
また、2023年の年頭にあたり山本会長は「人工知能を搭載したSaMDをはじめ、新しい技術の医療への社会実装がいよいよ加速してくる段階に近づいていると感じる。既存の企業にとっては社会の変化への対応も必要になる。また、IT企業のようなスタートアップ企業がJIRA会員として仲間入りしている。新しい技術の社会実装には新たな課題もあり、会員企業との対話とJIRA委員会活動を通じた産業振興を推進していきたい。一方、10年に1度起きるような出来事が頻発しており、レジリエンスの向上が必要と強く実感する。さらに、コンプライアンスの問題は画像医療システム産業も例外ではなく、いまいちど会員企業一同、襟を正し、日々の活動に取り組んでいきたい」との方向性を示した。
これを踏まえ、JIRAでは2023年の重要課題である、①技術の進展や医療現場のニーズを踏まえた将来の医療現場への貢献(診断支援技術の適用拡大、人工知能の市販後学習など)②会員企業の開発意欲を促進する環境整備(保険償還における予見性の確保、法規制解釈ガイドラインなど)③環境変化にともなう共通課題に対する会員企業への支援(部材調達、物流、脱炭素等環境負荷の低減、人材育成など)―に対応した活動を展開し、画像医療システム産業の発展に取り組んでいく。