業界団体

スタージャパンに「厳重警告」【医療機器公取協】

手術動画で報酬提供の規約違反で

「記者会見」に臨む医療機器業公正取引協議会の関尾専務理事(中央)と岡常任運営委員会委員(左)、津藤事務局長

医療機器業公正取引協議会(会長=松本謙一氏、東京都中央区)は、7月13日㈬午後2時から、同協議会事務局で「記者会見」を開き、医師らに自社製品の白内障用眼内レンズ(IOL)を使用した手術用動画の提供を依頼し、報酬を支払っていた会員事業者のスタージャパン(社長=中田博之氏、千葉県浦安市)に対し、医療機器業公正取引規約の違反行為を行っていたとして「厳重警告」を行った――と発表した。

スタージャパンは米国の眼内レンズメーカーの日本法人。設立は1988年。資本金3億8000万円。従業員数は51名。売上高は約40億円――の中堅医療機器企業。

スタージャパンが行っていた規約違反行為の内容は、2018年12月から2022年3月までの間、医師や医療機関に対して、同社製のIOLを使用した手術用動画の提供を依頼し、受け取った動画に対して報酬を支払うキャンペーンを「ビデオキャンペーン」と称して、毎年、実施していた。

ビデオキャンペーンの実施にあたり、同社のIOL営業本部長(当時)名による営業担当者向けの社内指示文書には、同キャンペーンが「市販後調査(PMS)の代替え施策」であり、「(医師の)動画協力による売り上げ確保」であることが、はっきりと明記されていた。

この指示を受け、営業担当者は医師や医療機関に対して、同社製のIOLを使用して動画を作成することを依頼した。IOLの使用枚数は50眼(枚)から100眼(枚)程度が大半であったが、医師によっては、300眼(枚)から400眼(枚)の使用を依頼していたケースもあった。

ビデオキャンペーン期間中、同社は医師や医療機関との間で126件の業務委託契約を締結し、医師75名(68施設)から117本の動画の提供を受け、それに対する報酬として総額2145万7300円を支払っていた。

提供を受けた117本の動画のうち、同一医師から複数の動画の提供を受けたケースもみられ、最も多いもので7本の動画の提供を受けていた。

動画1本あたりの報酬額は医師により差があり、2万円から100万円までかなりの幅があった。報酬額を最も多く受け取っていた医師は220万円(動画4本分)で、最も少ない医師は2万円(動画1本分)であった。

同社では提供を受けた動画の一部を自社ホームページへの掲載や学会での放映、社内勉強会などに利用していたが、社内で動画の管理はしておらず、一度も利用したことがない動画も相当数あった。

医療機器業公正取引協議会は、同社が実施したビデオキャンペーンが自社の医療機器の購入を不当に誘引する手段としての金銭提供であることから、医療機器業公正競争規約の第4条第1号と第2号に該当し、規約第3条の規定に違反する――と判断した。

これにともない、同協議会では7月13日に同社の中田社長を呼び出し「厳重警告」を行った。これを受け、同社は再発防止の是正措置を報告するとともに、今後、同様の行為を行わない旨の誓約書を交わした。また、1年後に再発防止策の改善状況報告書を提出することになっている。