ソサエティ5.0支える産業へ―医機連
AI活用した医療機器開発を
医療機器関連21団体で組織する日本医療機器産業連合会(会長=渡部眞也氏、医機連)は8月10日(木)午前11時から、医機連事務局内で「メディアセミナー」を開催した。セミナーで渡部会長は会長就任時(6月)に掲げたテーマ『ソサエティ5・0(超スマート社会)を支える医療機器産業を目指して』についてプレゼンテーションを行った。日本の強みである技術力を活かし、AI(人工知能)を活用した医療機器を医療現場に届け、産業の活性化と発展をめざしていきたい―と表明した。
渡部会長がテーマに掲げるソサエティ5・0(超スマート社会)は、政府が第5期科学技術基本計画で示した未来社会の姿。これまでの人類の歴史で、狩猟社会→農耕社会→工業社会→情報社会に続く新たな経済社会で、ビッグデータやAIなどの活用により、人々がより快適で質の高い生活をすることができる社会の実現を目指している。
医療関連でのソサエティ5・0の実現例としては、▽遠隔医療による通院負担の軽減▽データやAIを活用した最適なケアプランによる要介護度の改善▽患者の健診・治療・介護記録の一元化による初診、救急時の治療の最適化―などが見込まれている。
これを踏まえ、渡部会長は「今後はAIが医療の中にどんどん入ってくるだろう。大きなイノベーションが起きる期待感がある。医療機器産業として、ソサエティ5・0を支えていきたい」と語った。
AI活用が期待される医療の分野としては▽日本の医療技術の強みを発揮する分野▽保健医療分野の課題(医療情報の増大、医師の偏在)解決分野―の2つを示し、実用化が比較的早く進む領域に『ゲノム医療』、『画像診断支援』、『診断治療支援』、『医薬品開発』を、実用化が段階的に取り組まれる領域に『介護認知症』、『手術支援』を列挙し、各領域の方向性を予測した。
AI医療機器の実用化、普及へ
渡部会長は「医療へのAIの活用は現在、2020年くらいからの保険償還を視野に議論が進んでいる。技術的な面では今後、データの活用→AI性能向上→臨床での活用→データの蓄積―といった正のスパイラルで回り、実用化に向かっていくだろう」と将来像を示した。
現在、開発が進んでいるAIを活用した医療機器システムを紹介しては、①日本電気のAIを活用したリアルタイム内視鏡診断サポートシステム開発への取り組み②富士フイルムとオリンパスの内視鏡とAIを高レベルで融合させた検査技術の開発への取り組み③東京大学発ベンチャー・エルピクセルのAIを活用した医療画像診断支援システム開発への取り組み④日立製作所のAIを活用した医療機器の保守点検で故障予兆検知システムの開発への取り組み―などの実例を挙げ、AIを活用した医療システムの有効性を説いた。
AIを活用した医療機器を早期に医療現場に導入するため、開発ガイドラインや評価指標・審査体制の指標に関する議論が進んでいることにふれては「従来、日本の医療機器開発はモノができてから規制を行ってきたが、AI活用の医療機器開発では、モノができる前に開発ガイドラインを作成する議論が行われている」と報告した。
また、「AIを活用した医療機器は上市後、臨床現場で使用しながらディープランニング(深層学習)をさせていくことで学習、復習を繰り返し、さらに進化、発展していくことができる」とAI機器の未来性を強調した。