国内医療機器市場規模は約4兆円【医機連】
「薬事工業生産動態統計」を再定義
日本医療機器産業連合会(会長=三村孝仁氏、医機連)は、6月29日㈫午前11時からWebによる「第8回医機連メディアセミナー」を開催し、公的統計データと、日本の医療機器産業の概況を解説した。
Webセミナーでは医機連の医療機器政策調査研究所(MDPRO)が調査、研究している医療機器産業の現況や方向性などの分析結果を発表した。MDPROの久芳明所長が『医療機器産業の現状と動向―薬事工業生産動態統計を中心に』、小濱ゆかり主任研究員が『オープンデータからみるコロナ禍における医療機器経営の状況と医療機器産業の業績動向』をテーマに、それぞれ講演した。
講演で久芳所長は薬事工業生産動態統計の統計方法が変更後、初めて公開された2019年データについて「従来、医療機器の国内出荷額は約3兆円とされてきたが、新統計方法により、19年の医療機器市場(国内出荷高)は約4兆円となった」と発表した。
データ報告者を製造業者から製販業者に変更
統計方法の変更点としては「従来は製造業からの報告を集計していたが、変更後は製造販売業に限定し、連結での販売価(業者渡し)の報告とした。また、輸入額は輸入価ではなく、輸入品の国内販売価を報告することになった。さらに、衛生材料の区分は止め、医療機器と医薬部外品の枠内で公表したほか、体外診断薬は医薬品の枠内で公表した」と説明した。
統計方法の変更により改善された点に関しては「医療機器の分類は類別105、一般的名称(JMDNコード)約1750に分類されて公表され、JMDNコードなので、他のデータとの連携が可能になった。また、従来、内資企業が海外連結子会社で生産した商品を輸入する場合は区別できなかったが、変更により『逆輸入分』として品目ごとに輸入金額や輸入対象国などをデータ化できるようになった」と統計データの精度が向上したことを明かした。
統計データの限界にふれては「この統計には卸業関連情報や、保守・サービス情報、医療機器ではない健康関連ヘルスケア商品情報は含まれていない」とした。
変更された『薬事工業生産動態統計』の活用法に言及しては、▽「国内生産品比率」を用いた国内生産状況の評価▽新しい生産力評価指標「生産力インデックス」の利用――の2つを提案。「国内で出荷された医療機器のおける国内生産品比率は、パンデミック時に海外とのものの動きが止まってしまった際など、安定供給の評価をする指標の1つになるのではないか。一方、生産力インデックスは国内生産品と逆輸入品を合わせた比率がどうなっているか試算し、新たな生産力の評価として検討してみてはどうか」と活用法を提案した。
医療機器産業は業績回復傾向に
次いで、小濱ゆかり主任研究員はコロナ禍における医療機器産業の業績動向として、上場している医療機器製造販売業者(46社)の2020年度四半期ごとの売上高と営業利益率を、前年同期の値と比較し、コロナ禍の影響を分析した結果を公表した。
分析結果によると2020年4~6月期はコロナ禍特需や、一部プラス要素のある企業を除き、減収・減益傾向にあった。同7~9月期は売上高がやや回復傾向にあったが、営業利益率は一部で上昇したが低い伸び率であった。
20年10~12月期は全体的に増収・増益にシフトした。材料系企業の回復が、設備系を有する企業に比べるとやや停滞気味となった。この傾向は継続されており、21年1~3月期もほぼ横ばいとなっている。