業界団体

日本光電に「厳重警告」【医療機器業公正取引協議会】

公正競争規約の違反行為で

記者会見を行う医療機器業公正取引協議会の関尾専務理事(中央)ら

医療機器業公正取引協議会(会長=松本謙一氏、東京都中央区)は、6月22日に事務局内で「記者会見」を開き、『医療機器業における景品類の提供の制限に関する公正競争規約』に違反する行為を行った日本光電工業(社長=荻野博一氏、東京都新宿区)に対し、同日付けで厳重警告を行ったことを発表した。

日本光電が行った規約違反行為の概要は、2019年8月30日、取引先の三重大学医学部付属病院臨床麻酔部が使用する生体情報モニタなどの医療機器について、日本光電製品が納入されるよう有利便宜な取り計らいを受ける見返りとして、同臨床麻酔部部長の亀井正孝元教授の求めに応じて金品を提供した汚職事件。

具体的には、第3者供賄容疑で逮捕された亀井元教授から資金提供を求められた贈賄側の日本光電の担当者(3名)が病院側に製品を納入する際、本来より安い価格で製品を供給し、亀井元教授は日本光電側に入札で便宜を図った見返りに、自身が代表理事を務める一般社団法人の口座へ200万円を振り込ませたもの。

第3者供賄の罪は容疑公務員が職務に関して請託(依頼)を受け、自分以外の第3者を受領者として金品などのわいろを供与させた場合に成立。公務員以外に渡された金品でも公務員の職務行為と対価関係があることを明確にするため、請託が要件とされている。法定刑は五年以下の懲役となる。

日本光電は事件発覚後、社外取締役、外部の弁護士を含む調査委員会を設け、事実関係の解明や、原因分析などの調査を進め、調査報告書としてまとめた。

調査委員会からの調査報告書を受け、日本光電は再発防止を推進するための「再発防止策実行管理委員会」を運営会議の下部機関として設置。具体的な再発防止策を速やかに策定、実行し、再発防止策が早期かつ確実に実行されるよう実行管理していく。

なお、日本光電では、今回の事態の重大性を厳粛に受け止め、コンプライアンス委員会などで処分内容を次の通り決定した。

▽代表取締役社長執行役員・荻野博一=月額報酬の30%を3か月減額
▽代表取締役専務執行役員(国内事業統括)・田村隆司=月額報酬の30%を3か月減額
▽取締役常務執行役員(コンプライアンス担当役員)・長谷川正=月額報酬の20%を3か月減額
▽事件に携わった中部支店営業部長、三重営業所長、同所担当営業の3名は4月15日付で懲戒解雇

医療機器業界の自主ルールについて

医療機器業者は生命に関わる企業であることから、その事業活動を行う上で「医薬品医療機器等法」「独占禁止法」「臨床研究法」等国の定めた法令等を遵守することは勿論、医療機器事業者自身が定めた業界の自主ルールの遵守が強く求められています。

この医療機器業界の自主ルールは①「倫理綱領」②「企業行動憲章」③「医療機器プロモーションコード」④「医療機器業公正競争規約」――の4つ(下記参照)。

①から③は日本医療機器産業連合会(医機連)が、また④は医療機器業公正取引協議会が策定し管理運営を行っている。いままでは医機連の「透明性ガイドライン」を含め「5つの自主ルール」だったが、透明性ガイドラインについては、新たにプロモーションコードの1項目目となった。

これらの自主ルールは、医療機器業界において平成3年から4年にかけて続発した不祥事(贈収賄事件)によって社会的な厳しい批判を受け、当時の厚生省から商慣習の改善を求める行政指導を受けたことから、医療機器業界が自ら制定したもの。

医療機器業界の4つの自主ルール

① 倫理綱領『医療機器企業の行動指針と経営トップの責務』
会員企業は医療の一端を担う企業として、高度な倫理性に根差した事業活動を行わなければならない。高品質で費用対効果に優れた技術を生み出し、医療機器関連産業の発展に寄与する事により、医療の向上に貢献し、社会に信頼を得るよう努めなければならない。

② 企業行動憲章『医療機器企業の行動指針と経営トップの責務』
会員企業は常にコンプライアンスを念頭におく企業文化の確立を目指し、企業の社会的責任(CSR)に取り組む。経営トップは、本憲章を率先垂範し、従業員の自立した行動や告知を保護し、違反に対しては迅速、的確な情報公開と説明を行い、権限と責任を明確にした上で自らを含めて厳正な処分を行う。

③ プロモーションコード『適正な事業活動・正常な商慣習の確立に向けた医療機器企業が遵守すべき行動基準』
会員企業は患者の健康と福祉に貢献することを最優先に考え、高い倫理観を持ってコンプライアンスに根差した透明性の高い企業活動を実践する。また、従業員等が行うプロモーションの一切の責任を有することを自覚し次の事項を実行する。
・製品の有効性及び安全性の確保
・公正かつ自由な競争の確保と透明性の高い適正な企業活動
・医療機器に関する情報は、明確な科学的根拠に基づく最新のデータを適正な方法で提供
・適正なプロモーションの追行のため、役員・従業員等に対する継続的な教育研修・社内体制の整備

④ 公正競争規約『医療機関等に対する不当な景品類の提供の制限』
事業者は医療機関等に対し、医療機器の取引を不当に誘引する手段として、景品類(金品、旅行招待、供応、便益労務、無償で提供する医療機器などの経済上の利益)を提供してはならない。