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「シルクロードビジネスセミナー」開催【日本ウズベキスタン財団ヘルスケア部会】

「ウズベキスタンとの医療交流ビジョン」テーマに

ヘルスケア部会の「ビジネスセミナー」会場の様子

日本ウズベキスタン・シルクロード財団ヘルスケア部会(部会長=松本謙一氏)は、10月7日㈬午後3時から、東京・大手町のKKRホテル東京で、「第22回シルクロード・ビジネスセミナー」(テーマ=新時代の日本とウズベキスタンのヘルスケア分野における国際交流ビジョン)を開催した。

現地に「医療情報センター」設置へ

松本部会長

開会にあたり、あいさつした松本部会長はスライドを使い、2015年に安倍前総理のウズベキスタン訪問に合わせ民間ミッションでウズベキスタンを訪問したことや、同国の保健大臣とMOUを結んだことなど、ここ数年間のウズベキスタンとの関係を紹介した。

また、「ウズベキスタンには93の大学と、27の海外大学の分校があり、アカデミックな点でも優れた国である。海外医療機器技術協力会(OMETA)が結んだMOUでは、日本とウズベキスタンの間で『医療情報センター』を現地の医療大学内に設置するこが決まっているが、新型コロナウイルス感染症の影響で話が進んでいない状況だ。そのほか、JICA(国際協力機構)のプロジェクトもいくつか進んでいたが、コロナの影響で当初の予定より遅れているが、実行されることを期待している」と新型コロナウイルス感染症の影響でいくつかのプロジェクトが遅れていることを報告した。

ファジロフ大使

このあと、ファジロフ・ガイラト駐日ウズベキスタン共和国特命全権大使は「19年12月に当国のミルジヨエフ大統領が日本を公式訪問して、調印された合意内容を見ても、訪日はまさに歴史的で、二国間関係に新しいページを開くものとなった」と両国間の協力関係を活性化させる条件が整ったことを明かした。

ウズベキスタンの保健システムの発展に向けては「ヘルスケア分野では今年の国家予算で15億㌦が割り当てられ、これは16年の金額の2.5倍になる。また、医療機関の建設や大規模改修、医療機材の整備に約1億1580万㌦が割り当てられている。海外の進んだ技術をヘルスケア分野に誘致すること、最新の医療施設や関連の生産拠点を作ることなどに注力している」と述べた。

ヘルスケア分野におけるウズベキスタンと日本の相互協力に言及しては「医療用保育器と滅菌器の生産事業、脳神経センターの新設や最新医療機材の整備などの事業が進められている。本日のセミナーが新しい協力の道と有望なプロジェクトを見つける機会になることを期待している」とあいさつした。

武田室長

次いで、外務省欧州局中央アジア・コーカサス室の武田善憲室長は、日本とウズベキスタンの二か国間での協力事例について「6月の閣議決定でウズベキスタンに無償資金協力(5億円)で医療機器の供与が決まり、具体的な器材供与に向けた調整を行っている。また、新型コロナウイルス感染症に効果があるといわれる『アビガン錠』を供与し、ウズベキスタンで実際に使った治験結果の報告を受けている」と語った。

医療を産業として輸出
アジア中心に医療人材を育成

引き続き、ビジネスセミナーでは経済産業省商務・サービスグループヘルスケア産業課国際展開推進室の秀嶋由理子係長が『経産省の医療機器・サービスの国際展開推進の活動について』、厚生労働省医政局総務課医療国際展開推進室の中山陽輔課長補佐が『医療の国際展開にかかる厚労省の取組』、JICA東・中央アジア部中央アジア・コーカサス課の登坂宗太課長が『JICAの2020年度ウズベキスタン事業の展望』を、それぞれテーマに講演した。

まず、秀嶋課長は経産省のヘルスケア分野の国際展開に関する考え方について「相手国への貢献はもちろんのこと、医療を産業として輸出することで日本側も対価を得る、というのが経産省の方針です。その中でアジアを中心に現地の保健省や医療機関の方々と、日本のメーカーや医療従事者の方々との医療交流、ビジネス交流を支援させていただいている」と説明した。

通産省の2つの方式からなるプロジェクト支援の実例にふれては「1つは医療サービスの輸出で、日本の医療機関が海外で医療サービスを提供する際に運営方法などを支援している。事例としては16年に北原国際病院(東京都八王子市)がカンボジアのプノンペンで救命救急センター(病床数50床)を開業する際に支援させていただいた」と語った。

もう1つの支援方法については「医療機器だけを売ろうとしても難しいので、人材育成と医療機器トレーニングセンターをパッケージ化した支援を行っている。事例としては、14年に日本消化器内視鏡学会とオリンパスがインドネシア国立チプト病院内に『内視鏡医療センター』を開設した際の支援を行った」を述べた。

このあと、中山課長補佐は厚労省の国際展開の方針にふれ「日本が培ってきた医療制度や技術、人材を海外で展開し海外の医療発展に貢献していく。それによって日本の技術や医療機器、政策が普及する下支えを行っている。現在、アジア・中南米を中心に26か国と協力覚書を結び、各国のニーズに合わせた国際展開事業を推進している」とした。

このうち、医療技術等国際展開推進事業について「医療機器を直接、売り込むのではなく、日本で普及している医療機器を使えば相手国の課題が解決できることを、現地の病院に導入し実証していく。さらに、それにともなう人材育成も行っていく。あるいは看護師を日本に呼んで研修してもらい、その経験を現地で活かしていただいている。これは27年度から実施しており、これまでに2万7000人ほど方が研修を行った」と解説した。

ウズベキスタンへの支援事業に関しては「平成28年度にウズベキスタンの医師10人ほどが来日し、C型肝炎の検査方法や検査機器の使い方を学んで帰国した」と紹介した。

次いで、登坂課長はウズベキスタンのコロナ禍の状況について「3月15日に初感染者が出て、3月下旬に首都タシケントを封鎖したが、現在は経済活動の再開に向け、徐々に規制を緩和してきている。9月28日現在の累計感染者数は5万5401人(死亡者459人)で、新規感染者は1日に500人から700人を推移している」と報告した。

しかし、ウズベキスタンの全死因の84%は非感染性疾患であることを憂慮し「コロナ禍で感染症問題が全世界で注目されているが、ウズベキスタンの足元をみると、従来通り、非感染性疾患をどのように抑えていくか、その治療に必要な医療機器をどれだけ確保できるか、そういったことを軸に私どもはウズベキスタンとの関係を作っており、これに着目した案件を引き続き実施していきたい」と表明した。

円借款による医療サービス強化事業で形成途上にある案件については「3次医療レベルの国立脳神経センター(250床規模)をタシケントに建設・機材整備の協力のほか、地方都市のアンディジャンとサマルカンドの医学研究所2か所に医療機材の供与協力を行うことになっているが、コロナの影響でコンサルタントが現地入りできず、現在はオンラインベースで情報収集を行っている」との状況を説明した。