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「設立10周年記念講演会」開催【米国医療機器・IVD工業会】

AMEDの末松理事長が講演

「設立10周年記念講演会」会場の様子

米国医療機器・IVD工業会(会長=加藤幸輔氏、AMDD)は今年で10周年を迎えたことを記念して、9月12日㈭午後4時15分から、東京・内幸町の帝国ホテルで「設立10周年記念特別講演会」を開催した。講演会では講師に招へいした日本医療研究開発機構(AMED)の末松誠理事長が『AMEDのミッション:データリンケージとシェアリングによる医療分野の課題解決』をテーマに熱弁をふるった。

超高齢化社会の課題にスピード対応

講演するAMEDの末松理事長

講演で末松理事長は超高齢化社会を迎えることにふれ「われわれAMEDが共有している問題意識は、超高齢化社会に対応するスピードの速さである。日本では2040年に高齢者人口がピークを迎えるが、それ以降の未来は想像ができるが、誰も経験したことがない。現在でも100歳以上の高齢者が病院に通院するのは当たり前ですし、1人ひとりがいろいろな病気を経験して100歳近くまで生きてきているわけで、20年後の超高齢化社会はどのような状況になっているかは誰にも分からない」と超高齢化社会による社会構造の変化を憂慮した。

超高齢化社会の問題は医療分野以外にもあることついて「例えば高齢者は家族と一緒に生活しているか、というと、そうではない方も多い。こういう問題も含め、社会的インフラをどのように作り直したらいいのか、根本的に考えないといけない。単に今まで作ってきたインフラが老朽化したので、それと同じマインドセットで直したとしても、本当にそれで大丈夫なのか、と思わざるを得ない」と問題を提起した。

20年後に向け、歳月の考え方として「20年後というと、研究者は5年サイクルの研究が4回しかできないと考えてしまう。製薬企業も10年くらいで薬を作るにしても大変なご苦労があるのではないか。医療機器企業も医療機器の承認が得られたとしても本当の勝負はポストマーケットサーベランスで、そこでどういう実績を積むかまで考えると何年もかかってしまう。このようなことを考えると、超高齢化社会に対応するには、われわれに残されたチャンスは1サイクルか2サイクルだと思う。そこでは医療関係者だけでなく、社会基盤に精通している方々など、多くの皆さんで知恵を出し合わないと解決できないだろう」と示唆した。

超高齢化社会への対応として「全国各地の医療現場でどのようなことが起こっているかをファクトデータとしてまとめることが大事になる。それは10年後、20年後を予測するのに非常に重要なリアルワールドデータになる」と情報の共有の大切さを強調した。

国立情報学研究所(NII)が推進する共通プラットフォームにふれては「日本病理学会や日本消化器内視鏡学会、日本医学放射線学会、日本眼科学会などが持つ画像情報を集積し、AI解析により診断支援ソフトや診断補助システムの開発に取り組んでいる。これにより効率的な臨床研究・治験への応用を図っていく」と情報の共有化による取り組みの一端を紹介した。

レセプトと介護の両データを連結へ

超高齢化社会に活用できるデータベースの構築に向けては「日本には世界に冠たるレセプトデータがあるが、医療サービスを受けたあと、その人のQOLがどうなったかのデータがない。そこで、厚生労働省では介護データとレセプトデータを連結することを法律的に可能にした。両データの連結は相当大変な作業になるが、AMEDもサポートしていきたい。超高齢化社会に向けた、われわれに残された時間はたったの20年しかないので、国民のQOL情報も活用できるようにしていきたい」と超高齢化社会戦略の立案にデータベースの活用が重要であることを解説した。