英オルガノックス社買収【テルモ】
臓器移植関連分野に本格参入
テルモ(社長兼CEO=鮫島光氏)は、臓器提供者(ドナー)から摘出した移植用臓器を保存する「臓器保存デバイス」の開発を手がける英国オルガノックス社の株式を約15億㌦(約2210億円)で取得し、完全子会社化する。これにより、テルモは今後も高い成長が期待できる臓器移植関連分野に参入する。
オルガノックス社は2008年にオックスフォード大学からのスピンオフで設立された医療テクノロジー企業で、常温機械灌流(NMP)に対応した先進的な臓器保存デバイスを提供している。臓器を冷却して損傷を抑える従来の手法とは異なり、酸素や栄養を含んだ保存液を体温に近い温度で臓器に循環させることで、従来より長期間の保存ができる。
また、保存中や輸送中も臓器の状態をリアルタイムに評価することができ、機能が低下した臓器の移植を回避して移植の成功率を高めることや、標準的ドナー条件を満たさないマージナルドナーの臓器の有効活用に貢献することが期待されている。
オルガノックス社が開発した肝臓用NMPデバイスは2021年に米国FDAの承認を取得し、2022年に米国で上市されたほか、EUや英国、オーストラリア、カナダでも薬事承認を取得し販売している。これまでに延べ6,000例以上の肝臓移植での利用実績がある。さらに、2030年頃の実用化を目指して腎臓用NMPデバイスを開発している。
テルモは2025年3月にコーポレートベンチャーキャピタルのテルモベンチャーズを通じてオルガノックス社に出資した。今回の買収によりテルモの中・長期的な成長をけん引する新たな事業を確立する。今後は両社の強みを活かしたシナジーの創出に取り組み、テルモグループのアセットを活用することで、より付加価値の高いNMPデバイスの実現を目指していく。