遠隔医療市場199億円へ【矢野経済研究所】
診療報酬改定の効果で市場拡大へ
矢野経済研究所(社長=水越孝氏、東京都中野区)は、2019年度の遠隔医療市場規模が15年度より76億3700万円増の199億600万円になると予測した調査結果を公表した。遠隔医療は診療報酬上の課題も指摘されているが、18年度の診療報酬改定ではプラス改定が期待され、医療機関での導入が加速するとみている。
調査では遠隔医療市場を①遠隔画像診断市場②遠隔病理診断市場③遠隔診療市場④遠隔健康管理市場――の4市場に分類。これら4市場を合算して市場規模を算出した。遠隔医療は主治医を基点に、対専門医と対患者に分類され、遠隔画像診断と遠隔病理診断市場は対専門医に、遠隔診療市場と遠隔健康管理市場は対患者に位置付けられる。
15年度の国内遠隔医療市場規模を振り返ると122億6900万円で、遠隔画像診断市場が全体市場をけん引していた。
遠隔画像診断市場は個人事業者も含め読影事業者数が多く、すでに成熟期を迎えている。契約施設数や読影件数ともに右肩上がりで推移。読影件数は画像診断件数の増加にともない、1ユーザー(医療機関)あたりの依頼件数も増加し、中期的には安定的に推移すると予測している。
遠隔病理診断市場は18年の診療報酬改定で、病理医不足や病理医の地域偏在などの課題を是正するような改定や加算(特に術中迅速病理診断の改定や加算)が実施されるとみられ、術中迅速病理診断の普及が加速し、医療機関への遠隔病理診断用機器・システムの導入数が増加することが予想されることから、短期的には微増、中期的には増加すると予測している。
遠隔診療市場は重症化予防や服用指導、生活習慣病による医療費増加に対する抑制効果が期待されており、18年の診療報酬改定でプラス改定が予想されている。その場合には医療機関の導入がさらに期待されることから、急速な市場拡大が進むと予測している。
遠隔健康管理市場は17年度の特定保健指導で遠隔面接の事前届が廃止となり、利用者と医療従事者が離れていることが条件の遠隔面接も遠隔健康管理の一部となる。これにより遠隔健康管理の主たる財源者は自治体から特定保健指導を実施する保険者(健康保険組合)になり、福利厚生を業務委託している福利厚生アウトソーシング事業会社が遠隔健康管理を主導する可能性もあると予測している。