企業活動

病理検査の最新情報を提供【サクラファインテックジャパン】

がん診断の最前線セミナー開催

講演する東京大学の佐々木特任教授

病理のトータルソリューションを提供するサクラファインテックジャパン(社長=石塚悟氏、東京都中央区)は、3月12日㈫午後1時30分から、同社内で「プレスセミナー」(がん診断の最前線~がんを見逃さないための医療DX)を開催した。東京大学大学院医学系研究科次世代病理情報連携学講座の佐々木毅特任教授が、がん確定診断における病理検査の重要性や病理DXの方向性について講演した。

セミナーの開会にあたり、同社マーケティング本部の桜井恵子本部長は「弊社はサクラ精機から独立した、がん診断の中でも病理に特化した会社で、病理標本作製の製品を扱っている。製品は輸出の割合が多く、売上高の48%が米国、34%が欧州となっている」と事業内容を紹介した。

同社のミッションにふれては「クラス最高のイノベーション、品質およびお客さまへの配慮を通じ、病理と患者さまのための一体化されたソリューションを提供することで、がん診断を進展させる」と述べ、単なる機器の販売だけでなく、サービスとアプリケーションを含めたトータルソリューションを提供することが同社の強みである、と強調した。

災害対策で病理検査のDX化が課題

このあと、佐々木特任教授は『病理を取り巻く環境と未来』をテーマに講演した。講演で佐々木特任教授は「東日本大震災で被災した医療機関では、病理部門に保管してあった患者情報は全て失われた。災害対策として病理情報はデジタル化して、遠方のクラウドに画像保管しておく必要がある」と語り、病理のDX化が喫緊の課題であることを明かした。

デジタル病理画像を作製する装置のバーチャルスライドスキャナーに言及しては「薬事承認されているバーチャルスライドスキャナーは2種類あるが、実際に病理診断に使える装置はクラスⅡに区分されているもので、病理スライド標本全体の高倍率画像(病理ホールスライド画像)の取り込み、保存・表示などを通して、病理診断の補助や治療計画の策定を支援する病理画像を処理することができる装置となる。しかし、価格が非常に高額で、システムで導入すると4,000万円~9,000万円かかる。これが普及しない最大の要因である」と現状を説明した。

また、医師の働き方改革の推進により、ICTを活用した自宅などでの病理診断が可能になったことについては「従来、病理診断は医療機関で行うことが決められていたが、自宅などで病理診断が可能になった。これはコロナ禍など感染症が拡大した状況下で非常に有効になる。大半の医療機関には病理医が1人しかおらず、その病理医が感染症に感染して自宅待機になった場合、1週間、病理診断ができなくなるのでその影響は大きい。自宅などで病理診断ができる仕組みを活用することで感染拡大の状況下でも対応できるようになった」とデジタル化の有用性を説いた。

セミナー終了後は同社の病理標本作製のウェットラボ「さくらぼ」の見学会が行われ、医療機関の病理検査室を再現したラボで実際の機器を用いて、標本を作製する過程を体感した。