年頭所感

年頭所感 ー 厚生労働省医政局長・吉田学

吉田学局長

謹んで新年の御挨拶を申し上げます。年頭に当たり、日頃より医療行政に対して御理解、御協力をいただいていることに対しまして、深く御礼を申し上げますとともに、所信を申しあげます。

今後、医療・介護のニーズが増加する中で、質が高く効率的な医療提供体制の構築に向け、地域医療構想の実現に向けた取組を一層進めます。

この二年間の地域での精力的な議論の積み重ねにより、医療機関ごとの対応方針の具体化が進められております。今年は、その議論の成果を検証し、2025年に向けたPDCAサイクルを着実に実施していくことが重要です。構想区域間の好事例の共有により地域の議論を促進するとともに、具体的な対応方針を踏まえた施設整備等に対し、地域医療介護総合確保基金により重点的に支援をするなど、実効的な支援を実施してまいります。

医師の偏在解消に向け、昨年成立した「医療法及び医師法の一部を改正する法律」を着実に施行します。国が、医師の多寡を客観的に示した「医師偏在指標」を定め、都道府県がこれを踏まえて「医師確保計画」を策定することで、主体的・実効的に医師偏在対策を講じることができる体制の整備を図ってまいります。

また、昨年は新専門医制度による研修が開始されるとともに、医道審議会医師分科会の下に医師専門研修部会が立ち上げられ、日本専門医機構や関係学会に対して、地域医療への配慮や医師の研修機会の確保など、同部会の審議を踏まえた改善要望を求める意見を提示したところです。

今年も、この制度が医師の専門性の確立に資するとともに、地域医療や医師のキャリアプランに配慮されたものとなるよう、日本専門医機構や関係学会と連携しつつ丁寧に制度の運営を進めてまいります。

医師の働き方については、一人ひとりの医師が健康に、かつ、高い水準の技術の習得や家庭との両立などの希望を実現しながら働き続けることができるよう、改革を進めていく必要があります。地域の医療提供体制に与える影響等を丁寧に分析・整理しながら検討を進め、時間外労働規制の具体的な在り方や労働時間の短縮策等について、本年三月を目途として結論をとりまとめます。四月以降、医療関係者全体の働き方改革を進めるとともに、その結論を踏まえ、医師が仕事と家庭を両立し、健康に働き続けることができるよう、関係団体とも協力しながら着実に働き方改革を進めていきます。

一連の災害では、多くの医療機関が長期の停電や断水により診療業務の継続に大きな影響を受けました。防災・減災、国土強靱化のための3カ年緊急対策に基づき、災害時に重要な役割を担う病院の自家発電設備や給水設備等の強化、人工呼吸器を使用する在宅患者への電源確保支援等の対策を推進します。また、病院の耐震化を一層促進するとともに、広域災害・救急医療情報システムを活用した情報収集体制の強化等も進めます。

医薬品産業については、日本発の革新的医薬品創出に向けた動きを加速していきます。ビッグデータ、AI、がんゲノム医療の進展やiPS細胞技術の活用などといった治療や創薬のアプローチの変化も捉えつつ、バイオ医薬品の研究開発支援や医療系ベンチャーを育てる好循環の確立といった創薬環境強化を進めることで、最終的には、海外市場にも展開する「創薬大国」の実現を目指します。また、「研究開発税制」の延長・拡充により、研究開発投資に積極的な企業を支援してまいります。さらに、昨年4月から進めている流通改善ガイドラインに則した取組を継続し、適切な仕切価等の設定、早期妥結と単品単価取引の推進等、更なる流通改善を進めてまいります。医療機器産業については、産官学連携によるオールジャパンでの医療機器開発等、革新的な医療機器等の開発環境の整備に集中的に取り組んでまいります。

また、医療の国際展開については、「未来投資戦略2018」等を踏まえ、我が国の経験や知見の共有、人材育成の支援等により、相手国の実情に応じた医療協力を進め、我が国の医薬品や医療機器等の利用につなげてまいります。そして、2020年開催の東京オリンピック・パラリンピック競技大会も見据え、訪日・在留外国人患者が安心・安全に日本の医療機関を受診できるよう、受入環境の更なる充実を目指してまいります。

臨床研究・治験については、臨床研究法の適切な運用を図るとともに、今後の臨床研究・治験活性化に係る方向性等について厚生科学審議会臨床研究部会において議論を深め、引き続き、臨床研究に対する国民の信頼の確保や質の高い臨床研究・治験の推進に取り組んでまいります。

昨年は閣僚級世界患者安全サミットを主催し、東京宣言が発表されました。東京宣言では、患者安全分野において医療従事者を教育及び訓練することや患者及び患者家族の参加を促す等の取組みを通じて有害事象を最小化することを宣言しています。厚生労働省は、このような取組を通じて、更なる医療安全の確保を図ってまいります。

今年一年は医療行政にとって、未来を見据えた様々な改革を実行に移していく重要な年になります。施策を進めるに当たり、医療に携わる様々な関係者の思いを汲み取り、医療を受ける皆様の立場に立ちながら、施策の展開に努力してまいります。本年も、医療行政に一層の御理解、御協力をいただきますようお願い申し上げるとともに、皆様にとって本年が実り多き一年となることを心から祈念して、新年の挨拶といたします。