年頭所感

新年御挨拶 ー 厚生労働省医薬・生活衛生局長・宮本真司

宮本真司局長

新年明けましておめでとうございます。

年頭に当たり、本年の医薬品、医療機器等行政を展望し、所感を申し述べます。

近年、少子高齢化の進行、再生医療・AI等の科学技術の進歩、国際化の進展など、行政を取り巻く環境が大きく変化しております。これらを踏まえ、本年も様々な施策を進めてまいります。

第一に、本年は医薬品医療機器等法の施行から五年を迎える年にあたります。昨年は、厚生科学審議会医薬品医療機器制度部会において、薬機法の施行状況に加え、人口構成の変化や技術革新の進展などの環境変化を踏まえ、医薬品・医療機器等を取り巻く現状や課題について御議論をいただきました。本年は議論の結果を踏まえ、薬機法改正を含めた具体的な措置について検討を進めてまいります。

第二に、有効かつ安全な医薬品、医療機器等をできる限り早く患者の皆様にお届けできる環境を整備するとともに、安全対策の高度化を図ってまいります。

昨年は、「先駆け審査指定制度」の四回目の募集を実施いたしました。既にこの制度に指定された医薬品、医療機器、再生医療等製品が承認されており、安全性を担保しつつも国民の皆様により良い製品をより早くお届けすることに貢献ができていると考えております。本年も、「先駆け審査指定制度」や「条件付き早期承認制度」を適切に運用することで、革新的な医薬品、医療機器等の早期実用化を推進します。

また、大規模な医療情報を活用した医薬品の安全対策の取組として、昨年四月に医療情報データベース(MID―NET)の本格運用が開始され、産業界やアカデミアの方にも活用いただけるようになりました。本年は、MID―NETの利活用の推進を図るとともに、リアルワールドデータを活用した医薬品の安全対策の高度化と効率化をさらに推進します。

第三に、地域で暮らす方々が、医薬品等を適切に使用することができる環境づくりに取り組んでまいります。

まず、患者の皆様が医薬分業のメリットを実感し、安全・安心な薬物療法を受けることのできる環境を整備します。今後、地域包括ケアシステムの構築が進む中で、在宅医療の需要が増大し、がんの薬物療法など専門性が高い薬学的管理が継続的に必要となる機会も増大していくことが想定されます。この様な状況に適切に対応するため、薬剤師・薬局が、
服薬情報の一元的・継続的な把握とそれに基づく薬学的管理・指導を行うことのできる環境を整備することにより、かかりつけ薬剤師・薬局を推進してまいります。

さらに、違法薬物対策にも力を入れていく必要があります。昨年八月、薬物乱用対策推進会議において、「第五次薬物乱用防止五か年戦略」が策定されました。同戦略に基づき、薬物に対する強力な取締りや広報啓発をはじめとする、総合的かつ積極的な施策を引き続き推進してまいります。

第四に、国際的な取組を推進してまいります。近年の国際化の進展に対処するために「国際薬事規制調和戦略」の着実な実施を進めるとともに、これまで日本が主体的に参加してきた医薬品規制調和国際会議(ICH)や国際医療機器規制当局フォーラム(IMDRF)における規制調和の成果を、アジア諸国が積極的に取り入れていくよう支援してまいります。また本年は、医薬品査察協定・医薬品査察共同スキーム(PIC/S)の総会及びセミナーを日本で開催することとしており、医薬品査察における外国当局との協力を推進するとともに、引き続き国際規制調和における主導的役割を担ってまいります。

第五に、血液事業の推進に取り組んでまいります。少子化によって献血可能な人口が減少する中、将来にわたり血液製剤の安定供給を確保すべく、特に若年層への普及啓発活動の強化をはじめとする献血の推進に引き続き取り組みます。加えて、科学技術の発展や血液事業を巡る情勢の変化を踏まえ、血液法の改正に向けた検討を進めてまいります。

国民の生命と健康を守ることこそが厚生労働省の使命であり、日々高まる医薬品、医療機器等行政に対するご期待に応えるよう、本年も全力で取り組んでまいります。皆様の一層の御支援、御協力をお願いしますとともに、皆様方のますますの御発展と御多幸をお祈りいたしまして、新年の御挨拶とさせていただきます。