年頭所感

「混迷」の時代だからこそ ―「フテホド」から「テキモット」まで考えよう!―【一般社団法人 日本医療機器工業会 理事長・松本謙一】

松本理事長

新年明けましておめでとうございます。

〈年末年始に思うこと〉

毎年のことですが、年の暮を迎えると、何時・何処からともなく「喪中はがき」が送られてきます。今は亡きあの人、この方の「姿・所作」が目に浮かんでは消えます。そして又、年が明けると多勢の方々から「賀状」を頂き、一々お返しの出来ない失礼を恥じ入ります。日本ならではの仕来たりにせよ、これもまた「情報の共有化」の一環と思えば大切なこととも思います。

〈「フ・テ・ホ・ド・」〉

例年のことながら、メディアで「今年の流行語大賞は何?」と報じられると、当該年の時勢を映すものだけに「何だろう?」と自ら興味が湧きます。折から十二月三日のNHKTVで、今年のそれは「フテホド」、換言すれば「不適切な事は、ほどほどに!」の意である―と解説されれば、時節柄「成程!」と納得がいくと同時に、確かに昨今の「政治、経済」等から「芸能」の世界に至る迄、「不適切なこと」が満ち溢れている気がします。そうとなれば、勿論それらは「ほどほど」にしてもらわなければならないし、そうあるべきでしょう。逆に「適切な事は、もっと早く、もっと力強く進められるべきでしょう。(テキモット=松本造語)」。

医療のための「生成AI」の 勉強には必須の一冊

〈あらためて「ソサエティ5・0」〉

そうした意味では―「狩猟社会=ソサエティ1.0」「農耕社会=ソサエティ2.0」「工業社会=ソサエティ3.0」「情報社会=ソサエティ4.0」を早く脱して、8年前に取りまとめられた政府の新たな成長戦略「未来投資戦略2017」を、もっと強力に推し進め、中長期的な成長の実現のカギとして「第四次産業革命」とされる「IoT、ビッグデータ、人工知能(AI)、ロボット、シェアリングエコノミー」等のイノベーションを、あらゆる産業や社会生活に取り入れる「ソサエティ5.0」を柱に、経済発展と社会課題の解決を目指そうではありませんか。

〈備えあれば憂いなし〉

一方で、こうしてAI等の技術が進めば、それらを悪用して己の利を得ようという輩が出てくるのも世の常です。
(例1)政府は電力、医療などの重要インフラ事業者が使用するIT(情報技術)機器やソフトウェアの情報を、国に登録するよう義務付ける―「能動的サイバー防禦を可能にする法整備と合わせて自衛策の構築を急ぐ(日経新聞11月22日)
(例2)各国でSNS対策を急ぐ―「豪州では十六歳未満にSNS禁止法案」等。
(例3)口コミやインフルエンサーらの感想に見せかけて、商品やサービスを宣伝するステルスマーケティング(ステマ)について、国は昨秋、法律で規制したが、その後もはびこり続けている。(朝日新聞12月8日)など。

医療の「進歩と安全」には欠か せない「トレーサビリティ」は 常に勉強しましょう

〈医療機器・三つのキーワード〉

①安定供給―マイコプラズマなど感染症の不安が高まる中、医薬品不足が深刻になっていますが、医療機器とて、人材不足・原材料価格の高騰、諸外国の国産化(地産地消を含む)政策など、不安材料は常にある中で如何に「安定供給」を保っていくか等、課題は山積みしてきます。
②医療DX―医師の編在対策の一つとしても「遠隔医療」の普及、物流・介護業界でのロボットの更なる利活用など多々ありますが、これ又、前述の如く「サイバーセキュリティ対策」なども並行して考えていかないといけないでしょう。日本でも早速AT社の如きベンチャー企業も取り組んでいますが、こうした企業の後押しも不可欠でしょう。
③国際展開―米国でのトランプ政権の「国税」対策一つをとっても大きな懸念材料ですし、これに対する中国の出方。一方で中東での「きな臭さ」、「ロシア・ウクライナ戦争」など心配の種は尽きません。
しかし、先行きを嘆いてばかりいても仕方ありません。力を合わせて敢然と立ち向かおうではありませんか。

〈「R―SUD」の推進〉

「単回使用医療機器の再製造(R―SUD)」の歩みが日本ではまだまだ遅いです。昨今、世界中で強調される事の一つが「脱炭素(カーボンニュートラル)」。「医療費の適正利用・地球温暖化防止・サーキュラー・エコノミー(循環型経済)」推進の為にも、国民の一人としても協力しようではありませんか。

大変、勉強になった書物の一冊

〈頼りがいのある人〉

激動の世の中で、安全だけを考え「何もしない事のリスク」を考えなくても良いのでしょうか。97年から07年までの十年間、英国の首相を務めた「トニー・ブレア回顧録(上・下巻、各約五百頁・日経出版)」を読みました。こういう人こそ「頼りになる人間」と思いました。

初夢に 大いなる願い 実現す(松本航太)

―以上―