年頭所感

『新年の挨拶』【一般社団法人 日本医療機器販売業協会 会長・山下尚登】

山下会長

日頃から当協会の活動にご支援、ご協力を賜り厚く御礼申し上げます。

はじめに、年が明けて間もなく石川県能登地方を震源とする大きな地震が発生しました。被災された皆様に心よりお見舞い申し上げるとともに、亡くなられた皆様のご冥福をお祈りいたします。医器販協は会員一丸となって被災地域の支援並びに医療機器安定供給に尽力してまいる所存です。

さて、昨年6月に第6代医器販協会長に就任し、最初の新年を迎えました。あらためて協会設立以来ご協力いただきました協会員の皆様に感謝申し上げますとともに、協会の発展にご尽力なされた歴代会長の皆様、また多くのご支援をいただきました関係の皆様に感謝いたします。

現在、当協会は全国で会員数960社程となっておりますが、今後も協会員とともに、医療機器の安定供給により我が国の医療に寄与していかなければならないと決意を新たにしたところです。

ここ数年社会を席捲した新型コロナウイルス感染症の影響は未だ完全に払拭されたわけではありませんが、アフターコロナ、ウィズコロナの取り組みという段階に入り、以前の生活を取り戻しつつあるように思われます。しかしインフルエンザをはじめ感染症との共存は、今後も避けて通れない課題であることは周知の事実であり、業界全体で常にパンデミックを意識しながら、医療現場への医療機器・医療材料の供給を停止させない努力を継続していくことが重要と考えます。

ところで、当協会は、安定供給と質の高いサービスの提供を目指し活動を続けてまいりましたが、1998年に発足以来25年が経ったものの、目指す方向やビジョンといったものが明確に示されておりませんでした。企業倫理上の行動指針はありましたが、協会全体としてどのような価値判断で何を目指すのかというアピールがなく、同じ方向に向かおうというモチベーションが働きにくいのではないかと感じていたところです。

そこでミッションステートメントの検討に着手し、就任にあたり策定を致しました。ミッションステートメントでは医療機器等の安定供給を軸足に据え、適正使用支援により医療を支える一員として医療に貢献していくことを明示し、そのために取るべき施策として、⑴安定供給、⑵会員企業のレベル向上、⑶行政機関・業界団体等への協力、⑷コンプライアンスとガバナンス強化、⑸サステナビリティの5項目を行動基準として掲げております。

このミッションステートメントの策定により適正使用支援業務を通じてどのような活動により何を達成するのかを明確にしました。漠然とした将来の在り方ではなく、協会の進むべき方向と必要な施策をリンクさせたことにより、当協会が業界全体と同じ流れに沿って進んでいることを示すことにより、鮮明でなかった部分がクリアになり、このステートメントが今後の協会施策検討にあたり「羅針盤」となると考えております。

さて、ミッションステートメントでも記述した「適正使用支援業務」は皆様もご存じのとおり、2013年の厚生労働省産業ビジョンにおいて提示されたように、業界特有の医療サービスに寄与する業務ですが、今年大きな節目を迎えました。

2016年9月の第8回のあと暫く開催されていなかった「医療機器の流通改善に関する懇談会(流改懇)」が昨年開催されましたが、行政の皆様から第8回流改懇の座長整理に対する業界の取り組みとしてご理解いただいた「適正使用支援ガイドライン」について、流改懇で報告してはどうかとのご提案をいただきました。そこで、流改懇を構成する関係団体の委員の皆様にガイドラインの策定を報告し、今後業界はこのガイドラインに沿って安定供給を担っていくことを発信したところです。

これによって、協会の重要施策である適正使用支援ガイドラインの策定とその浸透は、業界の地位向上と持続可能性を図りつつ、医療現場への安定供給を目指す取り組みとして、実現に向けて大きく一歩を踏み出しました。行政の皆様には、医療機器流通の課題を議論する場で取り上げていただき感謝いたします。

適正使用支援ガイドラインは業界の自主基準ではありますが、適正使用支援業務を行ううえで拠り所となる基本スタンスを示しております。会員の皆様には、これまで協会に対し要望されてきた「医療機器販売業の役割」を適正に果たしていくためには、必要な取り組みであることを認識していただき、御協力いただくことが何よりもその効果を高めるものと信じております。

ところで、流改懇は医療機器の流通にかかる諸課題を議論する場でありますが、7年ぶりに開催された今回の議論のテーマに物流の2024年問題が取り上げられました。

我が国では働き方改革を推進するため労働基準法を改正し、時間外労働の上限が法律に規定されました。このうち自動車運転業務については、時間外労働の上限適用が5年間猶予されていましたが、この猶予期間は今年度いっぱいで終わりとなります。令和6年(2024年)4月から自動車運転業務の時間外労働が見直されることにより生じるのが「物流2024年問題」です。

流改懇ではこの物流の2024年問題により、医療機器業界もその影響を受けるのではないか。影響を受けるとしたらどの部分なのか、そして影響を克服するにはどのような対応が有効なのか、このようなテーマを構成する参加団体の委員で議論がありました。

議論では「輸送力の低下」、「物流コストの上昇」、「社会情勢等」の観点から課題を抽出し、物流2024年問題等により医療機器の物流が停滞し医療サービスの提供に影響が出ないよう、製造販売業者、販売業者及び医療機関等の各関係者が対応を検討することが必要だとされました。そして、先月14日厚生労働省医政局医薬産業振興・医療情報企画課より、先ほど述べた適正使用支援ガイドラインを含めた形で、「医療機器に係る物流2024年問題等により生じうる問題と対応策について」と題する通知が出されました。

ここで重要なことは、課題克服の負担を一つの業界が負うのではなく、すべての関係者に対し対応を求めている点です。例えば我々販売業の業界には、リードタイム延長、在庫確保、物流コスト、物流の効率化などによる課題対応の検討が求められていますが、同様の課題対応の検討は関係する医療機関の団体や医療機器製造団体にも求められているのです。

急速な少子高齢化、働き方改革、温暖化による気候変動、国際紛争といった環境の変化の中で、我が国の医療提供に影響を与えないために、全ての関係者間の協力と行動変容を強く求めているものと解せます。

医器販協としての努力を惜しむことはありませんが、行動変容にはお互いの話し合いによる理解の促進が必要になると考えますので、物流の2024年問題の対応にあたりましても、是非適正使用支援ガイドラインの趣旨を考慮いただき、しっかり取り決めをしていただくよう関係の皆様にお願いする次第であります。

会員の皆様がさらに質を高め、医療の提供になくてはならない業界として、これからも医療現場に医療機器等を安定的に供給し続けるための取り組みがより一層必要になると考えます。このため当協会としても、魅力と活力のある業界であることをアピールし、積極的に人材の確保にも努めていきたいと考えております。

結びに先述した諸々の施策を実現していくため、協会員をはじめ関係の皆様方には、今後一層のご支援並びにご指導・ご鞭撻をお願いし、私の年頭の挨拶とさせていただきます。