年頭に寄せて【一般社団法人 日本医療機器販売業協会 会長・浅若 博敬】
新年おめでとうございます。
日頃から我が業界の事業活動等へご支援、ご協力を賜り厚く御礼申し上げます。
お蔭様で会長に就任して四年目の新春を迎えることができました。これもひとえに皆様方のお力添えの賜物と存じます。ここに改めて感謝申し上げる次第です。
さて、ここ何年かコロナ禍により年度計画の変更や縮小を余儀なくされた方々も多いと思います。当協会の恒例の新春行事もここ2年ほど中断がございましたが今年は開催を予定しております。リスタートの意味も込めまして本日は少しこれまでをふり返りながら2023年に向けた所感など述べさせていただきたいと思います。
【質の向上への取り組み】
患者の皆様にとって医療機器等が安定的に医療の現場に提供されることが何よりも重要なことは言うまでもありませんが、同時に医療機器等の提供は安全に行われなくては意味がありません。我々業界はお届けした製品が適正に使用され、患者の皆様の治療が安全に行われることを強く望んでおります。そして、患者の皆様が安心して医療の提供が受けられるよう医療サービスをしっかり支えていくという信念を持ち、日頃より質の高い安定供給を目指し日本の医療制度に沿うよう我が国唯一の全国組織として発足したことはご存じの通りです。
このため、発足後医療機器等を販売する事業者としてその在り方を整理・確立するため公正競争規約の遵守、推進に取り組んでまいりました。
また、我が国の医療制度の特徴である国民皆保険、フリーアクセスに支えられた全国津々浦々の医療機関に対して日々多種多様な製品を供給して参りましたが、一時期業界のこのようなきめ細かい対応が非効率ではないかという指摘もありました。このような理解不足の認識に対しては、公的な検討会をはじめ様々な機会を通して業界が非効率なのではなく、医療制度の多種多様な要請に応えてきた結果であることを発信し理解を頂けるよう努めてまいりました。
こうした取り組みは徐々に浸透し今日では行政側から医療サービスの提供にあたりその業務を止めると大きな支障が生じるエッセンシャルワークとして位置づけられるまでに至っております。
しかし、ここにきてこれまでの地道な努力が一夜にして水泡に帰すようなゆゆしき事例が発生しております。業界の活動は医療サービスを止めることなく国民の健康・福祉の増進に寄与するものですが、その活動領域は公的医療保険制度の枠組みに密接に関連していることは明らかであり、社会からは透明性が強く求められる分野であることにも十分留意しなければなりません。ガバナンスの効かない活動は早急に改善されなければなりませんし協会として今一度原点に立ち返り信頼に裏打ちされた業界全体の発展に努めていかなければならないと感じています。コロナ禍が一段落しても、今後円安等による原材料価格の高騰、原油・燃料価格の高騰、半導体不足による製品供給の停滞、人手不足による人件費高騰など足元の環境は決して明るいものではありません。こうした状況にある今だからこそコンプライアンス遵守の姿勢を崩さず活動を続けることの重要性や必要性を周知し、企業倫理指針に根差した行動を推進していく必要があると感じます。
発足から20年以上経ちどこかに油断や隙が生じる可能性もあります。質の向上の取り組みは手を緩めることなく常に新たな気持ちで辛抱強く周知と実行を求めていく所存ですので、皆様におかれてもご理解ご協力いただきますよう重ねてお願いいたします。
【業界からの発信】
就任以来協会発の政策提言あるいは要望とそれを実現できる取り組みの推進を掲げてまいりました。サプライチェーンの可視化機能を持たせた国立大学病院長会議様との「PPE製品データベース構築」に関する共同事業など着実に成果が上がってきている取り組みについては引き続き推進してまいります。更に足下の少子高齢化に加えパンデミック対応、グローバル化、気候変動などの環境問題、資源枯渇と争奪戦等次々と登場する課題をみるとこれまで我が国で当たり前となっていた価値観を見直す必要に迫られる大きな変革期に差し掛かっていると思います。医療機器はその種類も形状も様々であり、それぞれに適したサプライチェーンの強靭化が必要であります。国としてのサポートもいただきながら、サプライチェーンの見える化を図り、国産化・分散化・備蓄対応といった強靭化を医療機関・メーカーそして販売業が協力して確立していかなければなりません。
これまで業界はより効率的に医療ニーズを吸い上げ医療現場がその機能を十分発揮できるよう業務を進化させ、医療機関へのサポート体制を構築してきました。今後医療機器販売業が安定的に適正使用支援業務を維持・継続していくためには、医療機関との間でなんらかの取り決めが必要であると考えます。同様の指摘は平成28年に開催された厚生労働省検討会の「第8回医療機器の流通の改善に関する懇談会」の中で座長からも発せられております。業界の活動は医療現場に近いので現場からの要望が多いというのも事実です。時代の転換期で医療現場そのものが働き方改革やタスクシフトによりあり方を変えようとしており、業界もこれまでの習慣を見直して新たに適正な関係を形成していく転換期ととらえ行動する時期だと強く意識します。
そこで安定供給の確保を担う役割に相応しい価値が見出せる根拠となるスタンダード作りが必要と考え取り組んでいるところです。2023年は是非とも適正使用支援ガイドラインの作成に向けた取り組みを一段と加速させたいと考えます。また、このガイドラインの運用は業界が一丸となって積極的に取り組むことができるかどうかということも重要なポイントであります。是非とも会員の皆様にはガイドランの策定、運用にあたりご協力を賜りますようお願い申し上げます。
就任以来、将来を見据えた業界の在り方の検討とそれにふさわしい政策提言の発信というテーマを掲げて取り組んでまいりましたが、勿論同時に業界の質の向上にも引き続き強力に取り組んでまいりたいと考えます。質の向上により得た信頼を盾として適正使用支援ガイドラインを掲げ業界がわが国の医療サービスの提供に欠かせない安定供給のパイオニアとしてゆるぎない地位を確立していきたいと思いますので、引き続き関係の皆様にはご指導・ご鞭撻の程宜しくお願い申し上げて私の新年に寄せた所感とさせていただきます。