年頭所感

初春にあらためて想うことごと ―賢者は歴史から学び愚者は経験から学ぶ そして凡者は双方から未来をも学ぶ―【一般社団法人日本医療機器工業会 理事長・松本謙一】

明けましておめでとうございます。

〈はじめに〉

ロボデックス展の賑わいを背にして―幕張メッセ会場・2022年9月2日―

本稿を記している休日の午前中、私は5回目のワクチン接種を済ませてきました。メディアの新年号記事を記そうという時に、このような事は決して短いとはいえない私の人生でも初めてのことで、「Covid19」の前には考えられないことでした。新年早々いきなり此のようなことから書き出しましたのも、今や「歴史と経験」の違いを概念的に定義づけることすら難しくなってきたのではないかと思われる昨今だからです。

従って、本稿見出しに記した如き「賢者は歴史から学び愚者は経験から学ぶ(オットー・フォン・ビスマルク)」なる名言も、激動の現代では、その双方から学ぶことによって「未来」までもが、視野・思考のうちに入ってくるのだと思われます。

〈「歴史」の難しさ〉

Ⓐ「人類の始まり」「地球の始まり」等を尤もらしい数値で示されていることには昔から慣れてきました。しかし、その証拠の確率には些(いささ)か首を傾(かし)げたくなる時もありました。こと程さように、一口に「歴史」と言っても、夫々の分類・範疇(はんちゅう)に分けて「歴史」を辿っていくと、これはもう至難の業です。

Ⓑいわんや、昨今は二言目には「DX」と言われますが如何でしょう。「DX」にかけては第一人者の一人と言われる森田朗氏(次世代基盤政策研究所・代表理事)も「将来、DXの歴史は?」と問われても、ニュアンスある答えはなかなか難しいのではないかとも指摘されます。

「医療4.0(実践編)」の著者・加藤浩晃氏は文中、次の如く記されています。「大昔、狩猟社会(Society1.0)が、農耕社会(Society2.0)に変化し、やがて欧米で第一次産業革命が起こったことで工業社会(Society3.0)が形成されました。重工業を始めとする新たな工業分野が発展した第2次産業革命、コンピューターやインターネットの登場による第3次産業革命を経て、情報社会(Society4.0)が構築されました。そこにデジタル化と更なる情報化が進むことで、現代社会には第4次産業革命の波が起こっています。こうしたテクノロジーによって形成され、サイバー空間(仮想空間=クラウドなど)とフィジカル空間(現実空間)が融合する新たな社会を、政府は『Society5.0=超スマート社会』と呼んでいます。」と、記されています。以上、DXの大筋を辿ってみましたが、政府は首相を本部長に医療DX推進本部を設置し「医療DX化」に取り組む本気度を示そうとし、その基盤に「マイナ保険証を24年秋には移行」としています。

〈悪(あ)しき経験〉

世の中、何事も進めば進むほどに悪い面も出てきます。「サイバー・セキュリティ」なる単語が飛び交うようになったのもその一例で、将来、堂々と歴史にも経験にも入ってくることでしょう。

次元の低い悪しき事例としては①国立がん研究センター中央病院での医療機器保守管理システムをめぐる贈収賄②独立行政法人「地域医療機能推進機構」発注の医薬品入札をめぐる医薬品大手4社による6年前からの談合―等々、マスコミにも報じられています。こうした「コンプライアンス」云々以前の悪しき事例は、逆に「悪い経験例」として学ぶことにしましょう。

〈現実から未来へ〉

さて、ここ迄は浅学おのれ菲才の己が学ばなければいけない「歴史と経験」について記してきましたが、翻(ひるがえ)って、ますます厳しさを増す現実に目を向けると、対応すべきことは沢山あります。

①半導体などの部材不足です。国内外から折角の受注があっても、部材不足の為に納期が大幅に遅れて、終(しま)いには失注してしまうという事例も出てきますし、失注しない迄も一部パーツ入手困難の為に仕掛(しかかり)品が増えてしまうなどという事例も出てきます。こういう時こそ「医療機器の安定供給」の為に「経済安全保障推進法」を発動すべきではないでしょうか。ちなみに、経済安保推進法の四本柱はⒶ重要物資の安定的な供給Ⓑ基幹インフラの安定的な供給Ⓒ先端的な重要技術の開発支援Ⓓ特許出願の非公開―であります。

②急激な為替レートの変動による影響もあります。外国為替市場では、昨年10月下旬の151円台後半の安値から、12月4日には134円台前半と18円近い円高となりました。輸出入該当の完成品、部材の損益に重大な損益面での影響を与えています。③人材不足からくる「人材育成」④その他、課題は諸々とあります。

「日本は
10
年後にこう変わる
大変化2001年の姿」飛岡健著

〈未来への展望〉

こうした昨今の激動の世界から「明るい未来展望」を見出したいものですが、ただ「言やすうは易くても、行うはかた難し」です。ちなみに、今から30年前に発行された「日本は10年後にこう変わる(大変化2001年の姿)飛岡健著」には「デジタル」の「デ」の字もありません。一方で「ファイザーCEOが語る『未来との約束』ハンク・マッキンネル著」も26年前に発行された著書にしても、そうした新しい表現はなくても、「未来」を語った書を読むと「ときめき」を感じることも事実です。

〈結びに「心の持ちかた」=松本謙一の生きかた〉

①「世のため人のため(利他の精神)」
②「頭はクールに心は温かく」
③「ユーモアの精神をいつも」

―以上―

「ファイザーCEOが語る
未来と
の約束」ハンク・マッキンネル著