〈激動の時代に求められる「3K」と「1J」〉 ―K(行動力=R・O)、K(感性)、K(考える力)、J(情報発信力)―【一般社団法人 日本医療機器工業会 理事長 松本謙一】
明けましておめでとうございます。
〈年賀状と喪中はがき〉
年の暮を迎えると、何時からともなく「喪中はがき」が送られてきます。今は亡きあの人、この方の「姿・所作」が目に浮かんでは消えます。そして年が明けると多勢の方々から「賀状」を頂き、一々お返し出来ぬ此の身を恥いります。日本ならではの「対極」の構図で今年も始まりますが、「米中対極」の如き構図はこれ以上、激化せぬよう念じます。
〈一陽来復〉
これは二十四節気の一つである「冬至」を意味する言葉とされていますが、もとは古代中国の占いの書「易経」に記された言葉で「陰が極まって再び陽が生ずること」。即ち太陽の力が戻ってくることを表している由です。「厳しい冬の寒さに耐え、新しい春を迎えることで、人生が一度リセットされて喜ばしいことが訪れる」。そうした想いを、いにしえの人は「一陽来復」に込めたそうです。
正月は「一陽来復」という言葉を通して、人生の再生を迎える節目。一年の始まりを、一日一日を清新な心で生きるチャンスとしましょう。それには「コロナ禍を嘆き、その収束を希う」だけではなく、「行動」を起しましょう。
〈行動力=R・O〉
ひと昔前までは「求めよ、さらば与えられん」にかこつけて「動けよ、さらば与えられん」とは、月に平均二回は内外に出掛けていた私の好きなフレーズでした。しかしコロナ禍後は、海外はおろか、国内とて行動の自由が縛られる日々が続いています。けれど今日でいう「行動」には「Real」と「Online」の二つがあります。情報収集には出来れば「リアル」が良いですが「オンライン」でも会議から機器の据え付け等に至る迄、実行動とほぼ同じ効果が得られることは少なくありません(お金と時間も節約できます)。一方で多くの企業で、売り上げの割に利益が出ている場合は、平時より一般販管費の中の出張旅費の減少が影響している事例も少なくありません。
〈森を見て樹を見る力〉
この二年の間に「バーチャル」展示と称するものにも随分お目に掛かりました。しかしこのところ、ぼつぼつ「リアル」展示会も復活してきました。しかし何といっても圧巻は、11月末に恒例のビッグサイトで行われた(一社)日本医療福祉設備協会主催によるセミナーと「HOSPEX JAPAN」展でした。そこには昨今の「感染対策・災害対策・介護福祉・メディカル建築」などのゾーンから、本来の病院設備機器ゾーンでの「スマート・ホスピタル」に至る迄、数多の展示企業の中に「China Corner」があり、その中に数十社の中国企業が参加出展されていたこともサプライズの一つであり、咄嗟に昨今話題の中国の国家政策たる「『中国製造2025』=中国市場で販売する医療機器など主要分野製品は30%以上が中国製であること」を思い出したのは私だけでしょうか。
何れにせよ、この展示会をかいま垣間見ただけで、今どきのキーワードは「行動力=先ず此の会場に足を運ぶこと」そこで、此の広い会場に吹く風から何かを感じる「感性」と「考える力」そして又、それらを必要な所に発する「情報発信力」―これらを一言で申せば「森を見てから、木を見る力」であると言えるのではないでしょうか。これぞ本文のタイトルでもあります。
〈考える力、そして「人材」とは〉
以前は「ドル高・円安」となれば輸出ビジネスにとっては、大いなる恩恵でありました。しかし昨今は内外を問わず「半導体など電子部品」不足から輸入部材の値上がりを招く製品高、更には気候変動防止から脱炭素を急ぐ余り、石油・ガソリン等の値上がりを招きます。一時の現象からで喜怒哀楽を表わすようでは、これからの経営戦略は立ちません。DXも何も深く迄は分からずとも頭には入っている「人材」を育成しようではありませんか。
〈澁澤栄一をめぐって〉
昨年のNHK大河ドラマの主人公は、2024年から「新一万円札」の顔として登場する澁澤栄一でした。その澁澤とは切っても切れない名著「論語と算盤」。その「論語」の中に「行くに径(こみち)に由(よ)らず」という言葉があります。「近道だからといって裏道や小さな道を通らずに、行くと決めたら時間がかかってもいいから、堂々と大道を歩んでいきなさい」という教えです。まさに「徳のある/なし」が企業成長のカギにもなり、経営リスクにもなり得ると説いているのであります。
〈結びに〉
さて正月早々、堅い話ばかり続けてしまいましたが、今年こそ明るい未来に包まれた一年になることを心から祈念して筆を置きます。
―以上―