年頭所感【厚生労働省医政局長・迫井 正深】
○ 謹んで新年の御挨拶を申し上げます。年頭に当たり、医療行政に対する日頃からの御理解と御協力に対しまして、改めての御礼とともに所信を申し上げたいと思います。
○ 昨年は新型コロナウイルス感染症という、過去に例のない事態に直面し、医療が揺さぶられた、厳しい試練の年でもありました。いまこの瞬間も、最前線である医療現場において、医師や看護師を始めとした医療従事者の皆様が、緊張状態の中で対応されていることに対し、改めて敬意を表します。
医政局といたしましても、コロナへの対処とともに、日常の医療も含めた医療提供体制の確保・維持に最大限の力を注いだ一年間でした。本年も、引き続きこれらの取組に全力を尽くしてまいります。
○ あわせて、団塊の世代全ての方が75歳以上となる2025年は、いよいよ目前です。その先の2040年を展望すれば、一層の少子高齢化が進展する我が国社会は、社会保障の構造的課題、すなわち中長期的なサービス需要増・生産年齢人口減という厳しい環境下で、持続可能な医療提供と健全な財政基盤の両立が求められることになります。新型コロナウイルス感染症パンデミックは、ウィズコロナ・アフターコロナを見据える、という視点も求めています。過酷な条件のもとではありますが、わが国の優れた医療制度を後世に引き継げるよう、新年もチャレンジを続けたいと思います。
○ 具体的な医療提供体制の将来を見据えた改革では、相互に連関する「地域医療構想」、「医師偏在対策」、「医療従事者の働き方改革」の一体的な推進を掲げて取り組んで参りました。今後の取り組みの推進においては、現場の新型コロナウイルス感染症への対応状況を十分に考慮するとともに、それらの対応で培われた知見も踏まえながら、感染症対策と中長期的な人口構成の変化の両面への対処を検討してまいります。
○ 加えて、今回の感染拡大を奇貨として、地域住民にとって身近な存在であるはずの「かかりつけ医」の意義・重要性が再認識され、その更なる普及とともに、他の医療専門職との連携も強化しながら、地域に根付いた「生活を支える医療」を実践する基盤、すなわち〝地域包括ケアシステム〟の構築を引き続き推進していかなければなりません。このような取り組みは自ずと、地域住民・患者の医療のかかり方、人生会議といった、人々にとっての医療の意味を社会に問いかけることにもつながるものと考えています。そのような中で、医療に携わる様々な関係者の思いを汲み取り、医療を受ける皆様の立場にも立ちながら、施策の展開に努力していく所存です。
○ 最先端の技術革新の恩恵を享受したい、と人々が最も期待する典型的な分野が医療です。目覚ましく進化するICT機器やAIといったテクノロジーを医療分野で積極的に活用し、質が高くより安全な医療を、より少ないマンパワーで効率的に提供できるような医療機器の開発等を実践してまいります。
また、ゲノム医療や再生医療の展開も、今後の医療の進化における「鍵」の一つであり、疾患の早期発見・早期治療の可能性の拡大は社会全体の活力向上にもつながります。さらに、レセプトや診療録、学会の症例登録などを情報化し利活用する〝データヘルス〟の取り組みも、医療分野のインフラとして実診療から研究開発に至るまで幅広く貢献が期待される分野であり、引き続き重点的に推進してまいります。
○ 新型コロナウイルス感染症の治療薬やワクチンの開発では、アカデミア・医療系ベンチャーの連携も含め、地道で継続した研究開発の推進と、その基盤や環境の整備の重要性が改めて認識されました。日本発の革新的新薬や医療機器の実現をより確かなものとするためにも、オープン・イノベーションを推進できるような産官学が連携するエコシステムの構築に、引き続き取り組んでまいります。
○ 2021年は東京オリンピック・パラリンピックの開催も含め、再び多くの外国人の来訪が見込まれます。在留者も含めた外国人患者がわが国で安心して医療を受診できるよう、医療機関における外国人患者の受け入れ体制の整備について、引き続き積極的に支援してまいります。
○ コロナにみまわれた一年間を経て、今年はコロナ対応とともに、継続する医療政策上の様々な課題に対して、未来を見据えた改革を実行に移していくことが求められる重要な年になります。本年も、わが国の医療行政に一層の御理解と御協力を賜りますようお願いいたしますとともに、皆様にとって本年が実り多き一年となることを心から祈念して、新年のご挨拶といたします。