2020年JIRA年頭所感【一般社団法人 日本画像医療システム工業会(JIRA)会長・新延晶雄】
2020年の年頭にあたり謹んで新年のご挨拶を申し上げます。
2019年は、新天皇の御即位、令和への改元、ラグビーワールドカップにおける日本チームの活躍など、新たな時代の幕開けと日本の躍進への期待が高まった年でした。一方で台風などの災害にも見舞われ、地球規模での環境問題、国連で合意されたSDGs(持続可能な開発目標)の実現への取り組みなどが急務との認識も深まりました。2020年はこれらも踏まえて、直近の社会課題解決と新たな令和の時代作りに、日本が世界の人々とともに取り組む年になるでしょう。
産業界としても、新たなルールや社会システム作りに貢献し、先端技術の社会実装を進め、課題解決に資する具体的で新たな価値の提供を、強力かつ速やかに実現しなければならない時と考えております。
2020年では、JIRAの活動に大きく関係する事項として以下が挙げられます。
第1に「医薬品医療機器等法(薬機法)の改正」です。
2019年11月に「薬機法の一部を改正する法律案」が国会で可決・成立し、12月に公布されました。今後具体的な運用が検討され、規則や通知等が定められることになります。薬機法改正の概要では、「継続的な改善・改良が行われる医療機器の特性やAI等による技術革新等に適切に対応する医療機器の承認制度の導入」という項目が有ります。以前から述べてきましたように、AIは画像診断支援を始め、ワークフローの改善や、装置の安全管理など、広く医療分野での適用が期待されています。昨年はAI診断支援元年と位置付けましたが、今年は実用化に向けて規制やルールに関する課題を一つ一つ丁寧に議論してクリアーし、医療の現場のニーズに合った製品やサービスを提供して、医療の質や効率の向上に貢献できるよう社会実装に向けた環境整備に注力していきたいと考えます。
第2に「医療法施行規則の改正による診療用放射線の適正管理」です。
2019年3月に公布された医療法施行規則の改正により、医療機関における診療用放射線に係る安全管理体制に関する規定が2020年4月1日に施行となり、全身用CTなどの管理・記録対象医療機器の線量を記録・管理することが義務化されます。JIRAは2020年4月に開催される2020国際医用画像総合展(ITEM2020)において、昨年に引き続き「診療用放射線の適正管理」を特定テーマとした技術・製品の展示およびプレゼンテーションを企画します。また漏洩X線線量測定士の認定講習会も開始いたしました。これらの活動を通じて、会員企業による患者の安全管理や医療現場の負担軽減に寄与するソリューションの提供が促進されるものと考えます。
第3に「2020年度の診療報酬改定」です。
医療費増大の抑制など多くの課題を抱える医療行政の中で、2020年度改定では「医療従事者の負担軽減、医師等の働き方改革の推進」などが重点課題として挙げられています。JIRAは製品が直接寄与する医療技術の改善改良を含むイノベーションの評価と併せて、患者の安全・安心、医療の質向上や効率化といった取り組みについても継続してその価値を主張し、評価に向けた提案をしてまいります。
第4に「医療機器規制の国際整合」です。
世界の医療機器市場の規模は継続的に伸長しています。日本の医療、医療システム、会員企業の国際展開推進には、効率的な医療機器規制対応が可能となるような各国の医療機器規制の整合化が非常に重要になります。国際画像診断治療機器業界会議(DITTA)創設メンバーであるJIRAは国際医療機器規制当局フォーラム(IMDRF)にステークホルダーとして参画し、医療機器規制の国際整合化に協力しています。2020年は、JIRAはアジア太平洋経済協力(APEC)あるいは日本との二国間交渉の枠組みの中で、IMDRFの成果を積極的に取り入れていく活動に注力してまいります。
その他、データ利活用、サイバーセキュリティ、標準化など、従来から取り組んできた重要テーマにも更に強化して取り組んで参ります。
画像医療システム産業はX線撮影による画像診断装置から始まり、画像のデジタル化を起点としてCT、MRI、核医学等の診断装置、放射線治療装置などのモダリティや、PACS等のシステムで成長し、関連する製品やサービスとともに発展してきました。ここ数年は、ICT、医療機器プログラム、AIといった技術の広がりに伴って毎年新たな企業に入会いただき、昨年11月末で203社の会員企業を擁する工業会に成長しています。
今後とも関係各位の更なるご理解・ご協力と、ご指導・ご鞭撻をお願い申し上げますとともに、皆様のご健勝とご多幸を祈念して、新年のご挨拶といたします。
(以上)