年頭所感

平成31年新年のご挨拶【公益財団法人医療機器センター理事長・一般財団法人ふくしま医療機器産業推進機構理事長・菊地眞】

菊地理事長

新年明けましておめでとうございます。

皆様方には幸多き新年を迎えられましたことを心よりお慶び申し上げますと伴に、本年のさらなるご発展を心よりご祈念申し上げます。また日頃より、公益財団法人医療機器センター、並びに一般財団法人ふくしま医療機器産業推進機構の各事業に多大なるご支援を賜りまして改めて御礼を申し上げます。

公益財団法人医療機器センターでは、

平成28年度から平成32年度までの5年間の中期経営計画を定め、①信頼される中立的機関であること、②事業化の支援を行うこと、③シンクタンク機能を強化すること、④教育・人材育成を行うこと、⑤情報提供・パブリシティ活動の推進、の5つを中核として事業運営を行ってきました。

折り返しの中間地点となった昨年は、産学官臨の協力のもと、医療機器センターが数年かけてとりまとめを行った「医療機器に係る安全管理のための体制確保に係る運用上の留意点について」(平成30年6月12日医政地発0612第1号、医政経発612第1号)及び「医療機器のサイバーセキュリティの確保に関するガイダンスについて」(平成30年7月24日薬生機審発0724第1号、薬生安発0724第1号)の2本の行政通知が発出されました。

これまでにも、医療ガス設備の安全管理(平成29年9月6日医政発0906第3号)、治験ガイダンス(平成29年11月17日薬生機審発1117第1号、薬生安発1117第1号)の作成に主体的に関わっており、信頼される中立的機関として一定の評価がなされる活動が徐々に出来てきているのではないかと考えています。

また、医療機器産業研究所において「産学官臨」の橋渡し役という中立的立場から積極的に行っている事業化支援の活動により、事業化・上市に成功した事例も徐々に増加しています。事業化支援の相談も年々増加傾向(平成29年度実績136件)にあることから、昨年はさらに臨床開発・薬事・保険償還等の経験・知見を有する特任研究員を1名、テクニカルアドバイザーを1名、客員研究員を1名加え、より一層の体制強化を図っています。

人材育成の観点からは、「より広い〝ひと〟の育成」を掲げ、企業の人材育成、社会科学研究者の育成、大学就活生向け情報提供等を行いました。

企業の人材育成を後押しするための〝JAAME Academy〟「医療機器の開発実務者育成セミナー」では、これまでの受講者から「開発の流れ、それぞれの段階での留意することが全体を通してわかりやすく説明され、薬機法上の流れだけでなく、特許について同時に聞けたこともよかった。」等と好評を得ており、産業界に必要不可欠な〝ひと〟の育成も、より一層強化していきたいと考えています。

さらに大学・研究機関からリサーチペーパーを一般公募する助成制度「公募型リサーチペーパー」も継続実施しており、昨年は、「医療機器審査・開発ガイドラインの体系的分析-テキストマイニング手法の導入を中心として-(東京大学大学院新領域創成科学研究科)」、「日本の医療機器企業のM&Aによる事業構造の変化と企業パフォーマンスへの影響(中央大学商学部)」、「医療機器の薬事・保険適用申請における国内オープンデータ活用に関する調査研究(東京慈恵会医科大学先端医療情報技術研究講座)」、「医看工芸連携による医療機器開発で生じる知的財産についての研究とその実践的ケーススタディ教材の開発(大阪大学知的基盤総合センター)」の4件のテーマを採択し、現在各研究者が精力的に研究を行っています。

過去に採択した研究テーマも徐々に成果が出始めており、昨年は「医療機器政策や外部性が医療機器産業の全要素生産性に与える影響についての分析(一橋大学大学院経済学研究科)」、「医療機器産業から見た治療方法の特許適格性と特許権の権利範囲(北海道大学大学院法学研究科)」の2件をリサーチペーパーとして公表するなど、多様性のあるリサーチペーパー作成や社会科学系研究者の育成、政策提言活動も充実化してきました。

さらに、就活生向け医療機器産業魅力発信ウェブサイト「医機なび」を昨年6月から開始しました(http : //www.iryokiki – navi. com/)。この取り組みは、これから社会に出ていく、進路・職業選択を控えている学生をターゲットとして、医療機器業界の魅力や情報を随時発信していくものです。コンテンツとしては、各企業の若手社員へのインタビューを行っている「教えて先輩!」や医療機器業界の職種・仕事、特徴などを紹介している「業界を知ろう!」、医療機器を簡単にイラストなどで紹介している「医療機器って何?」などがあります。関連して大学生と企業の若手社員のクロストークを行う座談会を企画するなど、医療機器〝業界〟における仕事のやりがいなどを伝えながら、医療機器産業の認知度向上に努めています。

他にも、昨年7月に、国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)が実施する平成30年度「未来医療を実現する医療機器・システム研究開発事業『革新的医療機器創出支援プロジェクト』」におけるサポート機関(研究開発課題名:若手研究者向け医療機器事業化サポートプログラムの開発)に採択され、優れたシーズを有し、将来の医療機器開発を担う次世代若手研究者の育成にも努めています。

最後に認証事業ですが、中期経営計画策定以後、「より丁寧な認証業務」を掲げ、信頼性が高くかつ分かり易い認証業務に努め、より身近な認証機関となることを目指してきました。そのため、昨年は、①指定高度管理医療機器等の認証に関する無料説明会の毎月開催、②認証業務に係るホームページの全面改修により内容の充実を図り、無料面談、説明会出席及び認証費用見積もりの画面上の申込み操作の簡便化を実現、③50件以上の無料面談の実施、④30社以上の医療機器企業訪問により認証業務に係る意見交換を行い業務に反映、⑤商工組合日本医療機器協会主催の講習会並びに広島県及び埼玉県の県単位の説明会への講師派遣等、様々な活動を行ってまいりました。

その結果、昨年実施した顧客アンケート調査によれば、医療機器センターの認証審査の信頼度は5点満点中4・56 (一昨年は4・22)、満足度は5点満点中4・33(一昨年は4・16)と、高い評価をいただくことができました。

さて、本年は中期経営計画の4年目となります。昨年7月には、お客様との相談・打ち合わせスペースを拡充することなどを目的とした事務所の移転も行い、前述のとおり活発な活動を実施してきました。

本年は、従来からのシンクタンク事業、情報サービス事業、国際交流事業、企業研修事業、医療研修事業、国家試験事業、認証事業の7つの事業を着実に実施しながら、これまで以上に力強く「より広い〝事業化支援〟」と「より広い〝ひと〟の育成」の二つの活動を前進させていきます。

一つ目の「より広い〝事業化支援〟」としては、①より丁寧な認証業務、②医療機器産業研究所の事業化支援のための広範な相談の積極展開などを行っていきます。特に①認証業務としては、認証対象のすべての医療機器・体外診断用医薬品を業務範囲とする数少ない認証機関として、今後も引き続き、企業の皆様のご要望をふまえながら、業界団体あるいは都道府県単位の説明会に対する講師派遣などの取組みも含めた広報啓発活動を進め、認証までの期間の更なる短縮等、一層のサービス向上を図り、新規参入企業や中小企業にも配慮した認証業務を行ってまいります。

二つ目の「より広い〝ひと〟の育成」としては、産業界向けのJAAME Academyを拡充し、就活生向け医療機器産業魅力発信ウェブサイト「医機なび」も積極展開していきます。

以上のとおり、医療機器センターではこれまでの3年間で実施してきたことを引き続き着実に実施することに軸足をおいた活動を行いながら、産官学臨のパイプ役となって〝明日の医療機器〟を総合的に支援していく活動を更に充実させていきます。

次に、ふくしま医療機器産業推進機構についてでございます。

機構では、福島県から平成28年11月に開所した「ふくしま医療機器開発支援センター」の管理運営を受託しておりますが、このセンターは医療機器の開発から事業化までを一体的に支援する国内初の施設として整備されたものであり、福島県が進めてきた「次世代医療関連産業集積プロジェクト」の拠点施設として、その役割や機能に大きな期待が寄せられております。その中で、昨年、機構では組織を再編し新たに「営業企画部」を設けたほか、大学や学会との連携強化を目的に「学学連携推進室」を新設し、営業活動の一層の強化を図っております。

さて、センターが行う「医療機器の安全性評価試験」の最大の特徴は、大型動物(実験用ブタ)に特化した生物学的な試験から電気・物性・化学的な試験をワンストップで実施できることにあります。開所以来、センターでは、在籍する獣医師や病理医、臨床検査技師等の専門的な管理の下、骨材料の長期埋植試験や血管カテーテルの性能評価等を実施してきたほか、病理検査(病理組織標本の作製、走査電子顕微鏡による評価等)や血液・尿検査等についても信頼性の高い試験データを提供しております。また、医療機器に関するEMC試験や電気的安全性試験を始め、防水試験や梱包輸送試験、インプラント用骨ねじの引抜試験、RoHS指令対象物質分析や残留ガス分析、溶出成分分析など、各種の電気・物性・分析試験についても多くのお客様からご愛顧いただいております。

さらに、国際的な各種認証については、ISO17025では昨年2月に電気試験、化学試験の分野で認証されたほか、医療機器GLPでは昨年10月に、また、AAALACでは11月にそれぞれ適合性に係る調査を実施いただき、今年度中の認証取得を目指しております。これらの第三者認証を「強み」として、センター業務の更なる信頼性の向上に努めるとともに、海外からの試験受託も視野に入れながら、より一層、お客様のニーズにお応えできるよう取り組んでまいります。

また、センターでは病院の臨床現場を再現した模擬手術室と模擬アンギオハイブリッド手術室を備え、内視鏡装置やCアーム、超音波診断装置等の画像診断装置に加えて、高周波手術装置や超音波凝固切開装置などの治療補助機器、鋼製小物についても充実し、様々な診療科に対応しております。さらに、最大300名が収容可能な研修室を備えており、模擬手術室エリアと双方向の映像・音声配信機能を活用した症例検討会やライブデモンストレーション、全国規模の学会の開催も可能でございます。昨年もブタを使用した補助人工心臓の埋込みを始め、肝移植や脊椎内視鏡手術など各種トレーニング等が開催され、企業や医師、看護師、臨床工学技士など関係する多くの医療従事者が参加されたほか、高機能患者モデル人形等の各種シミュレータを利用した医療処置・看護トレーニングでは、新人看護職員研修や潜在看護師の再就職支援研修として、或いは、薬局薬剤師の在宅患者訪問を想定したトレーニングとしてもご利用いただいており、参加された方々からはセンターの設備の使いやすさなど高い評価をいただいております。

センターの特徴の一つである「事業化までの一体的支援」については、「お客様は専門家による相談対応や製品評価に加え、販売までのきめ細かで継続的な支援を求めておられる」という考えを踏まえながら、福島県と連携し、開発やマッチング、販路開拓、海外展開など、販売に至るまでの各事業を進め、お客様のニーズや課題に合致した総合的な支援に取り組んでおります。特に、コンサルティング事業では、開発から事業化の各段階に合わせた個別実務サポート「Step by Step SUPPORT事業」の提供や開発初期の段階から薬事専門家による相談助言等を通じて、機器開発の着実な進展のサポートに努めております。加えて、マッチング事業では、昨年10月に14回目となる医療機器設計・製造展示会&最新技術セミナー「メディカルクリエーションふくしま2018」を福島県内で開催したところであり、国内を始めドイツやタイなど海外からも約200の企業や団体に出展いただき、開発担当やエンジニアの方々、また、大学等の研究者の皆様方等と新しい技術や新しい製品の創出に向け活発な意見交換、技術交流が行われております。さらに、海外展開においては、医療機器市場の拡大が見込まれるASEANをターゲットとした取組みを進め、一昨年、タイ王国の関連機関とMOUを締結したところですが、昨年10月には、同行訪問などきめ細かな支援を通じてタイ王国の企業と福島県企業との合弁会社設立に結びつけることができました。また、人材育成事業では、設計・製造に精通した医療機器エンジニアの育成に向け参入検討の段階から海外展開の段階までを網羅したプログラムを提供し多くの方々に参加いただいたほか、高校生や大学生、若手企業人材等を育成するプログラムを進め、医療機器分野のリーダーによる最先端の技術等に関する特別セミナーを開催するとともに、シリコンバレー短期研修等の取組みも行っております。

センターは開所3年目を迎えました。引き続き、国や福島県、関係機関と連携しながら、お客様の目線に立って更なる利用促進に向けた取組を強化するとともに、専門性の向上に努め、国内を代表する公的医療機器試験機関となるよう、より一層各種事業を推進いたします。特に、ISO17025認証取得に加え、医療機器GLP施設適合及びAAALAC認証取得を実現し、お客様のニーズに応え良質なサービスを提供するとともに、医療機器の開発から事業化までの一体的な支援等に取り組んでまいります。皆様には、今後とも、「東北に、福島にセンターがあったな」とご認識いただきますとともに、是非、センターをご利用いただき、ご愛顧くださいますようお願いいたします。

以上述べましたように、公益財団法人医療機器センター、並びにふくしま医療機器開発支援センターを運営します一般財団法人ふくしま医療機器産業推進機構では、わが国全体の医療機器開発・普及並びに産業振興のみならず、地方発の医療機器関連産業振興にも注力する所存です。両財団が限りなく連携して活動することにより、医療機器に関する「オールジャパンでの取り組み」と「地方独自の取り組み」をより堅固に連携させて、医療機器開発とその事業化、ひいては「わが国の医療機器産業界が真に力強く躍進すること」への一助となれば望外の喜びです。今後も皆様方からの倍旧のご指導・ご鞭撻を賜りますようお願い申し上げます。