技術・製品

「次世代心肺補助装置」開発 ー 国循

緊急対応性、携帯性、抗血栓性、耐久性を実現

国立循環器病研究センター(国循)人工臓器部の巽英介部長、片桐伸将特任研究員らの研究チームは、世界最小・最軽量の次世代型心肺補助(ECMO)システムを開発した。国循では30年以上にわたりECMOシステムの研究を続けており、今回、開発した装置はその集大成ともいえるもので、高い緊急対応性、携帯性、抗血栓性、耐久性--を実現する。

同装置は世界最小(29×20×26㌢㍍)・最軽量(6・6㌔㌘)で、持ち運びが容易にできる。緊急対応性を実現するために、専用回路ユニットを多機能集積型の超小型駆動装置に装填してすぐに使用できるシステムとし、4分以内の迅速な起動が可能だ。

電源や酸素供給のない場所でも、内蔵バッテリと脱着型酸素ボンベユニットにより、1時間以上の連続使用もできる。

開発には抗血栓技術が用いられ、抗凝固療法を最小限に抑えられるため、血栓性や出血性合併症を防いで安全性を向上させる。

長期耐久性に関しては、長期動物実験で装着後2週間(4例)、4週間(3例)の連続心肺補助を実施し、全例で予定期間を問題なく完遂している。

開発プロセスをほぼ完了した現在は、臨床応用・実用化に向け、医師主導治験を来年度に実施するための準備を進めている。

ECMOは救命困難な重症呼吸・循環不全の症例に使われている。しかし、現在、汎用の装置は大型で複雑なため緊急対応には不向きで、重症患者の救急搬送時など院外での使用も難しい。

また、抗血栓性や耐久性も不十分なため、血栓塞栓症や出血合併症のリスクも高く、長期での使用も困難な状況だ。

そのため、院内・院外を問わず、装置が簡単で安全に長期間使用可能なECMOシステムの開発が望まれていた。

ECMOについて
体外式膜型人工肺(Extracorporeal Membrane Oxygenation)の略称。人工肺とポンプを用いた体外循環回路による治療で、重症呼吸・循環不全患者の呼吸および循環回路が自発的に回復するまでの間に呼吸や循環を補助する対症療法として用いられる。