医工連携

手術時の医師の疲労軽減【ニットー】

装着型いす「アルケリス」を開発

身につけて歩けるいす「アルケリス」

プレス金型メーカーのニットー(社長=藤澤秀行氏、横浜市金沢区)は、自治医科大学、千葉大学と医工連携で、世界初の医療向け装着型いす「archelis(アルケリス)」を開発し、レンタルでの提供を開始した。手術時に医師や医療スタッフが装着することで、立ち姿勢のまま座ることができ、長時間の手術による身体的疲労を軽減する。

「歩く」と「座る」が繰り返し可能

アルケリスにはフリーモードとスタンドモード、アルケリスモード――の3つのモードがあり、フリーモードは自由に歩くことができ、スタンドモードでは立ち姿勢で体を支えことが可能。アルケリスモードは中腰姿勢で体を支えることができ、なおかつ歩くことも可能で、『歩く』と『座る』を繰り返し好きな場所で行うことができる。

「アルケリス」の装着スタイル

高いフィット感と左右の足にセパレートした構造により、両足を前後や左右に開いた状態など、さまざまな姿勢でも座ることができる。

足のスネとモモで体重を分散して支えることにより、腰の負担を軽減する。体幹が安定することで手元を繊細に動かすことができ、手術時の高いパフォーマンスを支援する。

電源を使用しないため、充電の必要もなく、安心していつでも使用できる。他の医療機器への電波干渉の心配もない。

装着も簡単で、1人でカカト、スネ、モモの3点のベルトを固定するだけで、すぐに使用を開始できる。

レンタルでの提供開始
オリンパスとジンマーを通じて

アルケリスのレンタル運用は、東日本地域がオリンパスメディカルサイエンス販売(社長=森山啓二氏)、西日本地域がジンマー・バイオメット(社長=松本政浩氏)を通じて展開される。

レンタル料金は1年間が月額5万6000円(税抜)、2年間が月額4万3000円(同)、3年間が月額3万7000円(同)。レンタル内容はアルケリス本体と専用スタンド、保守(定期保守、消耗品)で構成される。

近年、医療技術の進歩で普及している腹腔鏡下手術は、患者の身体的負担を大幅に下げる一方で、医師や医療スタッフは長時間の立ち姿勢で手術をしなければならず、腰や足への負担が増加し、医師らの過酷な労働環境が課題となっている。

さらに、手術室は立ち姿勢を前提に設計されていることや、床には医療機器のコードなどが横たわる中、複数人が連携して手術を行うため、いすを置くスペースが確保できない状況でもある。

これらの手術環境の現状を踏まえ、ニットーは医師らの長時間の立ち姿勢による身体的負担を軽減することを目的に、医工連携のもと全く新しい発想で、身につけて歩けるいす「アルケリス」を開発した。

体幹が安定し術中の安定性が向上へ

アルケリスに関して、共同開発パートナーの自治医科大学メディカルシミュレーションセンターの川平洋センター長は「鉗子の先端数ミリでの動作が求められる腹腔鏡下手術では『体幹の安定』が手術の安定性に大きく影響する。アルケリスは長時間の中腰姿勢でも筋肉に負担を与えず『歩く・座る』を繰り返すことが可能なので、術中の安定動作を向上させる」とコメントしている。

また、千葉大学フロンティア医工学センターの中村亮一准教授は「アルケリスはヒザの角度を固定し、スネと大腿部の広い面積で分散して体重を支えているので、疲労軽減と安定した姿勢保持を実現する」と述べている。