「産業ビジョン2018」策定【医機連】
ソサエティ5.0を支える医療機器産業をめざして
日本医療機器産業連合会(会長=渡部眞也氏、医機連)は「医機連産業ビジョン2018―ソサエティ5・0を支える医療機器産業をめざして―」を策定した。ビジョンの内容を発表するため、医機連では10月26日㈮午後2時20分から、東京・大手町のKKRホテル東京で『記者会見』を開催した。
会見で渡部会長は「医機連では2013年に前回の産業ビジョンを策定した。それから5年が経過し、医療機器産業を取り巻く環境は大きく変化した。医療の枠も健康、予防、介護など大きく広がり、国も健康医療戦略として毎年、骨太の政策を打ち出している。イノベーションも1企業ではなく、オープンイノベーションで共創していく形になっている」と業界環境の変化を踏まえ、前回ビジョンを継承、発展させて『医機連産業ビジョン2018』を策定したことを発表した。
ビジョンにおける医療機器産業のめざす姿を説明しては「世界の人々の健康増進と医療水準の向上を実現するため、▽医療機器と利用環境をつなぎ世界の人々に最適な医療を届ける▽イノベーティブな医療機器の創出により健康・医療を発展させる▽医療・福祉現場のアウトカムの最大化により持続的な社会保障システムを支える――の3点の社会的使命を果たし、人々から信頼され魅力ある産業をめざしていく」と表明した。
医療機器産業のめざす姿の実現に向け、オールジャパンで取り組む6つのテーマとして①イノベーションの加速に向けた環境の整備②医療機器の安全管理・安定供給・安定稼働・トレーサビリティの強化③データ利活用とサイバーセキュリティ強化の推進④日本発の医療機器・技術のグローバル化を通じた医療機器産業の発展⑤診断・治療に加え、予防・介護分野へのニーズ拡大への対応⑥医療機器産業を支える人材の育成・獲得――を列挙。テーマごとの活動を解説した。
デジタル技術を医療現場へ
医療機器の安全管理、安定供給を強化
①のイノベーションの加速に向けた環境の整備では「新しいデジタル技術を医療現場に届けるのはわれわれの役割である。AIは画像診断など色々な医療領域で活用され始めている。それらの実用化に向け、厚生労働省とも薬事規制の在り方などについて議論が重ねている」と説いた。
②の医療機器の安全管理・安定供給・安定稼働・トレーサビリティの強化では「これまで医機連が提案してきたUDI(機器固有識別子)やSUD(単回使用医療機器)再製造、トレーサビリティ向上、適正使用支援――などを引き続き推進していくほか、災害時の安定供給などの課題に取り組んでいく」とした。
③のデータ利活用とサイバーセキュリティ強化の推進では「医療データの利活用が新しいイノベーションを生み出す。それをどうやって実行していくか、が大きなテーマになっている。これは医療機器企業だけでなく、IT企業など新たなプレイヤーとも共に取り組むことも必要だ。また、医療機器のサイバーセキュリティの強化も大きなテーマになる」と述べた。
④の日本発の医療機器・技術のグローバル化を通じた医療機器産業の発展では「MEJ(Medical Excellence JAPAN)が主体となり、官民一体で日本の医療技術のグローバル化を進めているが、そういった活動を継続していく。また、欧米やアジア諸国の医療機器団体との交流や、薬事規制のグローバルハーモナイゼーションも推進していく」とした。
⑤の診断・治療に加え、予防・介護分野へのニーズ拡大への対応では「健康や介護の領域は非常に大きなテーマとなっている。在宅用の医療機器市場は拡大しており、住み慣れた家庭で必要なサービスを受けたいというニーズに応えていく必要がある」と述べた。
⑥の医療機器産業を支える人材の育成・獲得では「医療機器のイノベーションリーダー人材を育成する『ジャパンバイオデザイン』の活動を支援していく。これまでに3期生が卒業し、非常に大きな成果が出ている。各種人材育成プログラムを積極的に推進して、優秀な人材から選ばれる産業にしていきたい」と解説いた。
司令塔「みらい戦略会議」設置
6つの重点テーマへの取り組みに向けては「重点テーマを進めるにあたり、司令塔となる『医機連みらい戦略会議』(仮称)を組織内に設置する。幅広い有識者に参加していただき、6テーマを議論し、それを各委員会で具現化していく。同会議は来年4月の発足に向け現在、準備会で組織作りを行っている。さらに、来年春には『医機連産業ビジョン2018』をテーマに、シンポジウムを開催し、情報発信を行う予定だ」と説明した。
医機連産業ビジョン
オールジャパンで取り組む6テーマ
①イノベーションの加速に向けた環境の整備
■AI/IoT/ロボティクスなど新技術を用いた優れた医療機器の開発を加速
・AMED、医療機器センター、アカデミアとの連携強化「オールジャパンでの医療機器開発プロジェクト」など
■イノベーションをさらに推進するための具体的な活動と政策提言
・新技術を用いた優れた医療機器に対するレギュラトリーサイエンスに基づいた審査制度
・医療機器における部材の安定確保のための対応
■オープンイノベーションのエコシステムの構築支援
・各団体、新規プレーヤーをつなぐ役割
・ニーズ/シーズマッチング活動の支援
・医工連携の推進(製販ドリブン型医工連携など)
■新たなテーマへの取り組み
・ゲノム医療、在宅医療など
②医療機器の安全管理・安定供給・安定稼働・トレーサビリティの強化
■点検等安全性に関する制度の検討
・保守点検の重要性の周知、徹底させるための施策
・(耐用年数を超えて)長期に使用している製品の安全管理の面からの施策
■安全性強化と流通コスト削減に向けたIT化の推進
・医療機器の多様性を考慮したUDIの制度化
■流通効率化と適正使用支援との両立方策の検討
・SCM次世代化:医療機関を含め多くのステークホルダーによる流通の効率化
③データ利活用とサイバーセキュリティ強化の推進
■データ利活用に向けた環境整備に関する政策提言
・ナショナルプラットフォーム(CIN、PHRなど)構築
・産業界としてデータ利活用促進に向けた施策
・UDI、医療等IDなどを活用したデータの連携
■人工知能(AI)実用化に向けた事業環境整備に関する政策提言
・開発用、審査用など各種データの整備(質と量の確保、アクセス性の向上)
・市販後の医療現場での学習への対応
■サイバーセキュリティ対応の政策提言
・医療機器および利用環境に対する規制のあり方の検討
・ISACなどの業界横断的な取り組みの検討
④日本発の医療機器・技術のグローバル化を通じた医療機器産業の発展
■企業の海外進出への貢献
・海外諸国における市場環境・法制度などの情報整理・提供
・JETROやMEJ等のアウトバウンド推進団体との連携
■海外医療機器団体との交流・連携
・GMTA、DITTAとの連携
■グローバル展開に向けた政策への提言
・規制のグローバルハーモナイゼーションの推進
・日本の実情に合わせたMDSAPの検討
⑤診断・治療に加え、予防・介護分野へのニーズ拡大への対応
■予防・介護分野等のアカデミアや業界団体との連携
・この分野における医療機器、周辺機器に関する調査、検討
■地域包括ケアシステムや次世代ヘルスケアシステムなど国が進めている政策との連携
・在宅医療、遠隔医療、健康管理などの推進に向けた環境整備に関する検討、使用される医療機器、周辺機器、診療報酬のあり方などの検討
■予防・健康管理等の情報を国民に提供
・会員団体との連携により、健康増進に有益な知識・情報を収集
・医機連ホームページの活用
⑥医療機器産業を支える人材の育成・獲得
■医療機器産業の魅力・意義等の情報発信
・医機連Webサイトによる医療機器産業を紹介するコンテンツの発信
・医療機器業界として継続的に取り組んでいるコンプライアンス、CSRに関する発信
■優秀な学生の育成・獲得に向けたアカデミアとの連携
・育成プログラムなどの検討
■産学官連携による医療機器産業向け人材の育成
・厚労省、AMED等の取り組みへ参画
■産業界としてのスペシャリストの確保と活用
・有識者との関係構築