企業活動

医療機器の未来を考察 ー システムズナカシマ

医療機器企業向け「ビジネスセミナー」開催

「ビジネスセミナー」会場の様子

帝人ナカシマメディカルのグループ企業であるシステムズナカシマ(社長=中島義雄氏、岡山市東区)は、9月25日㈫午後1時30分から、東京・本郷の医科器械会館で「日本の医療機器の未来を考えるビジネスセミナー」を開催した。セミナーではナカシマグループの医療ビジネスの紹介と、医療機器企業向けにサイバーテロへの対応策や、新しい人材育成法についての『講演会』が行われた。

ナカシマグループの医療事業を紹介

ビジネスセミナーでは開会にあたり、グループ企業の帝人ナカシマメディカルの会長も兼務する中島社長が登壇し、ナカシマグループの医療への取り組みについて説明を行った。

中島社長

中島社長は「ナカシマグループは現在、持ち株会社のナカシマホールディングスのもと、10の事業会社から成り立っている。グループの中心となってきた船舶プロペラメーカーのナカシマプロペラは、1926年の創業以来、プロペラの一貫生産を行っており、そのシェアは国内80%、世界25%となっている。プロペラは一品一品、船によって設計が違う個別生産となり、多品種少量生産なので、医療機器生産との共通点も多い」とナカシマグループの根幹となるプロペラ事業を紹介した。

医療機器分野への参入の経緯については「プロペラと人工関節ではサイズが違うが、製造工程(設計→鋳造→加工→研磨)は類似していることから、これまで培ってきたプロペラの加工技術を、人工関節の開発に応用した。1987年に医療用具製造業許可を取得し、人工肘関節を上市して、医療機器分野へ参入した。現在では169製品の医療機器承認を取得している。また、2015年には帝人と資本提携し『帝人ナカシマメディカル』を設立した。18年にはセンチュリーメディカルから脊椎事業を買収し同分野にも進出した」と説明した。

医療機器事業の海外展開に関しては「海外展開は特にアジアに力を入れ、さまざまな取り組みを行っている。15年5月にタイ・バンコクにアジアの開発拠点として『テクニカルセンター』を設置した。同センターではアジアの患者データを集積し、現地の医師と共にアジア人向けインプラント製品の開発を進めている」と、今後はタイを中心にアジア全域に事業展開していく考えを表明した。

一方、ナカシマプロペラのシステム事業部門が分離し、85年に設立されたシステムズナカシマの説明では「プロペラ設計用自社製CADシステムの技術を活かし、各種製造業向けにさまざまな専用CADを提供しているほか、WebやRFID、業務系、自治体向け――など各種ソリューションを提供。医療業界向けには『地域診療情報共有システム』、『医療画像ポータルシステム』、『救急医療管理支援システム』――などを提供している」と各種ソリューションを紹介した。

医療機器のサイバーテロ対策を解説

このあと、サイバートラスト・セキュリティプロモーション統括部の松本義和統括部長が『医療機器業界に迫るサイバーテロの現状と対応策』、資産工学研究所の坂本善博社長が『成功法則の〝見える化〟〝できる化〟による新しい人材育成方法論』をテーマに、それぞれ講演した。

松本部長

松本部長は医療機器の情報セキュリティ対策の問題点に言及し「一般のIoT機器はセキュリティ対策として、簡単にソフトウェアのアップデートができるが、医療機器は薬機法の認証を受けているので、ソフトウェアをアップデートする際は手続きに手間がかかるのが問題となっている。医療機器は10年以上にわたり使われることも多いので、ファームウェアのアップデートや、サイバー攻撃の脅威に応じた強いプログラムに変えていく必要があるが、現薬機法ではこれが簡単にできない状況だ」とサイバー攻撃に対する日本の医療機器のセキュリティ対策の脆弱さを指摘し、対策を講じる必要性を強調した。

また、医療機器に求められるサイバー攻撃への対策としては「医療機器の設計段階からセキュリティを考える『セキュリティ・バイ・デザイン』が重要になる。後からではなく最初からセキュリティを考え設計することが大事だ。製造工程からのトレーサビリティとしては、医療機器製造時に専用チップに安全に鍵を書き込み、その鍵に認証局から電子証明書を発行するなどして、機器のトレーサビリティを確保する。証明書の長期更新と医療機器に対する長期サポートの供給により、製品出荷後の安全なメンテナンスが提供できる。さらに、セキュアIoTプラットフォーム協議会が推進するIoT機器のセキュリティプラットフォームを活用することで、IoT医療機器の安全確保につながる」と説明した。

優秀な社員の暗黙知の『見える化』を

坂本社長

次いで、坂本社長は新しい人材育成法として、優秀な社員の経験や知識を〝見える化〟する『ナレッジファシリテーション』技法について「成績優秀な社員が現場で培った知恵や秘訣などの暗黙知を〝見える化〟して、形式知にすることで、それが経営資産となる」と解説した。

成績優秀な社員の暗黙知を〝見える化〟する方法として、①テーマを投げかける②現場で見つけた知恵や秘訣を付箋紙に書かせる③模造紙に貼り付ける④整理して切り口別に本質を浮かび上がらせる⑤さらに深堀りする――という作業手順を公開した。

営業活動における人脈の重要性にふれては「人脈の数と質で大きな信用・信頼を得ることができる。既存顧客に対してはキーマンとの信頼関係を構築することで、リピート受注や他部門の紹介などにつながる。また、人脈を活用することで新規顧客開拓やビジネスパートナー(新しい仕入れ先など)確保につなげることもできる。今後は社員間で営業人脈を共有(見える化)することも重要となる」と人脈の効果的な活用法を説き、人脈の〝見える化〟の必要性を強調した。