各種国際展開を支援へ【OMETA】
「平成30年度通常総会」を開催
海外医療機器技術協力会(会長=松本謙一氏、東京都渋谷区、OMETA)は、6月15日㈮午後3時から、東京・飯田橋のホテルメトロポリタンエドモントで「平成30年度通常総会」を開催した。平成30年度事業計画を打ち出したほか、役員の改選では松本会長をはじめ大半の役員が再任した。総会終了後は講演会が行われ、駐日キューバ共和国大使館のカルロス・ミゲル・ぺレイラ特命全権大使が講演した。
総会は司会の矢野守専務理事が「会員総数68社中、出席31社、委任状提出36社」と総会成立を宣言し、開会した。
これを受け、あいさつした松本会長は「OMETAは25周年を迎えた。これまで外務省やJICA(国際協力機構)などの公的機関とは別の意味で医療機器関連の海外協力を行い、日本の無償資金協力で供与された日本製医療機器の保守管理活動など地道な活動を積み重ねてきた」と25年の活動を回顧し、今後の発展を祈念した。
会員への情報サービスに言及しては「トルコやインドネシアで開催される展示会情報の提供や、イランヘルスケアセミナーの開催など、一般のメディアでは取り上げられないような情報を、側面からも見て読み取っていくのがOMETAの特徴となっている」と今後も会員へ価値ある情報を提供していくことを約束した。
このあと、松本会長を議長に議案の審議に入り、平成29年度事業・決算・報告、平成30年度事業計画(下記参照)・予算、理事・監事の選任――を原案通り、承認、可決した。
このうち、理事・監事の選任では、松本会長や阿部一博副会長をはじめ大半の役員の再任を決めたほか、新たに野村欣男(島津理化)と村上隆雄(シスメックス)の両氏を理事に選任し、新役員体制(下記参照)を決定した。
OMETA「新役員体制」
【会 長】
松本 謙一(サクラグローバルホールディング 代表取締役会長)
【副 会 長】
阿部 一博(国際テクノ・センター 代表取締役)
【理 事】
根本 達(ミズホ 相談役)
青木 眞(泉工医科貿易 代表取締役)
安藤 俊和(アコマ医科工業 代表取締役社長)
野村 欣男(島津理化 海外事業部長)=新任
荻野 和郎(日本光電工業 名誉会長)
木村 憲司(パラマウントベッドホールディングス 代表取締役会長)
福田孝太郎(フクダ電子 代表取締役会長)
飯島 幸人(アトムメディカルインターナショナル 執行役員)
村上 隆雄(シスメックス グローバルサポート本部長)=新任
森田 晴夫(モリタ 代表取締役社長)
中野 壮陛(医療機器センター 専務理事)
【専務理事】
矢野 守(海外医療機器技術協力会)
【監 事】
間嶋 恒吾(サクラ精機 国際事業本部執行役員)
植竹 茂(ケイセイ医科工業 代表取締役)
保木 寛明(チェスト 専務取締役)
OMETA「平成30年度事業計画」
【情報・相談事業】
▽ODA(政府無償援助)保健医療分野の新規無償および有償案件についてJICA(国際協力機構)と情報交換を行う。
▽日本政府が成長戦略として進める医療・介護機器の海外展開について経済産業省と厚生労働省と情報交換を行う。
▽JICS(日本国際協力システム)が調達機関となるノンプロジェクト無償の保健医療分野についてJICS担当者との情報交換を行う。
▽賛助会員の日本ウズベキスタンシルクロード財団ヘルスケア部会と連携し、ウズベキスタンおよび中央アジア諸国のODA案件新規開拓のため、現地の関係機関の協力を仰ぎ、プロジェクトを会員企業の海外展開に寄与する。
▽機関誌の定期的な発行
【厚生労働省輸出証明の照合業務】
▽厚生労働省輸出証明書の発給申請手続きに関する勉強会を企画し、円滑な事前照合業務を図る。
【研究・調査事業】
▽ODA案件の供与医療機材の稼働状況や保守管理契約などについて調査する。
▽ASEAN諸国や南米諸国などの海外医療機器規制および輸入登録申請の情報収集に務める。
【補修事業】
▽ODA案件で海外に納入された医療機材に関する海外からの問い合わせ(保守管理など)に対して、該当メーカー担当者に連絡し、日本製医療機器の信頼性に寄与する。
【技術者派遣事業】
▽医療機器保守管理指導の依頼に対し、OMETA登録技術者の推薦、管理指導プログラムの提案を行う。
【研修員事業】
▽海外の医療機器技術者の受け入れ、研修プログラムを立案、保守管理業務の研修を実施する。
【その他】
▽医療機器に関する海外医療機器規制情報の収集とセミナーの開催。
キューバの医療改革を学ぶ
ぺレイラ大使が「特別講演会」で解説
海外医療機器技術協力会は総会終了後に「特別講演会」を開き、駐日キューバ共和国大使館のカルロス・ミゲル・ぺレイラ特命全権大使が『キューバにおける国民医療政策の取り組みについて』をテーマに講演した。
ぺレイラ大使は、2010年からキューバが保健医療制度改革で取り組んできた3つの事項として、①国民の健康指標の改善②医療サービスの質を高め国民の満足度を上げる③それらの機能を効率化し持続させる――を列挙。「改革により、キューバの医療制度は大きく前進を遂げ、世界の国々の模範と参考になっている。その質の高さと効率のよさは世界保健機関WHOからも認められている」と医療制度改革が成功していることを明かした。
医療制度改革の具体的な成果にふれては「乳幼児死亡率は今年最初の5か月間で、出生1000人あたり3・9と低い数値になっている。これはアメリカより低く、世界でもっとも低い例の1つとなる。この要因は妊婦ホームと小児集中医療施設での一次ケア領域の努力に加え、医療制度の質と母子保護プログラムの効果によるものだ」と解説した。
日本とキューバの関わりについては「70年代からキューバでは日本製医療機器を導入してきた。それら医療機器は古くなったにも関わらず最良の条件で国民へのサービスの提供を続けている。これは医療従事者への研修や教育が行われ、メンテナンスプログラムが実施されるようになった成果で、約2000台の医療機器が修復され、使用されている」と医療機器に関する両国の歴史を説明した。
16年9月に安倍首相がキューバを訪問し、キューバに医療センターを開設することで合意したことに関しては「医療センター開設は日本のメディカルエクセレンスジャパンとの合同プロジェクトで、日本の高い医療技術とキューバの医療専門家の優秀さを結び付けるものとなる」と述べ、日本の支援に対して感謝の意を表明した。
また、キューバ革命の歴史的指導者であるフィデル・カストロ議長について「彼はことあるごとに『キューバの医療サービスの発展は日本の最新医療機器によって支えられるべきだ』と主張していた。大変な親日家で、日本の医療機器メーカーの方々の友人でもあった。本日、講演ができたことは彼の記憶と彼が残した遺産を思い起こす機会にもなった」と語り、もうすぐ60周年を迎えるキューバ革命の中で、カストロ議長が残した遺産は今も息づいていることを紹介した。