医療へのAI活用の方向性を示唆【JIRA】
小松会長が「年頭所感発表会」開く
日本画像医療システム工業会(会長=小松研一氏、東京都文京区、JIRA)は、1月10日㈬午後5時から、東京・大手町のKKRホテル東京で「年頭所感発表会」を開催した。席上、小松会長は医療分野でのAI(人工知能)活用状況や、2018年の医療機器産業の環境変化、国際化などの動向を説明。これを踏まえ、JIRAの活動方針を発表した。
小松会長は診断画像解析分野でのAI活用状況について「シカゴ大学の土井教授が提唱するCAD(コンピュータ支援診断)開発が進展する過程で、画像解析にニューラルネットワーク(神経回路網)が応用され、さらに機械学習、とりわけディープラーニング(深層学習)の導入と進化を続けている。また、今後、CPUの高速化とコンピュータシステムの高度化が進み、数百万枚以上の画像データを短時間で学習することも可能になるだろう。大量の医療データべースや、正解付きの診断画像のデータベースの構築も行われ、その活用の仕組みも政府主導で検討がされている」と診断画像分野でのAI活用の現状や方向性を予測した。
AI活用の加速化で憂慮すべき点にふれては「医療分野ではAIの計算結果だけを信用してしまうと、実態医療とかけ離れたことになる危うさを秘めている。AIの出した結果説明をたどれない可能性、『AIのうそ』を見破れない課題もあり、この方面の研究が待たれている」と医療へのAI活用は慎重に推進すべきとした。
個人化医療の実現へ
サイバーホスピタル構想を提唱
JIRAとしてのAI活用に関する方向性については「ここ数年来、JIRAではサイバーホスピタル構想を提唱している。これはサイバー空間上の医療と実態医療を高度に融合させ、個々人の医療要求にきめ細かく対応した医療を提供することにより、安心で安全な質の高い医療を享受できるヒューマンセントリックメディスン(個人化医療)を実現させる、まさに医療におけるソサエティ5・0をめざすものである」と説明した。
2018年は診療報酬、介護報酬改定をはじめ、医療体制、医療分野の研究開発――など様々な環境変化が予想されるほか、第7次医療計画・第7次介護保険計画がスタート。厚生労働省が推進する方針『施設完結型医療から地域完結型医療への転換、医療機能の分化・連携・補完が可能な医療提供体制へ』を具現化していくことになる。
これを踏まえ、小松会長は「実現化するための共同利用制度の導入や、遠隔画像診断の仕組み構築、特定保守管理医療機器に対する保守点検の普及、適正な画像管理・線量管理などを推進するため、画像医療システム機器の供給者の立場から、医療の質や安全性の向上に努めていきたい」とした。
医療機器産業の国際化については「JIRAでは医療機器規制の国際整合化に向け、DITTA(国際画像診断治療機器業界会議)の副議長として、IMDRF(国際医療機器規制当局フォーラム)会合に様々な提言を行ってきた。その結果、これまでにISO(国際標準化機構)やIEC(国際電気標準化会議)が個別に国際標準を策定し、各国規制当局が個別に規制法制化を進めてきたが、JIRAをはじめとするDITTA側の提案に基づき、IMDRFとISO、IECが覚書を結び、規制対象になる業界を含め、標準づくりと規制について検討が開始される」と報告し、JIRAとして今後も医療機器規制の国際整合化に向けた活動を積極的に展開していくことを表明した。