新年の挨拶【一般社団法人日本医療機器販売業協会 会長・森 清一】
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新年おめでとうございます。日頃から我が業界の事業活動等へご支援、ご協力を賜り厚く御礼申し上げます。
平成27年6月に医器販協会長に就任し、皆様のご理解・ご協力を賜りながら活動してまいりました。この間、熊本大震災という大規模災害の発生という事態もありましたが、医療機器等の適正かつ安定供給というミッションの遂行に努め、お陰様で昨年6月より二期目に入りました。今後も、医療業界のみならず関係する多くの方々のご協力を得ながらこのミッションの遂行に尽力してまいりますので、よろしくお願い申し上げます。
さて、当協会は、医療機器販売業者唯一の全国組織団体として、平成10年11月に活動を開始し、平成26年4月1日には一般社団法人として新たなスタートを切り本年には20年を迎えます。
現在、会員数は約1、100社となっておりますが、これからも一層の医療機器等の適正かつ安定供給という使命達成のための諸施策を実行し、会員の社会的地位向上と業界の発展に寄与する活動をして参りたいと考えております。
ところで、平成30年は国民の皆様にとって大変影響があります社会保障制度に関し、6年に一度の診療報酬と介護報酬の同時改定が行われる年でもございます。この改定は団塊の世代が全て75歳以上の高齢者となる2025年に向けた道筋を示す実質的に最後の同時改定となるため、医療・介護両制度にとって重要な節目にあたります。
当協会としても先ほど申し上げました医療や介護の現場で必要とされる皆様に医療機器等を適正かつ安定的に供給するという使命を果たすことにより、我が国の社会保障制度が目指す「どこに住んでいても適切な医療・介護を安心して受けられる社会の実現(地域包括ケアシステムの構築)」に向けて、貢献してまいりたいと考えております。
そこで、本日は年頭にあたって今後の活動に向けた抱負などお話させていただきます。
(医療機器販売業の役割について)
わが国の医療制度は、国民皆保険、フリーアクセスという世界に類を見ない国民のサイドに立った特有の制度の下、医療機関が全国津々浦々に整備され、欧米と比較すると、患者は、医療機関にアクセスしやすい環境にあります。そのような制度のもと、
⑴ 医療を支えるインフラ機能を果たす(安定供給)
我々協会員は、離島など僻地を含め地域差なく全国をカバーし、約85万品目にわたる医療機器・医療材料の安定供給を通して、患者の皆様の安全と国民の医療制度の一翼を担うこと。
⑵ 医療の質と効率化を目指した適正使用支援業務の実施(安全性担保)
① 医療機器の特徴的機能から、『預託在庫管理』、『短期貸出し・持込み』、『立会い』、『保守・メンテナンス』等の『適正使用支援業務』により拡大チーム医療に貢献している。
② 緊急症例対応、手技中の不具合などのため、通常営業日だけではなく、休日深夜に至る24時間の対応を行っている。
③ 医療機器販売に関わる人の質の向上、スキルアップを目的にMDICやCDR等の認定制度の積極的に取り組み、医療関係者が良質な医療を提供できるようサポートしている。
こういった活動に多くの人材と時間を費やしながら、医療機器等を安定的、かつ、安全に供給することを通じ、日々国民サイドに立った医療体制を下支えし、安心を提供していくのが医療機器販売業の役割と認識しており、引き続きこの役割を着実に果たしていくことが重要と考えます。
(消費税増税について)
消費税については、景気の動向を考慮し税率の10%の引上げが昨年4月から来年の10月に再延期されたところでございます。また、昨年衆議院の解散総選挙を経て11月に発足した第4次安倍内閣では、当初予定されていた消費税増税分の使途を大きく変更したことはご存じのとおりです。
当協会では、既に消費税の8%増税時に、公正取引委員会に転嫁カルテル・表示カルテルを届出し、この転嫁カルテル等が適正かつ効率よく取り扱われるよう、消費増税に関するパンフレットやQ&Aを作成し、全国での消費税に関する説明会を開催し、会員への理解並びに周知、医療機関等関係者への理解を求めるための周知徹底を図ってきたところです。この取り組みを参考に今後予定されている消費税率の10%への引上げに際しても、業界内で円滑な運用が可能となるよう対策を検討していきたいと考えております。
一方、平成26年4月に5%から8%へ引上げられた消費税につきましては、これまで、日本医師会や全日本病院会など医療機関団体より医療機関側が負担している消費税がある場合について、その負担の是正を求める要望が出されているところでございます。現在の消費税の仕組みが医療機関にとって好ましくない状況になっているとすると、最終的には医療に携わる全ての関係者の健全な発展にとってマイナスになるものと考えられます。そこで、消費税の適正な運用を求める観点から、当協会としても何らかのメッセージを発信する必要があると考えており、現在、一般社団法人日本医療機器産業連合会と調整しているところでございます。
(中医協業界意見陳述について)
ご承知のように、本年は2年に一度の診療報酬の改定が4月に実施されますが、中医協での議論もヤマ場を迎えているところです。今回の診療報酬改定も、前回同様に医薬品、医療材料の価格を下げられると、業界にとっては適正使用支援業務などその使命を果たす上でどうしても行わなければならない分野も抱えており、益々厳しい状況になっていくのではと懸念いたしております。
診療報酬改定議論のなかで、昨年は、8月と12月の二回にわたり中医協・保険医療材料専門部会において、当協会も①医療機器・材料の安定供給、②特に災害時、パンデミック時の対応の強化を推進、③海外とは異なる独特の流通構造を考慮した価格比較、④医療機器の特性にあった適正使用支援の実施及びコスト、⑤緊急対応の頻度とコスト、⑥流通の改善への取組み及び要望を、また、⑦毎年価格改定については、価格改定後の価格交渉に際して、特定保険医療材料は品目が非常に多いうえに特定保険医療材料以外の保険医療材料の価格交渉も同時に行われるため多大な時間・労力の投入が必要になること等から、流通業界にとって大きな負担となり安定供給と適正使用支援業務に支障のでる恐れがあるので、実施には反対について、医療機器販売業界の立場からの業界意見陳述を行ったところです。
議論の中で特に第二回目の陳述時において委員からは、「流通改善」について一定のルール化なりガイドラインを策定して効率化を推進することの必要性について言及がありましたが、我々業界としてもこの流通の効率化の問題は是非とも推し進めていかなければならない問題だと認識しているところ、この中医協の場での議論は、今後「流通改善」に向けた取組の検討が本格的に動き出す大きなきっかけになるのではないかと思われます。その際、流通の効率化の問題は決して我々の業界だけで解決できる問題ではございませんので、医療にかかわる様々な方面の方のご理解とご協力をいただきながら対応していくことが重要だと考えております。
また、本年の診療報酬改定などに向けて、中医協の「保健医療材料専門部会」及び「医療機関等における消費税負担に関する分科会」に医器販協から委員を派遣し、医療機器販売業の立場から意見を述べているところです。
今後、流通の効率化などに向けた動きは、中医協で議論が進むのか、「医療機器の流通改善に関する懇談会」(流改懇) で本格的に取り上げられるのかわかりませんが、当協会では、中医協や流改懇などでの流通をとりまく諸問題に対しより敏感に対応するため、会長直轄の流通研究委員会を設置しておりますので、この流通の効率等に関しましてもしっかりと対応していきたいと思います。
また、併せて我が国の医療制度の中で、医療機器流通(適正使用支援等)が医療を下支えすることにより医療のインフラ機能を果たしていることについて、医療を受ける国民はもとより、医療関係者、メーカーの方々などより多くの方のご理解を求める活動を進めていくことも当協会の重要な役割の一つと考えています。
(質の向上について)
医療機器産業ビジョン2013(平成25年6月)の中で医療機器販売業者による適正使用に関する支援業務について、公正な取引慣行の醸成を図るとともに、販売業者にとって、医療機器及び支援業務を提供する医療機関側との相互理解を深め、取り決めや申し合わせ等が交わされることを期待したい。また、医療機器の適正使用支援のための人材育成を強化することで医療に貢献することが期待されることが明記されました。
その一環としと、日本医療機器学会によるMDIC認定制度、並びに日本不整脈心電学会によるCDR認定制度の業界内での普及に努めることになり、医器販協としても、MDIC認定セミナー、CDR認定講習会に対し全面的に協力し医器販協会員事業者の職員の質の向上に努めております。
また、当協会では企業倫理委員会を中心に「企業倫理行動指針」を策定し啓蒙を図るとともに、医器販協の会合又は活動に参加する会員企業の役職員が医器販協の会合の運営や情報交換等、医器販協としての活動について、独占禁止法を含む各国の競争法遵守する「競争法コンプライアンス指針」を策定し実施しているところです。
昨年は基準に満たない製品等を市場に提供するなどして、結果的に顧客の信用失墜につながったニュースが続き、日本の産業の質そのものが疑われるような事態が起こりましたがこれは大変悲しい出来事でございます。当協会といたしましては、この一連のニュースを決して対岸の火事とすることなく国民の皆様の業界に対する信頼を損なわないよう、引き続き企業倫理の醸成とコンプライアンスの遵守に向けた研修会の実施や「医療機器業公正競争規約」の遵守についてその周知を図っていきたいと考えています。
医療機器流通に携わる者は「~すべては患者の安全にために~」という考えのもと適正使用支援業務を通じて、医療機関のチーム医療をバックアップする『拡大チーム医療』の一員として、高い倫理観、責任感をもって業務を遂行しなければならないと考えております。そのためには、質の向上のための取組みは継続していくことが何より重要と考え、今後も、行政、医機連をはじめ関係する方々のご支援とご協力を受けながら着実に実施していきます。
医療を下支えしていくことは、単に製品を販売して終了するのではなく、適正使用支援業務などにより、安全性も担保した流通の提供ができて初めて可能となるものと考えます。これからもこの質(安全、安心)をしっかりと確保しながら効率化を図ることにより、医療機器販売業界の向上に努めていく所存でございます。
今後とも様々な課題につきまして、日本医療機器販売業協会の会員、賛助会員及び関係団体と連携して難題を乗り切っていきたいと思っておりますので、関係各位の皆様のご指導、ご鞭撻を賜りますようお願いし年頭のご挨拶といたします。