中小企業ならではのアイデアと機動性でチャレンジ【商工組合日本医療機器協会 理事長・今村 清】
謹んで新春のお慶びを申し上げます。皆様におかれましては、健やかに「戌年」の新年をお迎えになられたことと存じます。
成長と発展が期待される医療機器産業
いま、医療機器産業は、わが国において今後の成長と発展が期待されている産業の1つであります。平成26年6月に施行の「医療機器促進法」、平成26年11月施行の「医薬品医療機器法」、そして、平成28年5月末に閣議決定された「国民が受ける医療の質の向上のための医療機器の研究開発及び普及の促進に関する基本計画」、同年6月に閣議決定の「日本再興戦略」(改訂2016)、そして、平成29年6月に閣議決定の「未来投資戦略2017」では日本初の優れた医薬品・医療機器等の開発・事業化を目指すことを目的とするなど、諸政策にも後押しされています。
行政の動きとしても、①AI技術やゲノム医療など、高度な技術を活用した先進的医療機器の創出、②ベンチャー企業の支援、革新的医療機器条件付早期承認制度、③医療と産業の健全な発展を支える基盤としての、医療機器規制の円滑な運用、④日本初の革新的医療機器・再生医療等製品の海外展開が見込まれる分野での国際展開を促進する環境整備などが謳われています。
また、この医療機器業界からも、平成29年10月の「第1回革新的医療機器創出のための官民対話」、同年10月に京都で開催の「薬事規制当局サミットシンポジウム」などで、一般社団法人日本医療機器産業連合会(以下、医機連)より、医療ICT(データ、AI技術等)活用の推進をはじめ、グローバルなビジネス展開を含めた建設的な提案がされています。
このような医療機器産業の現在の市場規模は約2・8兆円といわれ、年々伸び続けています。その医療機器産業では、大企業はもとより、中小企業も多数の割合を占めています。私ども商工組合日本医療機器協会(以下、日医機協)にも中小企業は多く、それらの会員企業にお役に立ち、かつ、医療機器産業の発展と医療現場のニーズに貢献することを目指して、今年も積極的にさまざまな事業を展開してまいります。
中小企業ならではのアイデアと機動性でチャレンジ
今年も、全国各地区の選りすぐられた中小ものづくり企業と会員企業らにより、日医機協が所有する医科器械会館で展示商談会を行い、商談と交流を通じて、中小企業ならではのアイデアと機動性で、既存製品の改良や新製品開発、そして販路拡大などを目指しています。この平成30年3月までに、全国の1都2府22県との展示商談会の開催となります。
この展示商談会の開催にあたっては、各県並びに市、そして公益産業支援センターや各地区の商工会議所、また、関東経済産業局をはじめとする各地区の経済産業局、医機連、一般社団法人日本医療機器テクノロジー協会、一般社団法人日本医工ものづくりコモンズの後援など、皆様方より多大なご支援を頂きながら開催に漕ぎつけておりますことを、深く感謝をいたしております。
今年も、この3月までの29年度内だけでも、1月に青森県、文京区(於:文京シビックホール)、2月に千葉県柏市、埼玉県(於:全国家電会館)、3月に熊本市などと展示商談会を予定しております。
このほか、全国の大学並びに県庁、公益産業支援センターからの依頼を受けて、医療機器開発に向けての「医療機器ニーズ探索交流会」に、当協会の会員企業及び事務局が現地に出向いて、開発に向けて相談を受けて意見交換を行うなど、その活動は全国に拡がっています。
消費税等の税制に関連して、業界の商慣習の見直しを
私は、昨年末、政府の予算案の審議をされる国会議員の講演を聞く機会がありました。その講演の席上、事業用資産を非課税とするなど、税負担の軽減を図る事業承継税制の確立等についての話がありました。
また、その席上、「高度成長時代の日本の中小企業の事業主の平均年齢が30代と若く、その後、時代とともに平均年齢がそのまま推移しているケースが多く、経営者が一代で築きあげてきたことを意味するが、経営者の高齢化や引退などの際には、円滑な事業承継が大きな問題になってゆく」との認識を示されました。
まさに、私ども日医機協の会員企業にも当てはまる面もあると思いました。当協会の会員企業では、古くは創立が明治・大正時代、また、この高度成長期に設立の会員企業がたくさんありますので、企業の税制など、経済的な側面にも注目してゆきたいと思います。昨年10月に、日医機協のJMIAユースアップの会でも「相続・事業承継セミナー」を開催していますが、今後、このような講習会も適宜、主催又は共催する予定です。
ところで、この税制に関連しての話ですが、2019年の10月に、現在の消費税8%から10%への改定が予定されています。この消費税への対応も企業にとっての大きな問題の1つですが、私は、この医療機器業界内における、既存の消費税も含めた支払いのあり方についてかねてより理事会で言及しております。特に、医工連携ものづくりでは、異業種の新しいビジネスパートナーとの関係を構築するうえでも支払方法を改善すべきとの持論をもっていますので、機会をみて提言をしてまいりたいと思います。
各種講習会の開催など、従来からの事業もしっかりと
このほか、平成18年度より実施している「医療機器販売業等の営業管理者及び医療機器修理業責任技術者のための継続的研修」を今年も実施し、その他、医療機器QMSなど、医薬品医療機器法等の講習会も開催いたします。講習会は、所管の行政庁にもご協力をお願いしながら、強力に展開してまいりたいと存じます。これらの講習会の開催も、長年医療機器産業を支えてこられた中小の会員企業が医薬品医療機器法をはじめ、法規制にも円滑に対応できますよう、前述の事業承継も含めて、情報提供として少しでもお役に立ちたいと思っています。そして、臨床研究法施行をはじめ、企業倫理に係る内容も含めて、会員企業のニーズに応える講習会は、重要な事業の1つとして今後も継続いたします。
そして、2013年からの連続して参加の「国際モダンホスピタルショウ」にも、今年も参加に向けて検討を行いたいと存じます。当ホスピタルショウは、毎年度、全会員企業にご案内を行い、会員企業が出展して、対外的な情報発信の場としてもすっかり定着しているものです。
そして、今年も東京都をはじめ、東京消防庁及び文京区など、各行政機関との災害時の協定に基づいて協力体制の整備を目指すほか、「病院船」に係る議員連盟の動きなどを見据えながら、団体としての総合的な災害対策のあり方を研究します。
また、日医機協のホームページのさらなる充実をめざします。会員企業の役に立つサイトはもとより、対外的に日医機協に興味を持っていただくサイトのリニューアルを進めて、すべての会員企業の皆様にとって利用しやすい、今後も「全員参加の」ホームページをめざします。
もちろん、従来からの協会の伝統でもある会員交流、福利厚生事業もしっかりと実施してまいります。
本年もどうぞよろしくお願い申し上げます
今後も会員企業の皆様とともに、ご一緒に歩んでまいりたいと存じます。また、全国の医療機器業界団体の皆様、全国の医療機器を業とする中小企業の皆様、そして、医療機器に関連するものづくり企業の皆様とも交流・連携を深めながら、日本の医療機器業界の発展、日本の産業界の発展に少しでも貢献したいと考えております。
皆様のこの1年のご健勝とご多幸を心よりお祈り申し上げ、また、当協会へのご指導とご鞭撻を心よりお願い申し上げて、新春のご挨拶に代えさせていただきます。