加藤大会長が「大会長講演」【第100回日本医療機器学会大会】
『未来への架け橋に込めた思い』をテーマに

第100回日本医療機器学会大会の2 日目の6月13日㈮に加藤伸彦大会長は『未来への架け橋に込めた思い』をテーマに大会長講演を行った。
加藤大会長は医療機器の新たな問題点として、①情報セキュリティとプライバシー(サイバー攻撃のリスク)②倫理的・社会的課題(AI搭載機器の責任所在)③技術進化と陳腐化(製品寿命の短縮)――の3点を列挙。「情報技術の急速な技術発展により、これにどう対応するかが課題になっている」と述べた。
これにともない「かつて医療機器は医師や看護師が操作していたが、医療機器の種類が増え、扱える範囲を超えたため、臨床工学技士が資格化され対応していたが、現在では臨床工学技士でもカバーできない医療機器が出てきており、特定の分野を専門的に学んだエンジニアが必要な時代に入っている」と説明した。
医療機器開発の課題と構造的問題として、▽治療機器分野の海外依存▽研究開発費と人材不足――を挙げ「治療機器の多くは海外メーカーの依存度が大きく輸入超過の状況が続いている。資本力のある海外メーカーとの競争が厳しく、医療と工学の知識を備えた人材やAIなどのデジタル技術に精通した人材確保が必要になる」と語った。
医工連携による医療機器開発に関しては「医工連携は医療機器を開発するだけでなく、その後、商品として販売して産業振興と経済効果を得ることが大事だ。また、医工連携では医療側が安全性や倫理性を重視するのに対し、工学側は技術的可能性や効率性に重点を置く傾向にあり価値観の違いが障壁になることもある」と述べた。
今後の医療機器は『連動と自動化』がキーワードになるとし「メーカー間のAI搭載医療機器がつながり、その機能を自動化する時代になる。その実現のためには当学会の役割は非常に大きくなるだろう」と同学会の重要性を強調した。