年頭所感

「乙巳(きのと・み)」の年、努力を重ね、物事を安定させていく年…【商工組合 日本医療機器協会 理事長・中島孝夫】

中島理事長

謹んで新春のお慶びを申し上げます。本年も皆様方のご指導、ご協力を賜りたく、何卒、宜しくお願い申し上げます。

本年は、「巳年」ですが、十干が「乙(きのと)」、十二支が「巳」の年にあたるので、干支は「乙巳(きのとみ)」になります。「乙」とは困難があっても紆余曲折しながら進むことや、しなやかに伸びる草木を表しているそうです。「巳」は蛇のイメージから「再生と変化」を意味します。脱皮し強く成長する蛇は、その生命力から「不老長寿」を象徴する動物、または神の使いとして信仰されてきました。この2つの組み合わせである乙巳には、「努力を重ね、物事を安定させていく」といった縁起の良さを表しているとのことなので、本年こそは良い年であって欲しいものです。

昨年はパリオリンピック・パラリンピックの年で、明るい年を期待しましたが、衝撃を受けたのは、元日に能登半島地震が起こったことです。これから新しい年を迎え、決意も新たにしているところに、震度7の地震が発生したことは正に青天の霹靂だったと思います。どれほど大変なことか想像が出来ませんが、一日も早い復興を願うばかりです。被災に遭われた皆様に心よりお見舞い申し上げます。

さて、5度目の正直で高市早苗氏と接戦して9月に自民党総裁になられた石破茂氏が10月1日召集の臨時国会で第102代首相に指名され石破茂新内閣が発足しました。同日会見し「この内閣を『納得と共感の内閣』としたい」と語りました。そして、新内閣の信任を問いたいとして10月9日に衆院解散を表明し27日に投開票という異例の速さで選挙が行われました。結果は惨敗し、やはり政治資金問題は党のイメージを失墜させ、国民の審判は厳しいものとなりました。特にやってはいけないのは、問題を起こした非公認議員にも活動費2,000万円を支給したことだと思います。公認非公認のメリハリがなくなっており、これではやったもの勝ちになります。公明党もあおりを受け、クリーンのイメージが減少し、9月に山口代表から石井代表に代わっての総選挙で自公共に議席数を落とし過半数には届きませんでした。

一方、野田代表引き得る立憲民主党は選挙前の98議席から50議席伸ばし、148議席となり、また、国民民主党も選挙前の7議席から4倍の28議席となった。野党が連立を組めば政権交代の可能性があります。与党が過半数に届かなったことで、再び首相を決めなければなりません。石破首相と立憲民主党の野田代表との首相指名の決戦投票となり、投票総数465票で、石破氏が221票、野田氏が160票、無効票が84票でした。野田代表にチャンスがありましたが、野党は一枚岩になれず、再び石破氏が指名され、第103代首相になりました。

今後の政局はすべてに於いて、野党と真摯に協議しながら進めなければ一歩も前に進めません。ある意味ではブレーキがかかり良いことかもしれません。

一方、アメリカはバイデン大統領に代わり、ハリス副大統領が民主党候補となり、勢いを増したトランプ氏と接戦と報道されていましたが、蓋を開けてみればトランプ氏が圧勝しました。さらに上下院とも共和党が過半数を獲得し、トリプルレッドとなり政権運用の自由度が高まりました。民主党の考えが通らない可能性があり、国際協調よりも「米国第一主義」を掲げるトランプ氏が米大統領に返り咲く本年は、どのような年になるのか予想がつきません。自国第一であれば関税を増やし、減税もする。国内製造業を大事にするならば、ある程度ドル高対策をするのではないか。そうすることで国内需要だけでなく、海外市場も獲得できます。そして少しでも円高になることを望んでいます。日本の医療機器は国内品より輸入品が多いからです。

心配ごとはまだあります。パリ協定(気候変動問題に関する国際的枠組み)からの再離脱が懸念されます。米国が離脱すれば、地球温暖化対策が停滞するのは避けられないでしょう。世界的に異常気象が起きていることは周知の事実ですが全く意に介するとは思えません。

また、残念なことに、ロシア・ウクライナの戦争はまだ続いています。2月24日で3年になります。現在はウクライナの国民の半数以上が停戦を望んでおり、1月20日にアメリカ大統領に就任するトランプ氏は、「私ならこの戦争を24時間以内に終わらせる。」と豪語しています。いい形で終結することを心より望んでおります。

さて、医療機器業界に目を向けると、何故いまだに、医療機器法が制定されないのか疑問に思います。お隣の韓国では20年以上前から制定されています。先人諸兄の皆様のお陰で薬事法から薬機法へ一歩前進しましたが、医薬品の規制の範疇に治まっています。

医薬品に保守点検や修理業もなく医療機器とは全く性質を異にするものと同じ規制で縛るのは無理があると業界の皆様は認識しているはずです。ましてや医療機器が益々ロボット化すれば、医薬品との違いが益々大きくなります。医薬品はいきなり体内に入るものですので不良品であれば命に及びます。したがって規制は厳しく安全かつ安心して服用できる製品を作らなければならない。一方、医療機器はどんなに優れた機器であっても、それを正しく扱う医療従事者のスキルによるところが大きいので、医療事故を無くすためにはトレーニングが必要になります。

医療機器が進化している今こそ法律を見直す時が来ているのではないかと思います。私のようなものが医療機器法制定について申し上げるのは、大変僭越と存じますが、アジア周辺諸国が医療機器法を運用しているのに何故日本はいつまでも医薬品の規制のままにしているのか理解が出来ません。かつては日本の薬事法を学んだ韓国ですが、今度は日本が韓国の医療機器法を学ぶことになります。微力ではございますが、今後も医療機器法制定に向けて尽力して参りたい所存です。

重点7事業を展開

さて、日本医療機器協会は本年も、医薬品医療機器等法をはじめ、会員企業の皆様の業務に係る関係法令の講習会開催などに努めてまいります。具体的には昨年に引き続き協会事業として以下の重点7事業を展開して参ります。

①各種講演会の開催(Web等を活用)

医療機器産業を取り巻く経営環境の変化に対応し、多種多様な情報収集に努め、会員企業にとって有益な情報を引き続き提供します。

平成18年度より実施している「高度管理医療機器販売業等の営業所管理者及び医療機器修理業の責任技術者のための継続的研修」、その他「薬機法関係講習会」、「公正競争規約講習会」の開催を予定しております。「診療報酬講習会」については診療報酬改定年に該当しませんので来年検討したいと思います。本年も引き続き、Webを活用した講習会が中心となっての開催となります。

講習会につきましては、今後も引き続き工夫し、東京都をはじめ、PMDA、関係官庁にもご協力をお願いしながら、積極的に展開してまいりたいと思います。これらの講習会も長年、医療機器産業を支えてこられた会員企業の皆様方のお役に立てるよう、医薬品医療機器等法をはじめ、法規制にも円滑に対応できますよう、内容を充実させていきたいと考えております。

②医工連携事業の推進

平成25年度より継続して取り組んでいる医工連携では、令和7年度も、全国の各都道府県並びに産業振興機構等と共に連携しながら、展示・商談会を開催していきます。この本郷展示・商談会も今年で12年目を迎え、製販企業と、ものづくり企業との間で、マッチングの成果も出ております。

また、この医療機器産業が集積する文京区の本郷台地を「メディカルヒルズ本郷」と標榜し、継続して当協会の医工連携のキャッチフレーズとして、全国に広げ、さらにマッチングの成果も重ねていきたいと考えています。

③展示会出展等について

会員企業にとって有益かつ医工連携に特化した展示会を検討したいと思います。

④関係官庁との連携

関係官庁との協力などを通じて、医療機器業界の方向性や課題、医薬品医療機器等法をはじめ法制度の検討に関わり、厚生労働省、経済産業省等の行政機関に対しても積極的に要望・提案を行います。特に医療機器法の制定に向けて前進できればと思います。

⑤会員企業間の交流

製造、販売およびサービス業など、業態の枠を越えた企業間の交流に努めるほか、全国の中小企業団体や企業とも協力関係を築いていきます。当協会の伝統となっている会員企業の皆様のための野球大会、ボウリング大会等の事業を、対策を十分にし、福利厚生の一貫として皆様と共に進めていきたいと思います。

⑥会員のための医科器械会館の管理・運営

当協会の活動拠点である当会館は、本年も感染対策を講じ、会員企業の皆様が安心して気兼ねなく、自由に立ち寄っていただく場として活用していただき、会議室も安価で提供致しますので、自社の会議室のごとく、ご使用して頂ければ幸いに存じます。これからも快適性と永続性の確保を図り、会員のための使いやすい会館として管理・運営を行って参ります。

⑦災害対策・災害救援活動・BCPなどの研究

医療機器団体として大災害に備えた対応を検討します。なお、当協会は、戦前より会員企業のご協力により、災害時には救援物資や義援金を提供するなどの活動を行っている歴史があります。今後も変わらぬ姿勢で参ります。

以上の7項目を、本年も重点項目として推進していきたいと思いますので、皆様のご指導、ご協力のほど、宜しくお願い申し上げます。

最後に、全国の医療機器業界団体の皆様、そして、医療機器に関連するものづくり企業の皆様とも交流・連携を深めながら、日本の医療機器業界の発展に、少しでも貢献していきたいと考えております。

皆様のこの1年のご健勝とご多幸を心よりお祈り申し上げ、また、当協会へのご指導とご鞭撻を心より、重ねて、お願い申し上げて新春の挨拶に代えさせていただきます。