「創立40周年記念シンポジウム」開催【医機連】
医機連ビジョンに関連して演者3氏が講演
医療機器関連の20団体で組織する日本医療機器産業連合会(会長=山本章雄氏、医機連)は、1984年の設立以来、今年で創立40周年を迎えたことを記念して、10月18日㈮午後3時から、東京・大手町の三井ホールで「医機連創立40周年記念シンポジウム」(テーマ=いつでもどこでも安心して受けられる医療と健康への貢献)を開催した。シンポジウムのあとには「40周年記念祝賀会」を挙行した。当日は約200名が参加した。
業界が求める人材像の3視点に言及
シンポジウムは医機連が40周年を記念してアップデートした医機連産業ビジョンに関連して「人材育成」「予防医学」「国際関係」をテーマに、3名の演者が講演した。
最初に、サステナヘルスの小野崎耕平代表理事が『医療機器業界で求められる人材像』をテーマに講演した。小野崎代表理事は、医療機器業界における経営人材に求められる3つの視点(⑴グローバル⑵クロスセクター⑶構想力)に言及。グローバル人材については「単に英語ができる人材ではなく、アサーティブネス(相手に配慮した自己主張)ができる人材である。カルチャーや国民性の違いを理解し対応することで多国籍チームのマネジメントも可能となる」と述べた。
クロスセクターに関しては「公的セクターと民間セクター、臨床者と研究者など異なるセクターやステークホルダーへの理解や、医療機器と医薬品、ヘルスケアと非ヘルスケアなど業界特性の違いの理解、大企業とスタートアップなど事業規模や事業局面の違いへの理解が必要となる」と語った。
構想力にふれては「工学やサイエンスなどの技術理解は不可欠で、構想の際にはマクロとミクロを行き来して、見えないものを見る力も求められる」とした。
ウェルネス市場は世界規模で拡大へ
次いで、ミナケアの山本雄士社長が『健康に投資する医療への拡張』をテーマに講演した。山本社長は公的保険外サービスやウェルネス市場について「2050年の公的保険外サービスの規模は59兆円、ウェルネス市場は世界で年間270兆円規模になるといわれている。米国では消費者の82%がウェルネスを日常生活の最優先事項としており(英国73%、中国87%)、70兆円規模の市場が年5~10%で成長している。この市場での商品は効果と価格が重視され、成長分野としては女性の健康、老化、体重管理、フィットネス、腸の健康、性的な健康、睡眠――などが注目されている」と説明した。
また、患者にとっての価値を創造し、医療と健康へ貢献するために継続して問うべき事項を列挙し、産業としては▷医療機器メーカーとして患者に価値をどのように提供できるのか?▷医療機器ビジネスの成長に現行の保険依存モデルは最適だろうか?▷医療機器がツールではなくサービスとして提供されるならどのような価値が生まれるか?――などを示した。
企業が継続して掲げるべき問いに関しては▷自分たちは医療機器で何を実現しようとしているのか?▷自分たちの顧客は誰か?▷どのような価値を提供するため日々努力しているのか?▷自分たちの事業は他の事業と何が違うのか?▷市場、社会、個人のニーズや期待に応えているか?――などを挙げた。
医療データ活用で医療機器のイノベーション加速
最後に、野村総合研究所メドテックコンサルティング部の松尾未亜部長が『医療機器市場の環境変化と日本企業にとっての示唆』をテーマに講演した。松尾部長は世界的にみた医療機器業界の構造を解説し「売上高30億㌦以上の〝チャネルメジャー〟と呼ぶ企業群と、売上高1億㌦以上、3億㌦未満の〝技術ニッチ〟と呼ぶ企業群は業界内ですみ分けされ、相互補完の関係があることが多く、それぞれに業界内でのポジションを強化している」と述べた。
中国医療機器企業の台頭については「中国企業は内需の積極的な取り込みにより成長している。ノウハウを集積するとともに、世界市場に拡販する力も有している。今後、世界的にみた中国企業の台頭は、業界構造に変化をもたらす可能性が高い」と語った。
日本の医療機器市場に言及しては「マイナンバーや次世代医療基盤法の施行など国内の政策の動きに合わせ、医療機器のイノベーションを加速すべき時である。健康・医療のデータ活用により、医療機器は生活の中で患者の負担を軽減することが可能であり、データの収集、統合による付加価値の創出がますます重要になる。また、公的インフラの整備や普及のためには、業界としての政策提言が必要である」との考えを示した。
産業ビジョンでは7つの取組み推進
記念シンポジウム終了後の「創立40周年記念祝賀会」には、会員をはじめ来賓の国会議員や行政機関の担当官、関係団体の役員ら多くの関係者が参集し挙行された。
開会にあたり、あいさつした山本会長は「医機連は1984年2月に日本医療機器関係団体協議会という名称でスタートした。当初は医療機器関係14団体で組織された。その後、2005年に現在の日本医療機器産業連合会に改称し、14年に一般社団法人化した。現在は20団体が加盟している」と医機連の歴史を振り返った。
医機連の事業にふれては「医機連は創立以来、医療機器・医療技術のイノベーションと安定供給により、国民福祉の向上と医療機器産業の発展に寄与することを目的に各種事業を展開している。行政と業界との窓口機能にとどまらず、加盟団体の主体性を尊重しながら、行政に業界としての意見を提言している」と説明した。
医機連産業ビジョンをアップデートしたことに関しては「医機連では5年ほど前に産業ビジョンを策定していたが、19年度後半からコロナ禍や国際紛争などにより経済状況も大きく変化したことに対応するため、産業ビジョンをアップデートした。新たな産業ビジョンでは〝いつでもどこでも安心して受けられる医療と健康への貢献〟をテーマに、①イノベーションの実現②継続した安定供給の実現③グローバル化を通じた医療機器産業の発展④国民のヘルスリテラシー向上への貢献⑤持続可能な社会に向けた地球環境と医療の質のバランシング⑥人材確保と育成⑦健全で信頼される産業への研鑽――の7つの取り組みを推進する」と紹介した。
このあと、来賓を代表して、内閣府の城内実特命担当大臣や文部科学省の本田顕子大臣政務官、厚生労働省の佐藤大作大臣官房審議官、経済産業省の竹内真二大臣政務官の祝辞に続き、お祝いに駆けつけた武見敬三参議院議員と古川俊治参議院議員が紹介された。
石破茂内閣総理大臣の祝電が披露されたあと、日本医師会の松本吉郎会長の『乾杯』の発声で祝賀会は開宴した。参加者らは祝杯を挙げながら、医機連の一層の発展を祈念した。ひと時の歓談のあと、医機連の松本謙一副会長の『中締め』で祝賀会は閉会した。