「医療機器産業ビジョン2024」策定【経産省】
国内市場依存から脱却しグローバル市場へ
経済産業省は医療機器産業が目指すべき方向性や必要な支援策、戦略的な取り組みをまとめた「医療機器産業ビジョン2024」を策定した。ビジョンでは医療機器産業は国内市場に依存した成長から脱却し、グローバル市場の獲得による成長が必須であると指摘。今後の方向性としては『グローバル展開』と『ノベーション創出のための研究開発投資』が産業成長につながると示している。
米国市場への展開が戦略的に重要
これまで国の医療機器開発に関する支援はイノベーションの創出と国内での実用化の支援に重点が置かれていたが、グローバル市場の獲得までを目指した支援がなかった。
医療機器産業の世界市場は2023年に約5,176億㌦(約78兆円)で、国別では米国が約47%、日本が約5%を占めている。先進国の高齢化、新興国の高齢化および経済発展により、世界市場は27年に約6,543億㌦(約98兆円)に成長すると予測され、18年~27年には年平均成長率5.9%での拡大が見込まれる。
ビジョンでは『グローバル展開』に向け、米国市場への展開が戦略的に重要であると示唆。米国市場は世界で最大であることに加え、同市場でスタンダードな医療技術としての評価を得ることがグローバル市場の獲得につながることから、最も重視すべき市場であると位置づけている。
米国展開までをパッケージ支援
米国展開に成功する事例を多く創出することが重要で、既に国内で開発・上市され一定の評価を得ている製品を有し、米国展開を視野に入れている企業に対して、米国展開までを後押しするパッケージ支援を構築し、補助金などの政策ツールの活用により、市場獲得に必要となる米国展開のための臨床試験などを支援する。
米国市場の獲得には適切なステークホルダーとのネットワーク構築支援も重要になることから、国際学会や国際展示会への参加の推進や、厚生労働省や各国日本大使館、日本貿易振興機構(JETRO)、日本医療研究開発機構(AMED)、医薬品医療機器総合機構(PMDA)など国内外に拠点を持つ支援組織と連携し、企業が米国進出する際に必要なネットワークやルールの構築を支援する。
また、米国展開からさらにはグローバル市場の獲得が国内企業の成長に重要であることを強調。この実現に向け、主にイノベーション創出と国内での実用化までを対象としたこれまでの国による医療機器開発支援に加え、グローバル展開までを対象とした開発支援を構築するとともに、開発当初から海外市場のニーズや規制の情報にアクセスが容易となる環境整備を行う。
そのほか、米国展開の経験の蓄積と波及、海外展開支援人材の確保のため、国際共同治験など海外臨床試験への支援を通して、競争力のあるエビデンス構築のマネジメントができる人材を国内で育成する。
イノベーション創出へ
デジタル技術を用いて開発促進
一方『イノベーション創出のための研究開発投資』に関しては、医療機器産業がモノ売りからコト売りへの転換が進行し、世界的にデジタル技術を活用した競争優位性の確保が重要戦略となっていることから、世界に先駆けてAIなどのデジタル技術を用いた医療機器を活用する社会を実現していくことが重要となる。
この実現に向けて「多様な医療データ」と「アクセスの容易性」を両立した形で企業が医療機器開発に利用可能なデータ利活用基盤を築くことで、デジタル技術を用いた医療機器の開発を推進する。
特に成長が期待されるAIを利用した医療機器を含むプログラム医療機器(SaMD)などの新分野の製品では、治療効果や経済性に関する価値を確認することが社会実装や市場形成に必要となることから、価値の確立に向けた実証試験などを支援する。
さらに、大手企業によるスタートアップ(SU)との連携強化を加速させるため、大手企業とベンチャーキャピタル(VC)、医療機関、研究機関、国のすべてが参加のもと、国内SUが革新的なアイデアを実用化し、大手企業と連携しグローバルに展開するといったモデルを構築することを目指す。
現状、大手企業とSUとの連携は限定的であることを踏まえ、医療機器SUに不足する製造、マーケティング、海外展開などの経験の補完、SUの出口戦略の強化、大手企業による出資・販売提携・M&Aの促進のため、MEDIC(医療機器開発支援ネットワーク)やInnoHub(ヘルスケアに関わるベンチャー企業等の相談窓口)、研究開発支援事業などを活用して、SUと大手企業のネットワーキングと大手企業によるアクセラレーションの場を構築する。