医工連携

膵臓がん検出支援技術を開発【富士フイルム、神戸大学】

AIを活用し非造影CT画像から

富士フイルム(社長兼CEO=後藤禎一氏、東京都港区)と神戸大学(学長=藤澤正人氏、兵庫県神戸市)は、AI技術を活用して腹部の非造影CT画像から膵臓がんが疑われる所見の検出を支援する技術を開発した。これにより、両者は4月に開発した膵臓がんの検出を支援する技術の適用対象を、造影CT画像から非造影CT画像へ拡大させた。今後、一般的な検診や人間ドックで撮影された非造影CT画像から、より多くの潜在的な膵臓がん患者を拾い上げ、早期治療につながることが期待される。

両者はCT画像から膵臓がんの早期発見を支援するAI技術の開発を目指し、2021年8月に神戸大学大学院医学研究科の児玉裕三教授、村上卓道教授を中心としたチームのもとで共同研究をスタートした。

今回、約1,000症例の非造影CT画像をAIに学習させ、膵臓がんの直接所見である腫瘤、間接所見である膵萎縮・膵管拡張を検出する技術の開発に成功した。造影CT画像に比べてコントラストが低く不明瞭な非造影CT画像にも対応させた。

今後、両者は同技術の社会実装に向けた有効性検証を進める。将来的には膵臓がんが発生する前段階で見られる膵臓の腫大や萎縮などの軽微な形状変化を検出し、膵臓がんに罹患するリスクの高さを評価する技術の開発にも取り組んでいく。

膵臓がんは初期には自覚症状が出にくく早期発見が難しい病気となる。腹痛や体重減少などの自覚症状が現れた段階では周辺組織への浸潤をともなう進行がんとなっているケースが多く、がんと診断されてから5年後の相対生存率は12.5%とがんの中でも生存率の低いがんの1つとなっている。

予後を改善するには早期発見が極めて重要となるが、膵臓がんを初期の段階で検出するには、直接所見である腫瘤だけでなく、膵臓の萎縮や膵管の拡張・狭窄などの間接所見にも着目する必要があるが、膵臓は他の臓器に比べて構造が複雑なため、間接所見の発見が難しいことが課題となっている。

今回の技術開発にあたり、神戸大学の村上教授は「造影CT画像に加えて、非造影CT画像でも膵臓がんの検出を支援するAI技術が確立されれば、造影CTを撮像することのない検診や人間ドックなどのスクリーニングレベルの検査の段階で膵臓がん疑い症例を早期に拾い上げることができる。われわれ画像診断専門医の知識や経験をより多くの方に還元することで、膵臓がんの予後改善につなげたい」と述べている。