日本メディカルオネストに「厳重警告」【医療機器業公正取引協議会】
公正競争規約の違反行為で
医療機器業公正取引協議会(会長=松本謙一氏、東京都中央区)は、8月31日㈭午後3時から、同協議会事務局で「記者会見」を開き、医療機器業公正競争規約に違反する行為を行った日本メディカルオネスト(社長=清水保雄氏、東京都豊島区)に対して『厳重警告』を行った――と発表した。
日本メディカルオネストが行った公正競争規約の違反行為は、東千葉メディカルセンター(千葉県東金市)が使用する人工心肺装置ECMOに関して、日本メディカルオネストが納入することができるように有利な取り計らいを受ける見返りに東千葉メディカルセンターの元臨床工学技士長の求めに応じて、2021年3月17日に同技士長の個人口座に現金100万円を振り込んだことにある。
両者の取り引きは、今回のECMOが初めての取り引きとなり、装置一式が21年の4月と9月に、それぞれ納入されている。
現金100万円の支出については、元臨床工学技士長の討論会への協賛という名目で、日本メディカルオネストの元社長自身が決裁して支出した。討論会は同技士長が「第4回心臓血管外科手術医師技士討論会」なるものを企画し、その討論会に日本メディカルオネストが協賛する形を取っていたが、実際には討論会は開催されておらず、全くの架空のものであった。
もともと元臨床工学技士長と元社長は知り合いで、15年頃に医療機器の営業担当者同士として知り合い、飲食を共にする仲であった。同技士長は19年4月に東千葉メディカルセンターの臨床工学技士長に採用され、医療機器の選定を担っていた。元社長は19年10月に日本メディカルオネストの社長に就任したが、直後に業績が悪化したため、同技士長に相談した。
元臨床工学技士長は日本メディカルオネストを当該取引に介入させることとし、その謝礼として現金100万円を支払うように元社長に要求した。これに応じ元社長は納入したECMOの見返りとして100万円を同技士長の個人口座に振り込んだ。
なお、元臨床工学技士長は収賄の疑いで逮捕され、懲役1年6か月、執行猶予3年、追徴金100万円の判決が確定している。一方、元社長は贈賄の疑いで逮捕され、懲役10か月、執行猶予3年の判決が確定している。
医療機器業公正取引協議会では、今回の違反行為が医療機器業公正競争規約第4条第1号に規定する『医療機関等に所属する医療担当者等に対する医療機器の選択または購入を誘引する手段としての金品の提供』に該当し、規約3条の規定に違反するものと判断した。
これにともない医療機器業公正取引協議会は、同日(8月31日)に日本メディカルオネストの現社長である清水保雄氏を呼び出し「厳重警告」を行った。
これを受け、日本メディカルオネストは再発防止策として、①改めて社内コンプライアンス規定の制定②定期的なコンプライアンス勉強会の開催③公取協主催の規約説明会への参加促進④規約インストラクター養成研修を受講し一刻も早く規約インストラクターの資格を取得――の4事項に取り組んでいく。
【日本メディカルオネストの概要】
1999年7月2日に設立。2017年2月に坂東電線が医療機器販売会社であるメディカル・パインをM&Aにより買収し、20年8月に日本メディカルオネストに社名変更して現在に至っている。坂東電線は主力が電線の製造・販売で、医療機器業へはまったくの異業種参入となる。資本金は2,000万円。従業員数は6名。22年度の売上高は1億9200万円。