「心・血管修復パッチ」承認取得【帝人】
大阪医科薬科大、福井経編と共同開発
大阪医科薬科大学(大阪府高槻市)と福井経編興業(福井県福井市)、帝人(大阪市北区)は先天性心疾患患者の課題解決のため共同開発してきた心・血管修復パッチ「OFT―G1(開発コード)」が、厚生労働省から製造販売承認を取得した。今後、製造販売を担う帝人メディカルテクノロジー(社長=田中昭弘氏、大阪市北区)が中心となり、販売名「シンフォリウム」として2023年度中の上市を目指す。
シンフォリウムは吸収性の糸と非吸収性の糸による特殊な構造のニットを吸収性の架橋ゼラチン膜で覆い、一体化させたシート。手術によって心臓や血管に縫着された後に、まずゼラチン膜が、次に吸収性の糸が徐々に分解され、自己の組織が本製品を含むように形成される。
この自己組織化は従来の製品で見られた異物反応や石灰化などの問題が発生しにくいという特徴があり、手術材料に起因する再手術リスクの低減が期待できる。
先天性心疾患の治療では、パッチ状の医療材料を用いて狭窄部や欠損部の血液循環を正常化する手術が行われる。患者が新生児や幼児のうちに手術を行うことが多く、子供が成長する中で、埋植したパッチが異物反応を受けて劣化したり、成長にともなうサイズ増大がないことによって手術部の狭窄が発生したりする。
この課題に対し、大阪医科薬科大学の根本慎太郎教授が、自分の組織に置き換わることで患者の成長にともなうサイズ増大に対応できるパッチのアイデアを打ち出し、福井経編興業が繊維産業の高度な経編技術により、特別な編み地構造に細胞を取り込み伸張可能な心・血管修復パッチの試作品を考案し、完成させた。
そこに、医薬品や医療機器の研究開発、製造販売を手がける帝人が、製品化に向けた設計開発や薬事申請などを担う役割として参画し、2014年から3者で共同開発を進めてきた。
18年4月に先駆的医薬品等指定制度(旧先駆け審査指定制度)に指定され、19年から開始した臨床試験が22年に完了し、23年1月に製造販売を担う帝人メディカルテクノロジーが厚生労働省に製造販売承認を申請し、7月11日付で承認取得に至った。