医師を放射線から守る【マエダ】
山形大と「頭頸部用X線防護具」共同開発
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医療用X線防護用品メーカーのマエダ(社長=前田幸一氏、東京都文京区)は、山形大学医学部との共同研究で、X線透視撮影下で患者の体内にカテーテルなどを入れて治療するIVR(画像下治療)を行う医師の眼の水晶体や脳、甲状腺を放射線被ばくから守る頭頸部用X線防護具「トリプルガード」を開発し、販売を開始した。
トリプルガードはIVR術者の被ばくのほとんどが、術者の左斜め下方の患者から発生する散乱線であることから、甲状腺の防護部位より上方を術者左側のみに特化した形状となり、重量は約650㌘となっている。
左右均等でない形状のため、着用時のポジショニングが重要になるが、着用時はピンクの垂直マーカで位置調整することで、安定した防護効果が得られる。垂直マーカは上下2か所にあり、防護衣を上から重ねて着用した後も、上部の垂直マーカは着用者だけでなく周りのスタッフからも視認性が高く、ひと目で位置確認ができる。
着用後のずれを防止するため、甲状腺防護具のベース部の表裏に滑り止め素材を採用した。内装したクッション材の圧力によって、より高い、滑り止め効果を実現している。また、防護具背面の固定具は、固定角度が自由なマジックテープではなく、あえてバックルを採用し、着用時の設計再現性を確保している。
放射線防護具は使用を重ねるとシワや折れ曲がりなどの形状変化が生じるが、それを回避するためトリプルガードは、甲状腺防護部位から上方に芯材を内装した。これにより、形状耐久性を向上させている。
近年、患者への負担の少ないIVRの増加にともない、IVR術者の放射線被ばくが問題になっている。この状況を踏まえ、国際放射線防護委員会(ICRP)は眼の水晶体等価線量限度値の引き下げを勧告し、全身被ばくだけでなく、特定の組織、特に眼の水晶体、心臓および脳血管系についても防護が最適化されるべきであることを強調している。
開発したトリプルガードは、人体ファントム実験による目の水晶体線量の被ばく低減率が右眼で89%、左眼で92.1%となり、高い遮へい効果が確認されている。
トリプルガードの価格は87,000円(税抜)。標準カラー(外面)は11色から選択可能で、ネーム刺繍加工もオプションで用意されている。問い合わせはマエダ営業部(TEL=03―3880―8881)へ。