画像医療装置の長期使用が固定化【JIRA】
画像医療システムの導入状況を調査
日本画像医療システム工業会(会長=山本章雄氏、JIRA)は、「第19回(2021年度)画像医療システム等の導入状況と安全確保状況に関する調査」の結果を発表した。それによると、画像医療装置の平均買い替え年数の大幅な延びの固定化が顕著にみられ、保守管理の重要度が増す中、保守点検の実施率がなかなか向上しない状況が浮き彫りになった。
今回の調査は全国の医療施設を99床以上、100床~299床、300床~499床、500床以上の4つの病床群に分け、その中から無作為に抽出した1000施設の放射線部門技師長宛にアンケート用紙を郵送し、郵送調査票かWEBアンケート画面のどちらかに締切日までに回答があった有効回答数433施設(回収率43%)の回答を集計、分析した。
装置の平均使用期間は『12年』
平均買い替え年数については、▽X線CT装置▽血管撮影用X線装置▽MRI装置▽核医学装置(SPECT装置)▽放射線治療装置▽超音波装置▽CR画像処理装置――の代表的7機種の平均使用期間が2008年度の第7回調査から13回連続して『11年』を超え、16年度から『12年』となり、その後も高止まり傾向を示し、長期使用が固定化され、日常の安全点検と定期的な保守管理が、より重要度を増す状況となっている。
装置の稼働年数別台数に関しては、有効調査対象52機種の実際の使用期間を「1~5年」、「6~10年」、「11年以上」の3区分で調査した結果、最長の使用期間11年以上では52機種中13機種(25%)の装置が50%以上あり、20機種(38%)の装置が40%以上と長期使用の状況であると回答している。
また、「6~10年」と「11年以上」の合計が50%以上の機種は52機種中49機種(94%)と大多数を占め、平均買い替え年数の長期化を裏付ける結果となった。
保守点検は十分に進んでいない状況
保守点検実施状況では、メーカーとの「保守契約」と「都度メーカーを呼んで点検」、「院内で保守点検」の3項目を合計した保守点検実施率を調査した。
その結果、▽一般X線撮影装置▽血管撮影用X線装置▽核医学装置(SPECT)▽超音波装置▽CR画像処理装置――の5機種が全体的に前回より増加傾向にあるものの、全ての医療機器の保守管理の実施義務化となった07年の改正医療法の施行から14年半を経過した調査にもかかわらず、院内での保守点検を含む保守点検実施対応が十分に進んでいない状況となっている。
医療機器安全管理責任者の設置状況は、全体の90%以上の施設が設置し改善がみられるものの、病床規模や設置主体で差がみられた。また、医療機器安全管理責任者の職種は診療放射線技師、臨床工学技士、医師の3職種で約90%以上を占めている。
医療機器保守点検計画の策定状況に対する回答では「策定している」と回答した施設が92.8%と前回の調査から0.5ポイント下がっている。
コロナ禍で「機器の更新難しくなる」
また、新型コロナウイルス感染状況による今後の施設設備の方向性について自由記述でコメントを求めると「機器の更新が難しくなる」、「保守契約内容を見直す」などの意見が多数を占めたほか、メーカーに対する感染対策用の機器の要望なども挙がっている。
同調査は34年前の1988年から継続的に実施しており、JIRAでは調査結果を、産業界の行動指針の検討や、企業全体の技術水準の向上、社会ニーズに沿った医療画像診断機器・システムの開発方向性の探求、安全性・標準化の基礎資料――などに活用していく。