「壬寅(みずのえとら)」の年、新しい成長の礎…【商工組合 日本医療機器協会・理事長 中島 孝夫】
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謹んで新春のお慶びを申し上げます。本年も皆様方のご指導、ご協力を賜りたく、何卒宜しくお願い申し上げます。
本年は、「寅年」ですが、十干が「壬(みずのえ)」、十二支が「寅」の年にあたるので、干支は「壬寅(みずのえとら)」になります。「壬」は「妊に通じ、陽気を下に姙(はら)む」、「寅」は「ミミズに通じ、春の草木が生ずる」という意味があるそうです。そのため「壬寅」は厳しい冬を超えて、芽吹き始め、新しい成長の礎となる、と言われています。
昨年は、まさにコロナ禍の真っただ中におり、社会は厳しい冬の状況の中にいました。「緊急事態宣言」も4回発出され、飲食店や観光業などは大変な打撃を受け、多くの会社の存続が危ぶまれ、倒産に追い込まれたところもあります。
働き方改革を政府が推奨していましたが、新型コロナウイルスによって、働き方が大きく変わりました。例えば、会社に出社しないでテレワークする人、時間差通勤をする人、営業時間を短縮する人などです。出張や会議も対面で行うのではなく、Webを使うことにより感染予防に繋がり、更に旅費交通費も削減できるという正に働き方改革そのものであり、悪いことばかりではなく良いこともあることを学びました。
さて、昨年の最大のイベントといえば、東京オリンピック・パラリンピックでしょう。2020年に開催される予定でしたが、新型コロナウイルス感染症拡大の影響により、史上初となる延期となりました。選出された選手たちは1年後のオリンピックを目指して練習に励むことになりましたが、年が明けてオリンピックが近づいても新型コロナウイルス感染症の勢いは収まりませんでした。本当に開催できるのか、あるいは中止になるのか、多くの心配の声が上がりましたが、当時菅政権の見解は検討中というものでした。これを受けて海外からも参加を辞退する国も出てきましたが、そのような状況の中、オリンピック・パラリンピックを無観客で開催すると発表されました。史上初の無観客のオリンピックの開催です。また、コロナ禍という悪条件にもかかわらず、世界205の国や地域から約1万1000人が参加してくれたことには驚きと感謝の気持ちになりました。あらためて日本という国は世界の国から信頼されているのだと思いました。オリンピック開催については賛否両論ありましたが、やはり、競技が始まれば、視聴している多くの人に大きな感動を与え、元気にしてくれます。日本は金メダルをなんと27個も獲得し、米国、中国に次いで獲得数が3番目となりました。その他多くのメダリストを輩出し、開催して良かったという一定の成果を収めたと思います。この成果が今後、東京モデルとして参考になれば良いと思います。
また、ゴルフファンにはたまらない嬉しいニュースがありました。4月に開催されたマスターズ・トーナメントで松山英樹選手が10回目の挑戦で初めて優勝したことです。これはすごいことです。日本史上初めてであり、アジアにおいても初の快挙となります。誰もが日本人選手の中では松山選手が必ずやってくれると思っていたことでしょう。さらに今後、他のメジャータイトルも獲得できるよう応援していきたいと思います。
続いてエンゼルスの大谷翔平選手です。ピッチャーと打者の二刀流の選手で、あと一歩のところでベーブルースの記録には届きませんでしたが、その活躍ぶりが多くの人の共感を呼び、評価され11月にMVPを獲得しました。各球団の垣根、また人種の壁を越えて、日本人選手が選出されたことは大変に栄誉なことであり、歴史的快挙といってもいいと思います。スポーツの世界は素晴らしい。スポーツの世界では国境を越えて、人種を超えて一つになれることをつくづく感じさせられました。
そして、政界では自由民主党総裁の菅義偉氏の任期満了に伴って9月29日に総裁選が実施され、菅首相は総裁選に出馬しませんでした。新型コロナウイルス感染症対策に専念すると辞退されました。菅首相の1年はコロナ対策に始まりコロナ対策に終わりました。大変な1年だったと思います。心からお疲れ様でしたと申し上げたいと思います。そして岸田文雄氏が第27代総裁に選出されました。これを受けて菅義偉内閣が総辞職し、その後継政権が発足し、10月4日に第100代内閣総理大臣に任命されました。そしてその10日後には、国民に信を問うということで衆議院を解散しました。これは奇襲作戦だと思います。野党が連合を組んで政権を奪回する戦いが始まったのを見て、予想以上に早く解散し、総選挙の準備をさせないという作戦。これはあくまで個人の見解です。結果として総選挙で連立与党が勝利し、11月10日には岸田氏が、第101代内閣総理大臣に任命され、第2次岸田内閣が成立しました。大変にあわただしい戦いでしたが、これで岸田内閣は何もなければ任期4年は安泰です。岸田首相は「聞く力」に優れた調整型の政治家と言われています。きちんと国民の声に耳を傾け、国民の不満や疑問に対しても丁寧に説明し、納得してもらう努力をすると約束しています。安定政権のもとで、その信条に大いに期待し、より良い社会を築いて欲しいものです。
次に新型コロナウイルス変異株についてです。初期の段階ではアルファ株でしたがさらに感染力が強いとされるデルタ株がインドから発生し蔓延しました。昨年の夏ころには東京都で1日に新規感染者が5000人以上にものぼりましたが、11月に入ると100分の1以下に減少しました。日本では収束したのではないかと思われるほど減少しましたが、一方でお隣韓国やヨーロッパ諸国では感染者が増加し、南アフリカより新種が発見されました。「オミクロン株」です。デルタ株より感染力が強い可能性があり、現在のワクチンが効きにくい可能性があるとのことです。私見ですが、貧しい国にワクチンが行き渡らないのが問題なのではないかと考え、先進国だけワクチンを接種しても意味がないように思います。ウイルスは地球上どこの地域でも発生します。世界中が協力してウイルスを収束する道に更に一歩前進することを願って止みません。
さて、本年もコロナ禍の環境下ではありますが、日医機協は、医薬品医療機器等法をはじめ、会員企業の業務に係る関係法令の講習会開催などに努めてまいります。具体的には昨年に引き続き協会事業として以下の重点8事業を展開して参ります。
1.各種講演会の開催(Web等を活用)
コロナ禍に於いても、医療機器産業を取り巻く経営環境の変化に対応し、多種多様な情報収集に努め、会員企業にとって有益な情報を引き続き提供します。
平成18年度より実施している「高度管理医療機器販売業等の営業所管理者及び医療機器修理業の責任技術者のための継続的研修」、その他「わかりやすいQMS講習会」、「診療報酬講習会」などを開催します。
昨年も、新型コロナウイルス感染拡大の影響により、継続的研修等の大会場での講習会は自粛を余儀なくされ、引き続きWeb聴講で開催しました。
講習は、Web聴講期間を設け、その期間内に受講者は、自分の都合に合わせて聴講できるという利便性が好評で聴講者も増えました。
講習会につきましては、今後も引き続き工夫し、東京都をはじめ、PMDA、関係官庁にもご協力をお願いしながら、積極的に展開してまいりたいと思います。これらの講習会も長年、医療機器産業を支えてこられた会員企業の皆様方のお役に立てるよう、医薬品医療機器等法をはじめ、法規制にも円滑に対応できますよう、内容を充実させていきたいと考えております。
2.医工連携事業の推進
平成25年度より継続して取り組んでいる医工連携では、令和4年度も、全国の各都道府県並びに産業振興機構等と共に連携しながらWebを通して展示・商談会を開催していきます。この本郷展示・商談会も今年で9年目を迎え、製販企業と、ものづくり企業との間で、マッチングの成果も出ております。本年は、この展示・商談会を、当協会が所有する医科器械会館で、十分な感染対策を講じ、実際に開催することができるように検討し、再び、東京・本郷地区に、全国有数の、ものづくり企業が参加できるようにしていきたいと思います。
その意味から、この医療機器産業が集積する文京区の本郷台地を「メディカルヒルズ本郷」と標榜し、継続して当協会の医工連携のキャッチフレーズとして、全国に広げ、さらにマッチングの成果も重ねていきたいと考えています。
3.展示会出展等の見直し
毎年夏に開催される国際モダンホスピタルショウは、延べ約8万人参加というビッグイベントですが、今まで以上に会員企業にとって有益かつ医工連携に特化した展示会を検討するため、昨年は出展を見送りました。本年も引き続き検討していく方向です。
4.関係官庁との連携
関係官庁との連絡会や、公益財団法人医療機器センターへの協力などを通じて、医療機器業界の方向性や課題、医薬品医療機器等法をはじめ法制度の検討に関わり、厚生労働省、経済産業省等の行政機関に対しても積極的に要望・提案を行います。特に医療機器法の制定に向けて前進できればと思います。
5.会員企業間の交流
製造、販売およびサービス業など、業態の枠を越えた企業間の交流に努めるほか、全国の中小企業団体や企業とも協力関係を築いていきます。当協会の伝統となっている会員企業の皆様のための野球大会、ボウリング大会、そしてフットサル等の事業を福利厚生の一貫として皆様とともに本年も続けて参りたいと思います。また、本年は、誠に残念ではございますが、新型コロナウイルス感染症の感染予防と会員の皆様の安全を最優先する観点上、賀詞交歓会を見送ることになりました。
6.会員のための医科器械会館の管理・運営
当協会の活動拠点である当会館は、本年も感染対策を講じ、会員企業の皆様が安心して気兼ねなく、自由に立ち寄っていただく場として活用していただき、会議室も安価で提供致しますので、自社の会議室のごとく、ご使用して頂ければ幸いに存じます。これからも快適性と永続性の確保を図り、会員のための使いやすい会館として管理・運営を行って参ります。
7.災害対策・災害救援活動・BCPなどの研究
医療機器団体として大災害に備えた対応を検討します。なお、当協会は、戦前より会員企業のご協力により、災害時には救援物資や義援金を提供するなどの活動を行っている歴史があります。今後も変わらぬ姿勢で参ります。
8.創立110周年祝典
当協会は、昨年110周年を迎え、本来ならばご来賓の方々をご招待し、会員の皆様と共に盛大な記念式典を開催したいところではありましたが、新型コロナウイルス感染症拡大の影響により開催するのが大変困難な状況でした。今年は、創立111周年を迎えますが、ご参加される皆様方の安全を第一に考えて、検討していきたいと思います。
記念誌については引き続き、10年刻みで歴史の記録を残し、後世の方々のためにお役に立てるよう、編纂したいと思います。
◇
以上の8項目を、本年も重点項目として推進していきたいと思いますので、皆様のご指導、ご協力のほど、宜しくお願い申し上げます。
また、昨年に引き続き協会として、医療機器法の早期制定に向けて、少しでも進展があるように声を上げ続けてまいりたいと思います。
最後に、一日でも早く、新型コロナウイルス感染症の収束を願うと共に、全国の医療機器業界団体の皆様、そして、医療機器に関連するものづくり企業の皆様とも交流・連携を深めながら、日本の医療機器業界の発展に、少しでも貢献していきたいと考えております。
皆様のこの1年のご健勝とご多幸を心よりお祈り申し上げ、また、当協会へのご指導とご鞭撻を心より、重ねて、お願い申し上げて、新春の挨拶に代えさせていただきます。