質量分析技術を臨床応用へ【島津製作所、自治医大】
包括共同研究契約を締結
島津製作所(社長=上田輝久氏、京都市中京区)と自治医科大学(学長=永井良三氏、栃木県下野市)は、臨床分野における質量分析(MS)技術の応用に向けた3か年の包括共同研究契約を締結した。

今後、同大附属病院で、がん、心臓疾患、感染症、認知症などの各種疾患における早期・迅速診断や、治療薬物モニタリング(TDM)、予防医学などに関するMSの応用手法を開発する。
島津は自治医大に技術者を派遣することで分析技術を提供し、自治医大は共同研究から研究成果の社会実装までを主導する。
両者は研究の第一弾として、微細採血のよるTDMに取り組む。TDMを受ける患者は病院で採血するが、現在は新型コロナウイルス感染の影響で来院にリスクが伴うため、微細採血によるTDMが実現できれば、自宅で専用キットにより採取した一滴にも満たない血液の送付で済ませることができる。
共同研究で使用する液体クロマトグラフ質量分析計は、複数の薬物成分を高精度で一斉分析することが可能なので、臨床分野での利用が増えている。
その活用例の1つが免疫抑制薬のTDM。臓器や造血幹細胞の移植治療では拒絶反応を制御するために免疫抑制薬が投与されるが、その際に過剰な投与は免疫を抑制し過ぎて感染症などの合併症につながるため、薬物濃度を測定・監視して、投薬量を管理しなければならない。
欧米ではTDMにおける液体クロマトグラフ質量分析計の使用が一般的となっているため、国内でも導入する病院が増加している。